著者
藤田 耕之輔 尾形 昭逸 松本 勝士
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.8-12, 1986-02-05 (Released:2017-06-28)

ダイズ野生種・栽培種およびレンゲを水耕栽培し,栄養生長期に化合態窒素の添加または炭酸ガス富化処理を行ない,植物体重,窒素固定能および窒素含有率などを測定し,下記の結果を得た。1)全植物体重・全窒素集積量は,炭酸ガス富化または化合態窒素添加によって増大する傾向を示し,各種とも炭酸ガス富化・窒素区で最も大きかった。この反応はダイズ野生種で他種よりも小さかった。2)固体窒素固定能は化合態窒素添加で低下したが,この低下はレンゲで他種よりも小さかった。一方,炭酸ガス富化による変動は比較的小さかった。3)窒素固定能の化合態窒素添加および炭酸ガス富化に対する反応から,培地化合態窒素による窒素固定の阻害を,(1)光合成産物の供給不足と,(2)それ以外の,いわゆる硝酸態窒素の代謝と関連する二つの要因に解析でき,レンゲではこの両者,ダイズの野生種・栽培種では(2)がそれぞれ窒素固定阻害の主要原因であると推定される。4)窒素含有率は化合態窒素存在下でレンゲ根粒では上昇し,ダイズで低下したが,炭酸ガス富化による影響は認められなかった。
著者
森田 敏 白土 宏之 高梨 純一 藤田 耕之輔
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.102-109, 2002-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
29
被引用文献数
22 44

従来,水稲の高温による登熟不良現象については多くの研究が行われたが,高夜温と高昼温のどちらが主因であるかについては一定の結論が得られていない.本研究では,人工気象室を用いて,34/22℃(昼温/夜温)の高昼温区に対して,これと日平均気温が同じである22/34℃の高夜温区を設定し,22℃一定温度あるいは28/20℃(日最高気温/日最低気温)を対照区として,玄米1粒重と良質粒歩合について比較解析した.その結果,玄米1粒重は高夜温区においてのみ対照区より有意に低下した.一方,玄米の良質粒歩合は高夜温区と高昼温区の両者で低下した.したがって,高温による玄米1粒重の低下の主因は高夜温にあること,および高夜温と高昼温のいずれもが外観品質を低下させることが明らかになった.高夜温区における玄米1粒重の低下は,いずれの着粒位置でも観察されたが,試験年によっては,弱勢穎果である3次籾での低下程度が大きかった.各試験区間の玄米1粒重の違いは,玄米の3つの粒径(粒長,粒幅,粒厚)を乗じた玄米体積の指標値の違いにほぼ一致した.高夜温区では対照区に比べて主に玄米の粒幅と粒厚が減少し,高昼温区では粒幅が減少したものの粒厚は明らかに増大した.これらのことから,高夜温区では玄米の粒幅の減少を粒厚で補えずに玄米1粒重が低下するのに対し,高昼温区では玄米の粒厚の増大が粒幅の減少を補償して玄米1粒重が低下しないとみることができた.
著者
藤田 耕之輔 李 克己 伊藤 純樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

環境ストレスによる阻害を軽減した植物生産システムを確立することを目指し、リアルタイムで環境ストレスを評価し、診断する方法について一連の研究を実施している。今回は、栄養ストレスを取り上げ検討した。すなわち、歪みゲージ式変位計により測定した茎・果実の径変化を主体に、これと光合成、転流、水分状態などとの相互関係について調査した。実験は、供試植物として水耕栽培した第1花房果実肥大期のトマト(品種 桃太郎8)を用い、処理としてリン(P)無添加を行い、茎径および果実径、光合成など各種のパラメータについて平行して測定した。その結果、(1)光合成速度は低P処理後12日目に低下したのに対し、(2)茎径は処理後6日目に、果実径では9日目にそれぞれ低下した。一方、窒素(N)ストレスについてもほぼ同様の実験を行った。その結果、Nストレス処理(N欠如)によって、(1)茎径は処理後1日目に影響がみられ、昼間の収縮が小さく、夜間の肥大速度も低く、(2)果実には処理の影響は認められず、(3)葉の光合成速度は処理3日後に低下し、(5)葉の水ポテンシャルは7日目に低下した。以上の結果を総合すると、茎径を歪みゲージ式変位計で計測することによって、他のパラメータより早期にNおよびPストレスの影響を計測しうることが判明した。また、栄養状態がトマトの果実生産へ与える影響は、ソース・シンク関係から次の様に理解される。Pストレスは光合成能(ソース)よりも果実肥大(シンク)をより早期に阻害するのに対して、Nストレスはソース能を阻害するがシンクに対する影響は小さいものと推定される。