著者
星川 清親 佐々木 良治 長谷部 幹
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.328-332, 1995-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
3 6

水稲乳苗の育苗期間を一層短縮化し, しかも機械移植に必要とされる苗丈(7 cm)の確保を目的として, 育苗期間と光条件をかえた4種の乳苗の育苗をロックウールマットによりおこなった. そして育苗した乳苗の移植後(5, 10日後)に活着生長を調査した. 出芽後も暗条件下で育苗した乳苗(イエロー乳苗)の苗丈は育苗期間7日で 9.6cm, 一方, 出芽後2日間緑化し(グリーン乳苗)さらに3日間ハウス内で育苗した乳苗の苗丈は5.5cmであった. 育苗期間4日のイエロー乳苗の苗丈は4.1cmで, 機械移植に必要とされる苗丈には達しなかった. 移植後の根数, 最長根長は, 同じ育苗期間のイエロー乳苗とグリーン乳苗との間で有意な差はなかったが, 移植後10日間の乾物重の増加は, イエロー乳苗が若干少なかった. 4種の乳苗の育苗期間中の乾物重との増加は, 胚乳養分の消費量と相関関係(r=0.984)にあった. 移植後5日間の乾物重の増加と胚乳養分の消費量の間でも相関関係(r=0.994)があり, 活着期の生育は, 胚乳養分にかなり依存していた. 以上の結果より, イエロー乳苗の活着は, グリーン乳苗に比較すると若干劣るものの,実用性があると思われた.
著者
大平 陽一 竹田 博之 佐々木 良治
出版者
日本作物學會
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.58-65, 2009 (Released:2011-03-05)

タンパク質変異米水稲品種の米粒内における種子貯蔵タンパク質の分布特性を明らかにするために、搗精歩合の異なる米粒のタンパク質含有量を調査し、米粒内の層別のタンパク質含有量と存在割合を算出した。タンパク質変異米水稲品種では、一般食用水稲品種「ニホンマサリ」と同様に、米粒の外層部である100〜>80%層に総タンパク質の44〜45%が存在した。一方、易消化性タンパク質は、いずれの品種も100〜>80%層に44〜48%が存在したが、「ニホンマサリ」では90〜>80%層に最も多く、タンパク質変異米水稲品種では100〜>90%層に最も多かった。タンパク質変異米水稲品種において易消化性タンパク質が最外層に多く集積する傾向は、低グルテリン米水稲品種より低グルテリン・26 kDaグロブリン欠失米水稲品種で顕著だった。「ニホンマサリ」では、主要な易消化性タンパク質である37-39 kDaグルテリンαと22-23 kDaグルテリンβが90〜>80%層に多く存在しているのに対し、タンパク質変異米水稲品種では、37-39 kDaグルテリンαや22-23 kDaグルテリンβの量が低下し、相対的に易消化性タンパク質に占める割合が高くなった57 kDa超過タンパク質と57 kDaタンパク質が100〜>90%層に最も多く存在していた。したがって、易消化性タンパク質の分布における品種間差異は、これらのタンパク質画分の分布特性の差異を反映したことによると推察された。易消化性タンパク質は、80〜>70%層を含む層よりも内層部ではより少ない割合でしか存在しなかったので、玄米から易消化性タンパク質を効率的に低減するには、80%程度の搗精歩合が望ましいと考えられた。
著者
大平 陽一 竹田 博之 佐々木 良治
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.58-65, 2009 (Released:2009-02-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3

タンパク質変異米水稲品種の米粒内における種子貯蔵タンパク質の分布特性を明らかにするために, 搗精歩合の異なる米粒のタンパク質含有量を調査し, 米粒内の層別のタンパク質含有量と存在割合を算出した. タンパク質変異米水稲品種では, 一般食用水稲品種「ニホンマサリ」と同様に, 米粒の外層部である100~>80%層に総タンパク質の44~45%が存在した. 一方, 易消化性タンパク質は, いずれの品種も100~>80%層に44~48%が存在したが, 「ニホンマサリ」では90~>80%層に最も多く, タンパク質変異米水稲品種では100~>90%層に最も多かった. タンパク質変異米水稲品種において易消化性タンパク質が最外層に多く集積する傾向は, 低グルテリン米水稲品種より低グルテリン・26 kDaグロブリン欠失米水稲品種で顕著だった. 「ニホンマサリ」では, 主要な易消化性タンパク質である37-39 kDaグルテリンαと22-23 kDaグルテリンβが90~>80%層に多く存在しているのに対し, タンパク質変異米水稲品種では, 37-39 kDaグルテリンαや22-23 kDaグルテリンβの量が低下し, 相対的に易消化性タンパク質に占める割合が高くなった57 kDa超過タンパク質と57 kDaタンパク質が100~>90%層に最も多く存在していた. したがって, 易消化性タンパク質の分布における品種間差異は, これらのタンパク質画分の分布特性の差異を反映したことによると推察された. 易消化性タンパク質は, 80~>70%層を含む層よりも内層部ではより少ない割合でしか存在しなかったので, 玄米から易消化性タンパク質を効率的に低減するには, 80%程度の搗精歩合が望ましいと考えられた.
著者
佐々木 良治 星川 清親
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.259-267, 1997-06-05
被引用文献数
2

水稲乳苗の活着における鞘葉節冠根の役割を評価するために, 乳苗の根系を構成する種子根および鞘葉節冠根に種々の断根処理を施したのち移植し, 7日間生育させ活着への影響を調査した. 根の基部から1.5cmあるいは3.0cmですべての根を切断して移植しても, 移植7日後の生育は, 断根処埋をしない無処理苗の生育と同様であった. しかし, 切断位置を根の基部から0.5cmにして移植すると, その生育は, 無処理苗の生育に比べて有意な低下を示した. また, 種子根と4本の鞘葉節冠根の根端を除去して移植しても, 第3葉の抽出速度および移植7日後の生育はほとんど影響を受けなかった. 一方, 種子根と最長の鞘葉節冠根とをその基部で切断して移植すると, 移植後の生育は明らかに抑制された. 移植7日後の総乾物重 (茎葉と根) および移植した苗に残存した根の総根長を, 無処理苗に対する処理苗の割合として表し両者の関係をみると, 総乾物重は残存した根の総根長と密接に関連し, 総根長の減少にともなって低下した. これらの結果は, 移植された乳苗の生育は, 苗に残存した根の総根長によって影響されることを示唆している. 移植された乳苗にとって, 鞘葉節冠根は養水分の吸収という点で大きな役割を担い, 第1節冠根を速やかに発根させることで活着すると推察される.