著者
大町 聡 宮本 梓 岩崎 翼 福田 潤 鈴木 美幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0484, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 周径の測定は筋の肥大や萎縮の程度を簡昜に評価する手段として用いられている。また、大腿周径は大腿四頭筋(以下Quad)の筋組織厚や筋力を反映すると従来から考えられてきたが、ハムストリングス(以下Ham)との関係性について言及された報告は我々の調べた限りでは捕猟し得なかった。また近年、超音波測定装置において、人の骨格筋の筋組織厚の測定は高い再現性が確認されており、非侵襲的かつ簡易に測定が可能であるため、臨床の場において繁用されている。そこで今回は、大腿周径とQuad・Hamの筋組織厚について、さらには筋力との関係性についても検討を行い、大腿周径の測定は臨床の場において簡易にできる評価法であり、Quadの評価だけでなくHamも評価できるのかを明確にすることを目的とした。【方法】 対象は健常成人男性14名(平均年齢26.2±3.1歳)とした。周径の測定は、膝蓋骨上縁5cm・10cm・15cm・20cmとし、背臥位、膝関節伸展位にて1ミリ単位で測定した。筋組織厚の測定は、超音波測定装置(FUJIFILM社製)を用いて、大腿部前面筋(大腿直筋・中間広筋、以下RF)、大腿部前面内側筋(内側広筋以下、VM)、大腿部前面外側筋(外側広筋以下、VL)、内側Ham(半腱様筋・半膜様筋、以下MH)、外側Ham(大腿二頭筋長頭・短頭、以下LH)の測定を行った。RF、VM、VLの測定肢位は背臥位、膝関節伸展位、MH、LHは腹臥位、膝関節伸展位とした。RFの測定部位は下前腸骨棘と脛骨粗面を結んだ線と各大腿周径との交点、VMの測定部位は大腿骨軸に対して15°傾斜させた線と各大腿周径との交点、VLの測定部位は大転子と大腿骨外側上顆を結んだ線と各大腿周径との交点とした。MHの測定部位は、坐骨結節と大腿骨内側上顆を結んだ線と各大腿周径との交点とし、LHの測定部位は、坐骨結節と腓骨頭を結んだ線と各大腿周径との交点とした。深触子は皮膚面に対し垂直に接触させ、長軸にて実施した。RFの測定は5cmでの測定のみ共同腱が混在し、測定困難なため除外とした。筋力の測定は、BIODEXを用い、角速度60°/sでの膝関節屈曲、伸展におけるQuad、Hamの最大等速性収縮筋力を測定した。筋組織厚の測定は3回行い、検者内信頼性についての統計手法はICC(1、3)を用いた。また、Quad、Hamの周径・筋力・筋組織厚についてはピアソンの相関係数を求めて検討した。統計処理にはRコマンダーを用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 研究に先立って被験者には、研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得た。【結果】 筋組織厚の測定の再現性はQuadとHamともにICC=0.96~0.99で各部位とも良好であった。周径と筋組織厚の相関係数は、VM(5cm/10cm)0.84/0.57、RF(20cm)0.86、VL(5cm/10cm/15cm/20cm)0.74/0.76/0.75/0.67,MH(5cm/10cm/15cm/20cm)0.83/0.84/0.77/0.67、LH(5cm/10cm/15cm/20cm)0.64/0.66/0.63/0.74であった。周径と筋力(5cm/10cm/15cm/20cm)の相関係数はQuad 0.61/0.68/0.66/0.70、Ham 0.53/0.65/0.61/0.66であった。筋力と筋組織厚の相関係数はVM(10cm) 0.60、RF(10cm/15cm/20cm)0.61/0.80/0.86、VL(10cm/15cm/20cm)0.81/0.66/0.79であり、MH・LHは相関がみられなかった。【考察】 Quadにおいて、一般に膝蓋骨上縁5~10cmでの周径はVMおよびVLが、15~20cmでは大腿全体の筋群が評価できるとされており、今回の結果からも周径5cmとVM(r=0.84)、周径10cmとVL(r=0.76)、周径20cmとRF(r=0.86)に最も強い相関を認め、一致した。Hamにおいても、最も強い相関を認めた周径10cmとMH (r=0.83)、周径20cmとLH (r=0.74)の結果はMRI装置を用いて筋断面積を算出した先行研究と一致した。したがって、周径の測定はQuadの評価のみではなく、Hamの評価においても有用であり、特に周径5cmではVMの筋組織厚、周径10cmではVL、MHの筋組織厚、周径20cmではRF、LHの筋組織厚とQuad、Hamの筋力を評価することが望ましいと考える。【理学療法学研究としての意義】 大腿周径は、Quadの評価だけでなくHamを評価する手段としても有用である。
著者
草野 寛 伊藤 恵康 古島 弘三 船越 忠直 伊藤 雄也 岡田 恭彰 高橋 啓 宮本 梓 宇良田 大悟 堀内 行雄
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.242-246, 2020

一般的な術式で治療困難なOCD6例を調査した.Joint impaction type 1例は橈骨短縮術,Radial head subluxation type 2例は尺骨矯正骨切り延長術,Joint destruction type 3例にはAnconeus Fascia Interposition Arthroplasty(以下AFIA)を行った.橈骨短縮術では屈伸可動域は65度から90度,JOA-JES scoreは42点から74点,尺骨矯正骨切り延長術では平均70度から82.5度,平均38点から76.5点,AFIAでは平均51.7度から93.3度 ,平均32点から77点へ改善した.
著者
武長 徹也 堀内 行雄 伊藤 恵康 古島 弘三 草野 寛 船越 忠直 古賀 龍二 山本 譲 宮本 梓 井上 彰 村山 俊樹
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.584-588, 2019

18歳以下の若年で胸郭出口症候群(TOS)に対し手術を要したオーバーヘッドスポーツ選手の特徴を明らかにするため調査を行った.TOSに対して手術を施行したオーバーヘッドスポーツ選手110例119肢を対象とし,手術時年齢で18歳以下群と19歳以上群に分け,術前臨床症状,画像所見,術中所見などを比較した.18歳以下群は82例89肢(平均15.8歳,男性78例,女性4例,野球75例),19歳以上群は28例30肢(平均20.6歳,男性26例,女性2例,野球26例)であった.臨床症状の各項目に有意差は認めず,18歳以下群の特徴として①前中斜角筋間距離が狭い,②肩関節90度外転外旋位で腋窩動脈2nd partの血流が遮断される選手の割合が高い,③挙上位血管造影3DCTによる鎖骨下動脈の圧迫所見陽性率が高いことが明らかとなった.静的,動的に肋鎖間隙が狭い選手ほど,オーバーヘッドスポーツキャリアの早期でTOSを発症し競技継続困難となり手術を要すると考えられた.
著者
川井 祐美子 吉本 真純 坂田 佳成 天野 喜崇 金子 貴俊 宮本 梓
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-058, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】先行研究において,足関節背屈運動に伴い遠位脛腓関節(以下,DTFJ)が離開することや足関節内反捻挫による不安定性がDTFJの離開と関係すると報告されているが,足関節背屈に伴うDTFJの離開距離については明らかになっていない.本研究の目的は,足関節の前方不安定性がDTFJ離開距離に与える影響を明らかにすることである.【方法】対象者は大学生30名(左右合計60肢)とした.評価項目は,足関節背屈可動域,背屈0°のDTFJ離開距離,最大背屈位のDTFJ離開距離,前方引き出しテスト(以下,ADT)とした.DTFJ離開距離の測定は超音波断層撮影装置(TOSHIBA社製Nemio XG SSA-580A)を使用した.計測後,最大背屈離開距離と0°離開距離の差(以下,開大距離)を算出した.統計処理は足関節背屈0°のDTFJ離開距離および最大背屈位のDTFJ離開距離と足関節背屈可動域との関係性についてピアソンの積率相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮】所属施設の倫理委員会にて承認を得た.参加者に十分な説明を行い,書面にて同意を得た.【結果】ADTは陰性48脚(以下,陽性群),陽性12脚(以下,陰性群)であった.陽性群,陰性群ともに背屈0°離開距離と開大距離の間に有意な負の相関を認めた(陰性群:r=-.34.p<.05,陽性群:r=-.73,p<.05).陰性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な正の相関を認めた(陰性群:r=.47,p<.05)が,陽性群最大背屈離開距離と開大距離の間に相関を認めなかった.また両群とも開大距離と背屈可動域の間に有意な相関を認めなかった.【考察】陰性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な正の相関を認めたが陽性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な相関を認めなかった.この要因として足関節前方不安定性による距腿関節のマルアライメントが背屈に伴うDTFJの開大に影響していると考えられる.よって陽性群においてDTFJ開大制限が生じていること示唆された.
著者
貝沼 雄太 宇良田 大悟 鈴木 大介 伊東 優多 宮本 梓
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-35_1-H2-35_1, 2019

<p>【はじめに、目的】</p><p>野球選手の投球障害発生要因として投球数の増加が挙げられる。連続投球後での静的な肩甲上腕関節(以下、GHJ)可動域は外旋角度が増大し、内旋角度が減少するといわれている。しかし投球増加に伴って、投球中のGHJ角度や肩甲骨角度がどのように偏位していくかは報告されていない。今回、三次元動作解析装置(VICON MS社製)を用いて連続投球によるGHJ角度と肩甲骨角度を算出することを目的とする。</p><p>【方法】</p><p>対象は肩関節に愁訴の無い野球歴8年以上の健常男性5名(平均23.5歳)とした。測定方法は三次元動作解析装置を用いて、1球目、20球目、40球目、60球目、80球目、100球目の肩最大外旋角度時(以下、MER)でのGHJ外・内旋/水平外・内転角度と肩甲骨前・後傾/上・下方回旋/外・内旋角度とした。計測方法に際しては宮本らの方法に準じ、体表に36個のマーカーと肩甲棘パッド(マーカー4個)を貼付した。肩甲骨角度の定義は体幹に対する肩甲骨の値とした。GHJ角度の定義は体幹と上腕骨で計算される肩関節角度から肩甲骨角度を減算した値とした。統計処理は1球目と20球目以降でウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて,比較を行った。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>MER時のGHJ外旋は1球目(112.1°)と60球目(125.7°)、80球目(126.5°)、100球目(138.7°)で有意に増加していた。GHJ水平外転角度も1球目(-4.6°)と60球目(5.2°)、80球目(8.5°)、100球目(8.4°)で有意に増加していた。また肩甲骨内旋角度は1球目(20.0°)と100球目(26.3°)で有意に増加していた。肩甲骨後傾角度は1球目(37.2°)と100球目(24.4°)で有意に減少していた。肩甲骨上方回旋角度は1球目(31.7°)と100球目(33.4°)で軽度上昇していたが有意差はなかった。</p><p>【結論】</p><p>今回の結果では投球数増加することにより、GHJ外旋角度と水平外転角度が増加し、肩甲骨前傾と内旋角度が増加する事が明らかとなった。MihataらはGHJ水平外転角度増大と肩甲骨内旋角度増大によりインターナルインピンジメントが生じる可能性があると報告している。投球数の増加が投球肩障害を発症させる可能性があると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>口頭や文章にて研究の概要、方法等を説明し、被験者になるか否かを自由意志によるものであることを確認した。その後、研究の主旨に同意を得られた者に対し測定を行った</p>