著者
伊藤 智幸
巻号頁・発行日
2004-03-01

報告番号: 乙15918 ; 学位授与年月日: 2004-03-01 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(農学) ; 学位記番号: 第15918号 ; 研究科・専攻: 農学生命科学研究科
著者
黒田 啓行 庄野 宏 伊藤 智幸 高橋 紀夫 平松 一彦 辻 祥子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.209, 2005

実は多くの漁業は漁獲量の制限などにより管理されている。漁獲許容量(TAC)は、現在の資源量(魚の量)などから算出されるのが通例である。しかし現実には、データや知見の不足により、資源量などの推定は難しく、さらに将来の環境変動などを予測することも容易でない。このような「不確実性」は、科学の問題だけでなく、合意形成をはかる上でも大きな障害となる。<br> ミナミマグロは南半球高緯度に広く分布する回遊魚で、商品価値は非常に高い。日本、オーストラリアなどの漁業国が加盟するミナミマグロ保存委員会(CCSBT)により管理されている。しかし、近年の資源状態については、各国が主張する仮説によって見解が異なり、TACに正式合意できない状況が続いていた。<br> この状況を打開するために、CCSBTは2002年より「管理方策」の開発に着手した。管理方策とは、「利用可能なデータからTACを決めるための"事前に定められた"ルール」のことで、環境変動や資源に関する仮説が複数あっても、それら全てに対し、うまく管理できるものが理想的である。そのため、様々な仮説のもとでのテストが事前に必要であるが、実際に海に出て実験することは不可能に近い。そこで、コンピューター上に資源動態を再現し、その「仮想現実モデル」のもとで、複数の管理方策を試し、より頑健なものを選び出すという作業が行われた。このような管理方策の開発は、国際捕鯨委員会(IWC)を除けば、国際漁業管理機関としては世界初の画期的な試みである。実際にCCSBTで管理方策の開発に当たっている者として、開発手順を概説し、問題点及びその解決方法について紹介したい。不確実性を考慮した管理方策の開発は、持続可能な資源の利用を可能にし、魚と漁業に明るい未来をもたらすものと考えている。
著者
伊藤 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.412-418, 2009 (Released:2009-08-17)
参考文献数
27
被引用文献数
9 30

クロマグロ 0 歳魚資源への産卵期別寄与率を推定した。477 個体(尾叉長 17~93 cm)の耳石日輪から推定した産卵期は,従来想定されたより長期の 3 月から 10 月までに及んだ。1993~1997 年の日本の 0 歳漁獲魚は,月別体長組成と耳石日輪から推定した成長曲線との比較で 2 亜年級に分けられた。一つは 7 月上旬までに,おそらく台湾から南西諸島海域で生まれたもので,0 歳漁獲魚の多く(76%)を占めた。他方は 7 月中旬以降に,おそらく主に日本海で生まれたもので,0 歳漁獲魚の平均 24%,最大 40% を占めた。