著者
田中 崇之 菅本 裕介 宮崎 郁美 伊藤 裕太 浜口 昌巳 野田 泰一 小林 達明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.193-198, 2004-08-31
被引用文献数
1 1

東京湾の人工渚におけるアサリの個体群動態と生残規定要因について2002年から2003年にかけ調査した。春に産卵された浮遊幼生は秋には生殖が可能になり,翌年の春には産卵を行っていると見られた。葛西海浜公園では2002年, 2003年ともに着底後のアサリの個体数減少が見られ,大雨時の河川水の流入に伴う塩分濃度の低下が主な生残規定要因として考えられた。また,幕張の浜では浮遊幼生は供給されているにもかかわらず,稚貝が見られなかったことから,波浪の影響, 青潮の影響が考えられた。これに対し,金沢海の公園,小櫃川河口干潟はアサリの個体数は安定していた。これらのことから,東京湾におけるアサリの生息条件は多様であり,生息地を再生するためには,その場に応じた対処が必要と考えられた。
著者
香川 敏幸 伊藤 裕一
出版者
広島大学経済学部附属地域経済システム研究センター
雑誌
地域経済研究
巻号頁・発行日
no.13, pp.97-112, 2002-03

本稿は、イギリス・ブレア政権におけるニュー・ディール政策について、特に若年向けの失業者支援政策と地域雇用におけるその新たな役割について先導的な事例から知見を得ることを目的としている。若年向けニュー・ディール政策は、97年総選挙で勝利した労働党が、6ヶ月以上失業している18歳から24歳の男女を対象に、就職活動、再訓練などを支援するために98年から導入した政策で、個人アドバイザーによるきめ細かなサービスを特徴としている。このニュー・ディール政策は地域レベルで実施され、したがってその地域の産業、教育等の機関とのネットワーク作りが重要である。本稿ではロンドンのランベス地区を中心としていくつかの地域のケースを取り上げ、雇用福祉政策がどのような対象にどのような影響を与えているかについて、一定の評価を試みる。結論としては、パートナーシップは形成過程が重要であり、「提携ないし共同関係の疲弊」といったパートナーシップの形成、運営上での問題を避ける必要があることが指摘できる。また、ニュー・ディール政策はマクロ的、長期的な影響を測るには規模が小さく、政策実施からの時期の問題があるが、各個人レベルでみれば、既に好影響が表れているといえる。最後に本稿の今後の展望として、欧州連合(EU)での労働政策の統合過程の中での位置付けを試みる。98年よりEUで導入された「ルクセンブルクプロセス」という欧州雇用戦略に基づく各国の政策協調プロセスでも、イギリスのニュー・ディール政策は積極的にアピールされている。このようにニュー・ディール政策は、欧州における、EU、国家、地域の間でのパートナーシップ形成にも貢献しているといえる。This article attempts to discuss the New Deal Policy of Blair Administration in the United Kingdom. The NDYP is a support for young unemployed people, and its new role in local economy will be focused particularly.The New Deal for Young Unemployed People (NDYP) has been introduced since 1998 by the 'New Labour' government as a result of its victory in 1997 general election. The main aim of the NDYP is to offer unemployed young (18–24) people who are more than 6 months unemployed a support such as job recruitment and retraining. The role of Personal Advisors (PAs) characterises the New Deal policy.The NDYP is delivered in local level; therefore, network making among local industry and education establishments is crucial. This article will examine the cases in Lambeth and in some other areas and will assess how and what targets are affected by social and employment policy. As a conclusion, it is important that partnership is treated as a process of building relationship, and that 'partnership fatigue', i.e. problems in network creation and management should be avoided. It is difficult to assess macroeconomic effects of the NDYP because it concentrates on limited target group and is still new policy from its introduction in 1998. However, the NDYP has brought positive effects to individual participants.This article will attempt to place the NDYP in the context of integration process in the European Union. The NDYP is enthusiastically appealed to the 'Luxembourg Process', which is based on the 'European Employment Strategy' introduced in 1997. In this sense, the NDYP contributes positively to create a partnership among the EU, the member states and local level.