著者
須崎 有康 佐々木 貴之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.576-579, 2020-05-15

近年のOSは再規模/複雑になっており,脆弱なコードの混入を完全には取り除くことができない.このため,物理的にOSとは隔離して実行する機能であるTrusted Execution Environment (TEE)が高機能なCPUでは備わっている.よく使われているCPUのTEEとしては ARMのTrustZone,IntelのSGX(Software Guard Extensions),RISC-VのKeystoneが挙げられる.残念なことに,それぞれのTEE実装はそのコンセプトやターゲットが異なり,誤解を招いている.本論文ではそれぞてのTEE実装について解説するとともにその違いについて説明する.また,活用分野の理解を深めるためにユースケースとして鍵管理,ペイメント機構,プライバシー保護などを紹介する.
著者
石黒 正揮 山崎 重一郎 佐々木 貴之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.520-523, 2023-09-15

暗号資産,デジタル所有権NFT,分散型自立組織DAOなどブロックチェーン技術をベースとした応用・サービスはWeb3.0と呼ばれ,従来のインターネット経済に大きなパラダイム転換をもたらすものとして注目されている.政府においても,内閣府,経産省,総務省などによりWeb3.0経済の推進に向けて検討が進められている.一方で,国内外においてWeb3.0に対する大規模なハッキングや事件が繰り返し発生し,Web3.0経済の発展の障害となっている.本特集では,Web3.0の普及に向けて,Web3.0のリスクや課題を明らかにするとともに,それらに対する解決の方向性,将来展望を示す.
著者
袖 美樹子 佐々木 貴之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.398-401, 2022-07-15

AIと言えば深層学習と言ってよいほど深層学習が現場で導入されるようになってきている.深層学習の問題はなぜその結果が導かれたのか説明性に欠ける点にある.結果は正しそうだが本当に正しいのか? なぜその結果が導かれたのか? 他の解はないのか? 人は理解し納得して使いたい.その要求に答える技術がXAI(eXplainable AI)である.本特集ではまずXAIがどのような技術なのかを解説いただく.次に利用に際し必要となる勘所が分かるようITを得意とする企業の第一線で活躍する技術者の方々に導入事例を紹介いただく.
著者
濱本 亮 佐々木 貴之 森田 佑亮 三好 一徳 小林 俊輝
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

GlobalPlatform によってTrusted Execution Environment (TEE) と呼ばれるハードウェアレベルのセキュリティ機能が定義されており,組み込みデバイス向けのCPUを展開しているARM ではTEEの実装例としてTrustZoneと呼ばれる機能が公開されている.しかし,TEEによって構成されたセキュアなメモリ空間(セキュア空間)はアクセス権限が1種類しか設定できず,アーキテクチャ設計の柔軟に欠ける.そこで本稿では,TEEのセキュア空間が持つ権限を多段階で設定できるアクセス制御の基本設計を提案する.
著者
須堯 敦史 佐々木 貴之 小宮 雅美 坂井 宏旭 益田 宗彰 植田 尊善
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BaOI2022-BaOI2022, 2011

【目的】我々は第45回日本理学療法学術大会で、当院において高位頚髄損傷者に対する非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)の導入が開始されたことを報告した。高位頚髄損傷者に対するNPPVは、気管切開を介した侵襲的な人工呼吸器管理に比べ、喀痰の大幅な減少や声によるコミュニケーションなど多くのメリットが得られる反面、デメリットとして呼吸器外れなどのリスク上昇が挙げられる。メリットは大きいものの、そのデメリットが家庭復帰の障害になる可能性が考えられる。本邦における高位頚髄損傷者へのNPPV導入は歴史が浅く、家庭復帰後の状況に関する報告はない。今回、NPPVで家庭復帰された高位頚髄損傷者の現況を把握するため、調査をおこなった。<BR>【方法】症例は当院入院中、あるいは当院より転院後にNPPVを実施し、NPPVのまま自宅復帰した高位頚髄損傷者2例である。症例1は20代の男性、診断名は第4頚椎脱臼骨折による頚髄損傷である。受傷後に麻痺の上行があり、運動・感覚機能はともに第1頚髄節以下の麻痺を呈している(ASIA impairment scale:A)。自発呼吸は不可であった。単身で生活している。症例2は50代の男性、診断名は第1頚椎脱臼骨折による頚髄損傷である。運動・感覚機能はともに、第2頚髄節以下の麻痺を呈している(ASIA impairment scale:B)。肺括量は540mlであった。家庭での主な介護者は妻である。症例に対し、家庭におけるNPPVの実施状況について、アンケート調査をおこなった。調査項目は(1)呼吸器離脱可能な連続時間、(2)家に一人でいる時間・頻度、(3)呼吸器外れの経験、(4)緊急時の対応策、(5)社会資源の利用状況、(6)NPPVの満足度、についてであり、自由記述形式とした。アンケート実施時には、症例1は受傷後約6年(自宅復帰後2年7ヵ月)を、症例2は受傷後約3年(自宅復帰後3ヵ月)を経過していた。<BR>【説明と同意】症例には本研究の趣旨について十分に説明し、症例情報・結果を研究報告することに関して、同意を得た。<BR>【結果】アンケートの結果は上記項目順に以下の通りである。症例1の結果は、(1)呼吸器離脱不可、(2)家庭では常時介護者あり、(3)1度経験あり救急搬送、(4)パルスオキシメーターの常時装着とヘルパーに対する緊急時徒手送気方法の指導、(5)24時間365日ヘルパー利用および定期的な医師・看護師・理学療法士の訪問、(6)非常に満足している、であった。症例2の結果は、(1)2時間の呼吸器離脱可能、(2)週に3回程で1回につき1時間程度(外部から状況視聴可能なカメラを設置)(3)経験なし、(4)自発呼吸にて対応可能、ナースコールにて外部へ連絡、(5)定期的な医師・看護師・理学療法士の訪問、週3回のヘルパー利用、(6)非常に満足している、であった。<BR>【考察】アンケート調査をおこなった2例の高位頚髄損傷者は、呼吸残存能力に大きな違いがある。そのため、各症例における家庭でのNPPV実施状況は、特に呼吸器外れに対する監視体制の点で異なっていた。症例1は自発呼吸が不可なため、何らかのトラブルで呼吸器外れが発生した場合、生命に関わる。そのため、家庭では常時他者からの監視が必要で、緊急時の対策についても十分な準備がなされていた。それに対して症例2は自発呼吸が可能であり、短時間ではあるが実際に一人で家にいることが出来る状況であった。すなわち、呼吸能力強化による呼吸器離脱時間の延長が、介護者の身体的あるいは心理的負担の軽減に繋がると考えられ、この点が高位頚髄損傷者に対するNPPV導入のポイントになるであろう。また、NPPVに対して、両症例ともに一定の満足が得られており、NPPVで得られるメリットが、症例の生活や心理に良い影響を与えていることが示唆された。両症例とも、侵襲的な人工呼吸器管理での気管切開に伴う苦痛、発声不可、喀痰の出現を経験しており、それらがNPPVによって解消されたことが、満足を得られた要因であると考える。NPPV導入に関しては、家庭復帰後の生活・介護者の負担などを想定した上で実施するべきであるが、NPPVのメリット・デメリットに対する捉え方は、個々の考え方やニーズによって異なるため、一概にリスクが高まるから導入すべきでないとは言えない。今回報告した症例のように、NPPVが症例の身体に多くの恩恵を与えることは疑う余地がなく、呼吸残存能力に合わせたリスク対策および監視体制を整えれば、高位頚髄損傷者の呼吸管理として推奨すべき方法と言える。<BR>【理学療法学研究としての意義】NPPVで家庭復帰した高位頚髄損傷者は、本邦でまだ数例しかおらず、本研究は今後NPPV導入を試みる医療者および患者にとって、非常に有益なものと考える。