著者
木村 和哲 前田 康博 堀田 祐志 佐々木 昌一 片岡 智哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2005年に男性型脱毛症治療薬のフィナステリド、2009年に前立腺肥大症治療薬のデュタステリドが承認された。これらの薬剤は5α還元酵素を阻害する薬剤であり、これまでの報告によると5α還元酵素阻害剤服用患者で勃起障害(ED)の副作用が見られたことを報告されている。EDと同様の機序で動脈硬化が進行することが知られており、本研究では5α還元酵素阻害剤による心血管機能への副作用を検討した。ラットにデュタステリドを連日投与したところ、4週後および8週後の時点でEDを発症した。一方、大動脈を用いて血管内皮機能を薬理学的に評価したところいずれの期間においてもデュタステリド投与による変化は観察されなかった。
著者
佐々木 昌一 窪田 泰江 小島 祥敬 岡田 真介 高田 麻沙 郡 健二郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

モルモットを用いてBOOモデルを作成し、過活動膀胱の発症機序について検討したところ、Kit陽性ICC様細胞は、BOOモデルの膀胱粘膜下層および漿膜側を中心に、正常膀胱に比べ増加していた。またSCF は尿路上皮を中心に発現が増加していた。BOOモデル動物ならびに膀胱炎も出るラットにイマニチブを投与したところ、排尿圧を変化させることなく、non-voiding contractionを抑制し、排尿間隔を延長させることが判った。この結果からKitがICC様細胞を介して過活動膀胱の発症機序に関与している可能性が示唆された。
著者
佐々木 昌一 池内 隆人 神谷 浩行 小島 祥敬 梅本 幸裕 郡 健二郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.559-563, 2004-08

擬似的な微小重力環境における哺乳類の造精機能や精子運動性,受精,初期発生に対する影響を検討した.微小重力環境における頭側への体液移動モデルである尾部懸垂マウスでは,精巣/体重比と血清テストステロン値が有意に減少した.ジェット機のパラボリックフライトにより作り出された微小重力環境においてヒト精子運動能は低下した.クリノスタットを利用した擬似微小重力環境下では体外受精の受精率には影響しなかったが,96時間の培養でマウス受精卵が桑実胚および胞胚形成した割合は有意に少なかった.微小重力環境下では,精巣萎縮とテストステロン産生低下をきたし,精子運動性の低下を認めるが,受精能には影響を与えず,受精卵の初期発生には障害を及ぼす可能性がある
著者
林 祐太郎 郡 健二郎 小島 祥敬 佐々木 昌一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

今回われわれは,外因性内分泌攪乱物質の中でもダイオキシンに注目し,男子の生殖器奇形児のダイオキシン曝露量の指標として,患児を出産した母親の血液中のダイオキシン濃度を測定し,ダイオキシンが男子生殖器奇形の一因となる可能性について分析・評価した。実際には尿道下裂の患児の母親5名の血液中のダイオキシン濃度を測定した(採血した平成12年の段階での患児の年齢は1歳1例,3歳3例,5歳1例)。測定した化学物質はポリ塩化ジベンゾパラダイオキシン(PCDD)分画7種類とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)分画10種類であった。ダイオキシンの分析は,電子捕獲検出器付ガスクロマトグラフ法によって行った。得られたダイオキシン各分画の濃度を,最近環境庁が発表した一般環境住民の血液中ダイオキシン異性体別濃度平均と比較した。またそれぞれの分画の構成比率についても比較検討した。なお地域の偏りを少なくするために対象の5名は3県から選択した。それぞれの分画の濃度の比較で,1SDを越える異常値を示す症例はなかった。またPCDD,PCDF,PCDD+PCDFについても1SDを越えるものは認められなかった。分画の構成比についての検討では,ダイオキシン類の中でも最も毒性が強いとされている2,3,7,8-TetraCDDの割合が,環境庁の示した一般人のデータの平均を3例で上回っているほかに特徴的な所見はなかった。以上,尿道下裂の発生の増加に,近年問題にされている環境ホルモンのダイオキシンが関与しているかどうかを調査する一手段として,母親の血中ダイオキシン濃度を測定したが,一般人の血中ダイオキシン濃度との有意差を認めなかった。