- 著者
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佐光 恵子
中下 富子
伊豆 麻子
- 出版者
- 群馬大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究の目的は、自然災害に被災した児童生徒の心身のケアを迅速にかつ適切に進めていくために、被災時の避難所としての学校保健室の機能と養護教諭の役割を明らかにするすることである。第1段階は、新潟中越沖地震による震災直後から学校再開までの学校教育現場における養護教諭の実践活動の実態を明らかにするとともに災害時の保健室の機能を検討した。新潟中越沖地震を経験した養護教諭を対象に半構成的面接法によるインタビュー調査を実施し、質的な内容分析を行った。結果、被災直後から学校再開までの約40日間の養護教諭の実践活動は7つのカテゴリー、「避難所への保健室備品提供と緊急応急的な対応」「児童生徒の安否確認と健康観察」「児童生徒の心のケア」「衛生管理と感染予防活動」「避難所での継続的支援と他職種との連携」「学校再開に向けて保健室復元」「教職員の健康管理」に整理された。課題として、「保健室の環境整備」「情報支援」、「避難所の運営」、「人的支援」、「養護教諭への支援」が示された。第2段階は、自然災害時に応急救護としての機能を学校保健室が持てるために、保健室の備品等の整備現状と課題を明らかにすることを目的に、新潟県の公立学校に勤務する養護教諭372名を対象に保健室の設定状況や必要な備品に関する認識等の自記式質問紙調査を実施した。結果、養護教諭が災害時において学校保健室に必要と考える備品等は、「情報収集のための器機」と「救急処置・疾病予防処置」に関する内容が多かった。しかし、実際の保健室の整備状況は、パソコンやインターネットの設置率は8割を超えたが、テレビの設置率は1割ほどであった。救急箱や救急用医薬品は整備されていたが、松葉杖や滅菌機は4割弱、車いすの設置は3割弱、保健室に隣接するトイレやシャワーの設置は1割であった。保健室環境では、救急車が隣接できない保健室が5割弱を占め、災害緊急時に一時的な保健室の受入れは不可能であると回答した養護教諭は3割弱を占めた。以上のことから、災害緊急時に学校保健室が児童生徒や教職員への対応のみならず、高齢者や小児を含む地元住民の緊急的な多様なケアニーズに対応するためには、避難所となる学校施設における、災害時における学校保健室の機能と養護教諭の役割を明確にする必要があり、保健室の備品や環境整備が喫緊の課題であることが示唆された。