著者
柳田 紀之 飯倉 克人 小倉 聖剛 王 怜人 浅海 智之 佐藤 さくら 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1341-1347, 2015 (Released:2015-12-29)
参考文献数
13

【目的】アドレナリン自己注射薬を誤射した3症例の臨床経過を検討し,報告する.  【症例1】50代女性がエピペン®0.3mgをトレーナーと間違えて自分の右大腿部に誤射した.収縮期/拡張期血圧は7分後に144/78mmHgと一過性の上昇を認め,14分後には軽快した.7分後に動悸を訴えた以外,自覚症状は注射部位の局所の痛みのみであった.  【症例2】6歳男児がエピペン®を用いて遊び,右第二指に誤射し,貫通した.貫通部位の発赤,腫脹を認めたが,保温のみで誤射80分後には軽減したため,帰宅した.【症例3】4歳女児がエピペン®を用いて遊び,右大腿に誤射した.誤射23分後に収縮期/拡張期血圧は123/70mmHgと一過性の上昇を認めたが軽快し,1時間後,帰宅した.  【考察・結語】アドレナリン自己注射薬の誤射による副反応は一過性であり,3例とも重篤な副反応は認めなかった.アドレナリン自己注射薬の誤射防止のため取り扱いには十分な注意が必要である.
著者
佐藤 さくら 田知本 寛 小俣 貴嗣 緒方 美佳 今井 孝成 富川 盛光 宿谷 明紀 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.187-195, 2007-06-01 (Released:2007-12-26)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

アナフィラキシー補助治療薬のエピペン®が我が国で発売され,2004年5月から2005年10月まで当科で同薬を処方した食物アレルギー患者は50名(男33名,女17名,0.3mg:15名,0.15mg:35名)に上る.対象の平均年齢は6.8歳でアトピー性皮膚炎合併が78%,気管支喘息合併が52%であった.原因食品摂取時に呼吸器症状を96%,皮膚症状を92%に認めた.アナフィラキシー症例は48例で,食物アレルギー発症時の臨床型は36例が“食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎”,即時型症状8例,食物依存性運動誘発アナフィラキシー4例であった.アナフィラキシーを起こした理由は,初回,2回目以降も誤食によるものが最多であった.アナフィラキシー反復例は31例で,複数抗原に対してアナフィラキシーを起こした例や原因不明例も存在した.今回の処方50例中実際に使用された例は1例あり,17歳のナッツアレルギー患者において使用され著効していた.医師,コメディカルにおいてまだ認識が不十分なエピペンであるが,アナフィラキシーを起こす可能性のある食物アレルギー児に対して保護者と相談の上で処方していくべきである.
著者
浅海 智之 佐藤 さくら 柳田 紀之 山本 幹太 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.1219-1223, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
13

症例は8歳男児.4歳から春と秋の花粉症を認めた.6歳時から給食後に鼻汁,鼻閉,目のかゆみ,呼吸困難を2カ月に1回程度認めたため,精査目的に8歳時に当院を受診した.病歴からリンゴアレルギーが疑われ,9歳時に入院食物経口負荷試験(OFC)を行った.リンゴ1個を摂取し,90分で咳嗽,鼻汁,眼瞼浮腫,結膜充血を認めた.14歳時に再度入院OFCを行い,リンゴ1個を摂取し55分で咳嗽,呼吸困難,喘鳴を認めた.8,9,11,12,13,14歳でのリンゴ特異的IgE(Ua/ml)は0.35未満,0.35未満,0.36,0.54,0.47,0.66,ハンノキ特異的IgE(Ua/ml)は0.35未満,0.49,1.31,2.14,2.73,3.11,Mal d 1特異的IgE(Ua/ml)は0.10未満,0.13,0.25,0.45,0.88,1.1,Bet v 1特異的IgE(Ua/ml)は0.10未満,0.40,1.0,1.4,2.4,2.8といずれも上昇を認めた.Mal d 3特異的IgEは陰性のままであった.本症例は,全身症状を呈するリンゴアレルギーの感作状況を陰性時から経時的に追うことができ,なおかつ長期経過をOFCで確認できた世界初の報告である.全身症状を呈する果物アレルギーの自然歴の把握のために,同様の症例の蓄積が期待される.
著者
竹井 真理 柳田 紀之 佐藤 さくら 海老澤 元宏
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.22-26, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16

2008年に二重抗原曝露仮説が提唱され, 抗原に対する感作経路および食物アレルギー発症経路として炎症のある皮膚面, つまり湿疹の存在が重要視されるようになった. 乳児期の湿疹・アトピー性皮膚炎の存在は食物アレルギー発症のリスク因子であることはすでに報告されている. われわれが行った乳児湿疹を認める生後1か月児のコホート研究の中間解析結果からは, 乳児期早期発症の湿疹は食物アレルギー発症のリスク因子であり, 特に持続する湿疹病変, 皮膚バリア機能異常の存在が食物アレルギー発症にかかわる重要な因子であることが示唆された. 皮膚バリア機能を念頭においた乳児の湿疹に対する早期介入が食物アレルギーの発症予防につながる可能性が示唆されるが, 今後の前向き研究での検証が期待される. また湿疹病変がなくても食物アレルギーを発症している児がいることは事実であり, 感作経路や発症経路の解明も含め, まだ検討されるべき課題は多い.