著者
竹岡 賢二 福島 啓吾 伊藤 純樹 毛利 晃
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.273-278, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
19

発泡ガラスの園芸用培地としての利用可能性を明らかにするため,粒径別の理化学性およびコマツナの栽培特性を調査した.有効水分は,粒径4 mm未満で確保でき,4 mm未満に4~15 mmを25~75%混合すると制御できた.発泡ガラスの化学性は,pHおよび交換性マグネシウムが高く,CECが低かった.発泡ガラスを流水洗浄することで交換性マグネシウムは低下したが,pHは調整が必要であった.コマツナの生育および窒素吸収量から,発泡ガラス培地は,pHを6に調整するとマサ土とバーク堆肥を混合した慣行培地と同程度の生育を示したが,ゼオライトの添加による生育差は見られなかった.以上のことから,発泡ガラスは,粒径4 mm未満に4~15 mmを25~75%混合し,pHを6に調整することで,園芸用培地として利用できる可能性が示唆された.
著者
藤田 耕之輔 李 克己 伊藤 純樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

環境ストレスによる阻害を軽減した植物生産システムを確立することを目指し、リアルタイムで環境ストレスを評価し、診断する方法について一連の研究を実施している。今回は、栄養ストレスを取り上げ検討した。すなわち、歪みゲージ式変位計により測定した茎・果実の径変化を主体に、これと光合成、転流、水分状態などとの相互関係について調査した。実験は、供試植物として水耕栽培した第1花房果実肥大期のトマト(品種 桃太郎8)を用い、処理としてリン(P)無添加を行い、茎径および果実径、光合成など各種のパラメータについて平行して測定した。その結果、(1)光合成速度は低P処理後12日目に低下したのに対し、(2)茎径は処理後6日目に、果実径では9日目にそれぞれ低下した。一方、窒素(N)ストレスについてもほぼ同様の実験を行った。その結果、Nストレス処理(N欠如)によって、(1)茎径は処理後1日目に影響がみられ、昼間の収縮が小さく、夜間の肥大速度も低く、(2)果実には処理の影響は認められず、(3)葉の光合成速度は処理3日後に低下し、(5)葉の水ポテンシャルは7日目に低下した。以上の結果を総合すると、茎径を歪みゲージ式変位計で計測することによって、他のパラメータより早期にNおよびPストレスの影響を計測しうることが判明した。また、栄養状態がトマトの果実生産へ与える影響は、ソース・シンク関係から次の様に理解される。Pストレスは光合成能(ソース)よりも果実肥大(シンク)をより早期に阻害するのに対して、Nストレスはソース能を阻害するがシンクに対する影響は小さいものと推定される。