- 著者
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貝沼 雄太
宇良田 大悟
鈴木 大介
伊東 優多
宮本 梓
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.H2-35_1-H2-35_1, 2019
<p>【はじめに、目的】</p><p>野球選手の投球障害発生要因として投球数の増加が挙げられる。連続投球後での静的な肩甲上腕関節(以下、GHJ)可動域は外旋角度が増大し、内旋角度が減少するといわれている。しかし投球増加に伴って、投球中のGHJ角度や肩甲骨角度がどのように偏位していくかは報告されていない。今回、三次元動作解析装置(VICON MS社製)を用いて連続投球によるGHJ角度と肩甲骨角度を算出することを目的とする。</p><p>【方法】</p><p>対象は肩関節に愁訴の無い野球歴8年以上の健常男性5名(平均23.5歳)とした。測定方法は三次元動作解析装置を用いて、1球目、20球目、40球目、60球目、80球目、100球目の肩最大外旋角度時(以下、MER)でのGHJ外・内旋/水平外・内転角度と肩甲骨前・後傾/上・下方回旋/外・内旋角度とした。計測方法に際しては宮本らの方法に準じ、体表に36個のマーカーと肩甲棘パッド(マーカー4個)を貼付した。肩甲骨角度の定義は体幹に対する肩甲骨の値とした。GHJ角度の定義は体幹と上腕骨で計算される肩関節角度から肩甲骨角度を減算した値とした。統計処理は1球目と20球目以降でウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて,比較を行った。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>MER時のGHJ外旋は1球目(112.1°)と60球目(125.7°)、80球目(126.5°)、100球目(138.7°)で有意に増加していた。GHJ水平外転角度も1球目(-4.6°)と60球目(5.2°)、80球目(8.5°)、100球目(8.4°)で有意に増加していた。また肩甲骨内旋角度は1球目(20.0°)と100球目(26.3°)で有意に増加していた。肩甲骨後傾角度は1球目(37.2°)と100球目(24.4°)で有意に減少していた。肩甲骨上方回旋角度は1球目(31.7°)と100球目(33.4°)で軽度上昇していたが有意差はなかった。</p><p>【結論】</p><p>今回の結果では投球数増加することにより、GHJ外旋角度と水平外転角度が増加し、肩甲骨前傾と内旋角度が増加する事が明らかとなった。MihataらはGHJ水平外転角度増大と肩甲骨内旋角度増大によりインターナルインピンジメントが生じる可能性があると報告している。投球数の増加が投球肩障害を発症させる可能性があると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>口頭や文章にて研究の概要、方法等を説明し、被験者になるか否かを自由意志によるものであることを確認した。その後、研究の主旨に同意を得られた者に対し測定を行った</p>