著者
佐伯 有常
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3-4, pp.118-124, 1956-11-30 (Released:2009-10-16)
参考文献数
2
被引用文献数
1

新しく造つたコンクリート池での魚の飼育は順調に行かないことが多い.これは “アク” が出るからだといわれている。即ち, セメント中の石灰その他のアルカリが原因 [1] と考えられるが, 筆者はモルタルブロツクの海水, 淡水等での浸漬試験をして, これについて吟味, 考察を行つた.コンクリートの “アク” についてモルタルブロックの浸漬試験により次の結果を得た.(1) コンクリートの “アク” はその固化に際し著量の炭酸を吸収すること。遊離アルカりの溶出することが原因と考えられる.(2) この結果pHの上昇, アルカリ度の低下, カルシウムの沈澱等がみられる.(3) コンクリート作製後1ヵ月で “アク” は少くなるが, その後カルシウムの溶出等があり, 水に殆ど影響を及ぼさなくなるのは数ヵ月後であろう.(4) “アク” の防禦法としてはアルミニウム塩や水ガラスでの洗滌塗布よりビニールペイントの塗布が有効であろう。
著者
桑原 連 佐伯 有常 中島 真一
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.135-149, 1992 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24

飼育水量を節約した循環濾過式飼育法を採用している各地の水族館について, 水質, 水槽および濾過槽の規模, 飼育状況を調査し, それらのデータに表された魚類の代謝に基づく硝酸態窒素の蓄積, 窒素とリンの比などに関して天然海水と比較して論じた.次いで, 魚類の分泌排泄するアンモニアを硝化する微生物の浄化能力を支配する濾材量に関して, 佐伯のbalanced aquarium理論および濾材と浄化能に関する実験結果を基に, 検討, 整理した.これらの結果から, 循環濾過式飼育法における魚類飼育量に対する濾材必要量, 硝酸態窒素の蓄積を防ぐのに必要な補給水量, 魚類の酸素消費量に見合った酸素補給量などの算定法を考案し, 循環濾過式飼育水槽の設計・計算法を示した.
著者
佐伯 有常
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.207-214, 1961

コイの酸素消費量・有機物等の分泌排泄量, 酸素の補給量, 有機物等の浄化能を基礎として設計, 改造したろ過循環式の蓄養池で, 実際にコイを蓄養した時の水質等の調査をしたところ, 次の結果が得られた。<br>(i) 酸素の補給量はコイの消費量とろ過池での消費量との合計以上必要で, 後者は前者の40%にもおよんだ。<br>(ii) コイの酸素の消費量は26℃で40cc/h/kgであった。 これは一般の養殖の場合より少ないものであり, これに伴って排泄量等も減少しているものと考えられる。<br>(iii) コイの循環式蓄養池の設計基準は次のようになる。<br>○窒素化合物 (および有機物) のbalanceについて<br>コイの代謝はNとして100g/day/ton。<br>ろ過用礫 (粒径1cm) の浄化能16g/day/m<sup>3</sup>。<br>故にコイ1tonについて必要なろ過用礫は6mm<sup>3</sup>となる。<br>○酸素 (および炭酸ガス) のbalanceについて<br>コイの消費量50<i>l</i>/h/ton。<br>浄化用礫等の消費量1.5<i>l</i>/h/ton。<br>故にコイ1tonについて補給さるべき酸素量は59<i>l</i>/hとなる。<br>この酸素を水の落下・循環により求めるときは, 池水の最小溶存酸素量1cc/<i>l</i>で落下距離が1mおよび2mのときに, それぞれ24mm<sup>3</sup>/h, 21mm<sup>3</sup>/hの循環水量が必要となる。<br>また用水を落下曝気させたときの酸素の溶入量を求める表をつくった。 これにより一般魚介類の循環式飼育等における循環水量を求めることができよう。