著者
佐藤 まゆみ
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.97-108, 2019-03-31

本研究は、市町村を中心とする子ども家庭福祉の実施体制構築の必要性について、特に子どものレジリ エンスとそれを支える環境の1つとして社会的親に着目し、子ども家庭福祉を取り巻く現状を踏まえ、文 献研究に基づいて子どもの立場から理論的に検討することを目的とした。 その結果、現状からは、単相的育児の中で育つ子どもにとって、大人たちとの関わりの少なさはモデル の獲得や多様な人間関係、社会性の発達等の機会を乏しくさせていることが明らかになった。逆境にさら されても良好に適応する力であるレジリエンスは、「生涯を通して必要なもの」 であり、個人の生得的な 心の特性にのみよるものでなく、外的特性もあいまって 「支えられる」 ものである。そのため地域の中に 大人とのつながりを作ることが、子どものレジリエンスを支える環境となると考えられた。また、要保護 児童に限らず、地域で生活する子どもの中にも、親の離婚をはじめとするあいまいな喪失を体験する子ど もがおり、一生にわたり向き合う可能性があることから、レジリエンスは特に必要であることが明らかに なり、その力となるものの中には新しい関係性によるものが含まれていた。レジリエンスの防御推進要因 には、養育にかかわる大人がいることがあり、この点でも社会的親の必要性が指摘できる。 以上のことから、子どもの支援はある特定の時期に、特定の領域だけが関わるのではなく、子ども期全体、 必要があればその先まで見通し、支援チームを形成して支援の連続性を担保することが必要である。その ためには、虐待から子どもの命を救う対応等とは別の観点で、子どものレジリエンスに着目し、社会的親 と出会い、関わり生きていくための環境として、市町村を中心とする子ども家庭福祉行政実施体制を構築 する必要があると考えられた。
著者
佐藤 まゆみ 佐藤 禮子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.36-48, 1997 (Released:2017-03-28)
参考文献数
20

要 旨癌治療等のために手術により片眼球を喪失した患者10名に対して面接調査を行い,片眼球喪失患者の適応課題と課題克服に影響を及ぼす要因に関して,以下の分析結果を得た.1.片眼球喪失患者が,片眼球喪失に適応するためには,以下の2つの適応課題を克服する必要がある.①顔や視機能の変化により生じる喪失感を克服する.②顔や視機能の変化を補う新しい行動を獲得する.2.視機能の変化により生じる喪失感の克服には,視機能の変化を補う新しい行動を獲得し,身体を再統合する必要がある.3.顔の変化により生じる喪失感の克服には,変化した顔をありのままに受け入れ,義眼装用の顔についての他者の反応を肯定的に感じとることが必須である.4.視機能の変化を補う行動や義眼のケア行動といった新しい行動の獲得には,練習を繰り返すことが重要である.5.適応課題の克服には,以下の6つの要因が影響を及ぼす.即ち,①片眼球との決別のしかた,②障害者に対する考え,③顔の変形の程度,④職業,⑤ソーシャルサポート,⑥問題解決に利用できる知識である.