著者
林 はるみ 佐山 光子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.83-92, 2009 (Released:2009-08-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

目 的 本研究は,生殖補助医療で妊娠した女性が,治療の成功から出産に至るまでどのような感情のプロセスをたどるのかを質的研究によって浮き彫りにすることである。対象と方法 研究の参加者は,生殖補助医療によって妊娠し,初めて出産した産後1~6ヶ月の女性で倫理的手続きを経て研究協力の承諾が得られた8名。半構成的面接を行い,その逐語記録をデータとし,現象学的アプローチによって質的記述的に分析した。本研究における感情とは,外界の刺激に応じて絶えず変化する,快・不快,喜び,怒り,悲しみなどの気持ちと定義する。結 果 妊娠から出産への通時的な流れの中で,主要テーマは,【妊娠したことによる使命感と重圧】,【嫉妬心を避けるための気遣い】,【不安に立ち向かうための知恵】,【母親の自覚】,【孤独感からの解放】,【自信の回復】,【不妊や治療経験の肯定的受容】,【成長した自己の確認】,【妊娠の喜びの実感】の9つに集約された。妊娠が判明すると,妊娠の喜びを感じる一方で,祝福されることによる重圧を感じていた。妊婦として受診する時は,不妊治療をしている人の嫉妬心を避けるために気遣いをしていた。妊娠早期から胎児の母親であることを自覚し,妊娠中の不安に立ち向かっていく中で孤独感から解放され,ひとりではないという感情をもつようになっていた。妊娠5ヶ月を転換期として自信が回復し,不妊や治療経験の肯定的受容と成長した自己の確認がみられた。胎児がいつ生まれてもよい状態になると妊娠の喜びを実感していた。以上のようなダイナミックな感情のプロセスが見出された。結 論 生殖補助医療によって妊娠した女性の感情のプロセスは,9つの主要テーマに集約された。妊娠4ヶ月まではARTによって妊娠した女性特有の感情がみられたが,妊娠5ヶ月が転換期となり,通常の妊婦と大きく変わらない感情をもっていた。
著者
西原 亜矢子 佐山 光子 渡邊 登 小浦方 格
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

研究目的は「新潟大学保健学研究科『GSH(性差保健)研究実践センター』の事業展開過程を継続的に関係者と共同省察することにより、GSH研究・実践を通じた大学の地域貢献事業の意義と課題を三つの観点から抽出することである。結果は以下の通りである。①大学教員が事業参画により、住民ニーズ、研究・教育活動をとらえ直し、専門職集団へ働きかけを行う等、大学研究にも実践的還元が見出せた、②関係機関が蓄積する実践的知識の集約が事業展開に寄与する、③「研究データに基づく説明」「男性の健康問題へのアプローチ」が男女共同参画に寄与する要件となる。