著者
小田 寛 大野 道也 大橋 宏重 渡辺 佐知郎 横山 仁美 荒木 肇 澤田 重樹 伊藤 裕康
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1231-1236, 2000

慢性透析患者では心血管系合併症, とくに虚血性心疾患 (IHD) の発症頻度が高い. 今回, 血液透析 (HD) 患者と持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患者の凝固, 線溶系の各因子を測定し, IHDとの関連性について検討した.<br>平均年齢48.5歳の健常者20名 (男性9名, 女性11名), 平均年齢52.7歳のHD患者20名 (男性8名, 女性12名), 平均年齢47.8歳のCAPD患者30名 (男性18名, 女性12名) を対象とした. 平均透析期間は45.2か月と43.8か月で, 基礎疾患はいずれも慢性糸球体腎炎である. 凝固系因子として第XII因子活性, 第VII因子活性, フィブリノーゲン, トロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT) を, 線溶系因子としてプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1 (PAI-1), α<sub>2</sub>プラスミンインヒビター・プラスミン複合体 (PICテスト), Dダイマーを測定した. またIHDは, (1) 心筋梗塞, 狭心症の有無, (2) 無症候性心筋虚血は運動負荷, 薬物負荷後のタリウム心筋シンチグラフィーの所見から診断した. 以下の成績が得られた.<br>(1) 健常者に比較して透析患者の第VII因子活性, TAT, フィブリノーゲンは高値を示し, 凝固亢進状態にあった. またHDに比較してCAPD患者の第VII因子活性とフィブリノーゲンはさらに上昇していた. (2) 透析患者のPIC, Dダイマーは高値を示し, 線溶亢進状態にあった. なおHDとCAPD患者の間に線溶系因子に有意差は認められなかった. (3) IHDを有する透析患者の第VII因子活性, フィブリノーゲンは上昇していた. この傾向はCAPD患者でより顕著であった.<br>以上より, 透析患者の凝固・線溶系は亢進状態にあり, この傾向はCAPD患者で顕著であった. なかでも第VII因子とフィブリノーゲンはIHD発症の危険因子であることが示唆された.
著者
柴田 幸子 伊藤 裕之 山本 梓 行田 佳織 尾本 貴志 篠崎 正浩 西尾 真也 阿部 眞理子 当金 美智子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.885-892, 2014-12-30 (Released:2015-01-14)
参考文献数
31

分割食で栄養指導を行ったのちに持続血糖測定(CGM)を施行した妊娠糖尿病44例(32±4歳,妊娠週数:24±5週)を対象とし,血糖,ケトン尿に影響する因子を検討した.摂取熱量と栄養素はCGM時に行なった食事記録より算出した.指示熱量に対する摂取熱量比は88±17 %であった.摂取熱量中の糖質の比率は46±10 %で,60 %以上の糖質過剰摂取は13例(30 %)にみられた.蛋白質,脂質の摂取熱量比率は17±3 %と37±9 %であった.CGMで高血糖を示した例は14例(32 %)で,高血糖の無かった群に比し,糖質の過剰摂取例が有意に高頻度であった(64 % vs. 13 %).栄養指導後にケトン尿を呈した6例においては,指示に対する摂取熱量比(69±10 %)が,ケトン尿を示さなかった例(91±17 %)に比し有意に低値であった.妊娠糖尿病の栄養指導に際しては,摂取熱量のみならず糖質への配慮が重要と思われた.
著者
伊藤 裕子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.347-348, 2018 (Released:2019-06-14)
参考文献数
2

本研究は,政策事例として「電子版のお薬手帳の普及」を対象とし,政策実現に科学教育が貢献 し得るかどうかを検討した。一般人対象にアンケートを実施し、その分析より,政策実現のために は,年齢の高い人には情報教育,若い人には科学(医薬)教育が必要であることが示唆された。
著者
伊藤 裕久 菊地 成朋 箕浦 永子 伊藤 瑞季
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.97-108, 2015 (Released:2017-08-10)

本研究は,博多における地縁的結合の重層に注目しながら,個別の「町」と「流」の内部構造について社会=空間構造の実態と特性,さらに近代への変容過程について解明した。祭礼組織である「流」は近世を通じて地縁的結合の柱として行政機構の末端にも位置づけられていったが,明治期には行政区や学校区による新たな地縁的結合が形成されたことにより,再び祭礼組織として相対化されたことが明らかとなった。博多の社会=空間構造は,「流」による南北通を主軸とした構造から,近代の都市インフラの影響を受けつつ,行政区,学校区,商工人分布ともに東西通を主軸とした構造に変容していった。
著者
伊藤 裕子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.247-254, 1998-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は, ジェンダーに関する認知的な枠組みとしての性差観とジェンダーに関わる他の意識との関連を検討し, その関連から性差観のジェンダー・スキーマの測度としての構成概念妥当性を検証しようとするものである。747名の女子高校生と726名の男子高校生に, 性差観, 異性意識, 性役割指向性, 性差に対する自覚の経験, 性差の原因帰属を尋ねた。その結果, 性差観の弱いことは次のことと関係していた。(a) これまでの生育過程で内面的な特性について性差を意識した経験がほとんどない,(b) 異性への関心や異性からどのようにみられているかということへの関心が薄い,(c) 女性の職業や社会的地位における男性との差を社会の仕組みに帰属させる,(d) 性役割指向性はアンドロジニーないし異性に向いている。このように性差観の弱さはジェンダーに関する意識や事態の脱性別化と関係しており, 性差観の構成概念妥当性が検証された。
著者
阿部 裕 木嶋 麻乃 山口 未来 伊藤 裕才 六鹿 元雄 穐山 浩 佐藤 恭子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.38-44, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2

国内の市販ポリ塩化ビニル(PVC)製おもちゃに使用されている可塑剤の実態を明らかにするため,2014年度に購入したPVC製おもちゃ約500検体の可塑剤を調査した.その結果,テレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHTP)など15種類の可塑剤が検出された.その種類は2009年度に購入した試料の調査と大きく変わらなかった.おもちゃからの検出率はDEHTPが最も高く,指定おもちゃでは60.3%,指定おもちゃ以外では73.7%であり,2009年度の調査と比べいずれも20ポイント以上高い値であった.指定おもちゃにおいて使用が禁止されている6種類のフタル酸エステル類(PAEs)は引き続き使用されていなかった.一方,指定おもちゃ以外からは6種類のうち4種類が検出され,検出率は2.8~15.5%であったが,2009年度の調査と比べ10~26ポイント低い値であった.一方,試料あたりの可塑剤総含有量の平均値は2009年度の調査に比べて低い値であった.このように,現在国内で流通するPVC製おもちゃに使用されている主な可塑剤はDEHTPであり,可塑剤の使用量は減少していることが明らかとなった.
著者
中島 卓司 伊藤 裕一 貴家 伸尋 池田 真巳 加藤 由博 北山 真司 鬼頭 幸三 郡 逸平 小山 隆太郎 嶋田 喜芳 花岡 雄二 桧垣 竜彦 福田 紘大 山村 淳 李 曄
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1439-1445, 2016 (Released:2018-01-29)
参考文献数
8

車両空力CFDの性能評価,特に境界層発達と流れの剥離の予測精度評価に有用な計測データを得るため,剥離点を固定しない緩やかな曲面の上面形状を持つ簡易車両モデルを対象に風洞試験を実施した.流れの剥離を誘起する付加物有無の2条件で,空力6分力と表面圧力,周囲速度場を計測し,各定量値と関連する空力現象を示した.
著者
伊藤 裕子 相良 順子 池田 政子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.62-72, 2006
被引用文献数
1

本研究は,中年期夫婦を対象に,職業生活が夫婦関係満足度および主観的幸福感に及ぼす影響について,妻の就業形態により個人内と夫婦間で影響の仕方に差異がみられるかを検討した。妻フルタイム110組,妻パートタイム170組,妻無職106組の夫婦に,仕事へのコミットメント,夫婦関係満足度,主観的幸福感を質問紙により尋ねた。その結果,自身の仕事へのコミットメントが夫婦関係満足度に影響するのは妻のみで,夫では影響しない。しかし,夫の仕事へのコミットメントは妻の夫婦関係満足度および主観的幸福感にクロスオーバーな影響を及ぼし,夫の仕事へののめり込みの増大は妻の幸福感を低下させ,仕事満足感の増大は妻の夫婦関係満足度を高めていた。反対に,妻の仕事へのコミットメントが夫にクロスオーバーな影響をするのは妻がパートタイムの夫婦のみで,この場合,妻の仕事へののめり込みは夫の夫婦関係満足度を低下させ,仕事満足感の低さが夫の幸福感の低下を招くなど,夫は妻の仕事へのコミットメントの影響を受けやすい。妻の就業形態と収入,夫の分業観によって,職業生活が夫婦関係と心理的健康に及ぼすスピルオーバー/クロスオーバーな影響は異なっていた。
著者
伊藤 裕久
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.382, pp.120-129, 1987-12-30 (Released:2017-12-25)

This paper, taking Futsuka-machi, Tozan-Nakaokutama Village, Iwai District in the area of Sendai clan as an example, clarifies the historical process of the formation of the town belonging to the countryside in Tohoku area in the Edo period through an analysis of the town form and its historical materials. This town originated in a late medieval small castle town which had been founded under a fort, and this restricted its reconstruction in the early Edo period (about 1639). Features of this reconstruction are as follows ; (1) Machikonoshn who were the habitants of Machiyashiki (townhouse) established their own community, and reconstructed the town by themselves. Particularly they built a streight street which had a L-shaped bend at the south end of the town. This arrangement arised from their consciousness of the regularization of Mchinami (townscape on a street). (2) On the east side of the street lined Machiyashiki, and on the west was the huge farmhouse, originated in Zaike (a type of medieval farmhouses), which didn't belong to the town community. Such difference of dwelling places on each side of the street had been succeeded since the late medieval ages. (3) The area of Machiyashiki is of a small scale as compared with others in this village, and its frontage was divided almost equally. However the habitants had large differentials in landholding. This is one of the characteristics of the townplanning in Tohoku area in the early Edo period.
著者
伊藤 裕夫
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.18-21, 2007-12

これからの大学は、単に教育・研究の場としてだけでなく、様々な形で地域社会と連携し、貢献することが求められてきている。富山大学芸術文化学部では、平成18年12月から、北日本新聞社と共催で「夕塾(せきじゅく)」をスタートさせたが、これもこうした試みの一つである。 夕塾は、基本的には学生たちが高岡市や富山県の文化や産業について、実際に関わってこられた方々のお話を通して学ぶ場を、広く市民の方々にも公開し、学生も市民も一緒になって皆でこれからの地域社会のあり方について考えていこうという特別授業である。学生には、普段の授業では受けられない、現実の社会や地域の課題に触れる機会を設け、芸術文化学部で学ぶことの意義をつかんでもらうとともに、これらを通して、大学を地域の文化拠点として、地域づくりに貢献していくための「出会いの場」を形成していくことを目指している。 以下、平成18年度に開催された6回の夕塾の概要を報告する。
著者
伊藤 裕子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.3-15, 2018-12

東日本大震災を契機として,我が国の科学技術コミュニケーションは,専門家と非専門家との双方向のコミュニケーションの推進に対しても効果的であることが期待されるようになった.しかし,専門家と非専門家との間には,知識量のみならず認知や行動においても非対称性があり,この非対称性がコミュニケーションの不具合を引き起こしている可能性がある.本研究は,医薬品情報を対象とし,双方向のコミュニケーションに影響を与える非対称性の特徴及び状況や背景を明らかにすることを目的として,専門家及び非専門家の両方にアンケート調査を実施し,非対称性を分析した.その結果,医薬品情報のコミュニケーションには,コミュニケーションの不具合の認知や解釈において非対称性が生じていることがわかった.さらに,非対称性を生じ易い背景として,非専門家では情報収集をしないこと及び専門家とのコミュニケーションを諦めていること,専門家では尋ねられた情報が知らない情報であることを非専門家に伝えないことが示された.したがって,医薬品情報における双方向のコミュニケーションを成功させるためには,専門家と非専門家のそれぞれに対する情報教育,質の高い情報のオープン化,非専門家が利用し易いコミュニケーションツールの開発が必要と考えられる.
著者
牧野 聖也 狩野 宏 浅見 幸夫 伊藤 裕之 竹田 和由 奥村 康
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.350b, 2014

【目的】昨年本学会において,我々は<i>Lactobacillus delbrueckii</i> ssp. <i>bulgaricus</i> OLL1073R-1(1073R-1乳酸菌)で発酵したヨーグルトの摂取が男子大学生に対してインフルエンザワクチン接種後のワクチン株特異的抗体価の増強効果を発揮することを発表した.今回,より幅広い世代の男女に対して,1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルト(1073R-1ヨーグルト)がインフルエンザワクチン増強効果を発揮するか否かを明らかにすることを目的に二重盲検並行群間比較試験を実施した.【方法】インフルエンザワクチン株に対する特異的抗体価が40倍未満の20歳以上60歳未満の男女62名(25-59歳;平均年齢43.7歳;男性25名,女性37名)を2群に分け,1073R-1ヨーグルト群には1073R-1乳酸菌で発酵したドリンクヨーグルト,プラセボ群には酸性乳飲料を1日1本(112ml),インフルエンザワクチンを接種する3週間前から接種6週間後まで摂取させた.摂取開始前,ワクチン接種時,接種3週間後,接種6週間後,接種12週間後に採血を行い,接種したワクチン株に特異的な抗体価をHI法で測定した.【成績】インフルエンザA型H1N1,B型に対する抗体価はワクチン接種後にプラセボ群に比べて1073R-1ヨーグルト群で有意に高い値で推移した.【結論】1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトの摂取は,幅広い世代の男女に対してインフルエンザワクチン接種の効果を増強する可能性が示された.
著者
伊藤 裕 Hiroshi ITO 鈴鹿大学 Suzuka Universitiy
出版者
鈴鹿大学
雑誌
鈴鹿大学紀要Campana = Suzuka University journal (ISSN:21896984)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.45-62, 2016-03-10

本稿は、法的親子関係の成否をめぐって社会的に注目された裁判事例を素材に、そこでの議論の多くが血縁関係の存否という事実に目を奪われ、法的親子関係の本質を見落としているとの視点から、改めて法的親子関係の市民社会法における本来的意義、機能を確認しておこうとするものである。市民社会法の論理からは、法的親子関係に血縁を無媒介に反映させることは許されず、保護義務の強制を根拠づける契機は自由な意思にこそ求められるべきであることを論じる。
著者
伊藤 裕之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.271-275, 2005-06-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
2

電子情報資源の増大は図書館員の業務を一変させた。その反面, 紙媒体の情報資源管理を目的とした総合図書館システム(Integrated Library System, ILS)を利用して, 基幹の受け入れ業務を行っている図書館がまだまだ主流をしめている。紙媒体の情報資源と電子情報資源とは性格の異なる部分が多く, 今や電子情報資源管理を支援する適切なツールの不在は明らかである。本稿では, 電子情報資源管理システム(ERMS)の現状とその機能について, 主に北米の大学図書館における取り組みを紹介していく。