著者
吉田 裕子 佐藤 禮子
出版者
香川大学
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.9-16, 2007-03

本研究の目的は,終末期がん患者と周囲の人々とのつながりに関連する状況を明らかにし,終末期がん患者と周囲の人々とのつながりを促進させるための看護への示唆を得ることである.6名の終末期がん患者を対象に,参加観察法,面接調査法によって資料を得,質的分析により,以下を明らかにした.終末期がん患者と周囲の人々とのつながりに関連する状況は,【自己の価値を保てる】【人の輪の中に居て心地よく,安堵感を得る】【愛情や思いやりをとりかわす】【残してゆく家族の幸せを願う】【死を連想するような関わりをためらう】【愛情や思いやりが過剰で反って重荷になる】【家族や他者に負い目を感じる】【必死な思いが家族に伝わらない】【人との隔たりを感じ孤独に陥る】の9であった.これら9の状況は,つながりの有る状況とつながりの無い状況の2つに大別されていた.前者は,終末期がん患者が過酷な状況にありながらも生きていく力や励みを得ることを可能にするものである.一方後者は,終末期がん患者に過重なストレスを与え,生きる力を消耗させる可能性をもつものである.つながりの無い状況の根底には常につながりへの希求が在ると考えられ,つながりの有る状況と無い状況とは,表裏一体の関係にあると考えられた.従って,終末期がん患者と周囲の人々とのつながりは,関連する状況として両者を含め,つながりの正の部分,負の部分として捉えることが必要である.看護職者は,終末期がん患者と周囲の人々との交わりの根底には正のつながりへの希求が在ることを常に念頭に置くことが必要である.その上で,終末期がん患者と周囲の人々とのつながりを促進するためには,つながりが患者にとってどのような効果がもたらされているかをアセスメントし,つながりの負の部分の裏側にある正の部分を引き出し,育むための計画的看護介入が重要であるという示唆を得た.
著者
緒方 久美子 佐藤 禮子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.21-29, 2004-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, ICUに緊急入室した患者の家族員が表す情緒的反応を明らかにし, 家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方を検討することである. ICUに緊急入室した患者の家族員8名を対象に, 情緒的反応に関する内容について半構成的面接と参加観察による調査を行い,質的帰納的に分析し, 以下を明らかにした.ICU緊急入室患者の家族員の情緒的反応は,【先の見通しが立たない】,【医療者を信頼する】,【支えられている】,【負担に感じる】,【患者を守りたい】など, 17の主題にまとめられた. さらに, その意味の性質から,『回復の期待』,『医療への信頼』,『独りではない自分』,『課せられている自己』,『家族の絆』の5つの情緒的反応の本質が抽出された.家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方は, 家族員が回復の期待を持ち続けることができる援助, 家族員が医療への信頼を実感できる援助, 家族員が周囲の支援を効果的に使うことができる援助, 家族員が看病を長期的視野に入れることができる援助である.
著者
太田 節子 佐藤 禮子
出版者
千葉大学看護学部
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
no.26, pp.75-83, 2004-03

研究目的は,大腿骨頚部骨折で観血的治療後退院した高齢患者の退院後1年間の身体・精神・社会的特徴とその関連を明らかにし,看護援助の方法を検討することである.研究協力を得た意志疎通可能な65歳以上の患者9名とその家族・介護者を対象とし,退院後1年間数回の半構成質問による面接調査を行い,質的・帰納的に分析した.その結果,1.高齢患者は退院時歩行機能の良否に関わらず,適切な生活訓練により1~3ケ月でほぼ骨折前の生活に戻る.2.身体的,精神的および社会的特徴は①身体・社会的生活は縮小しても,家族の中で役割を果たし無理のない生活を送る②障害を持ちながら努力して生活するが家族は更なる自立を求めるため患者の不満がつのる③補助歩行となり,生活範囲が縮小したが介護者に見守られ規則的な生活を営む④施設リハビリ後,家族支援と介護保険を活用して生活を維持する⑤自宅退院後歩行は回復したが,持病悪化で死の転帰となるの5つを認めた.1年後も復職困難となる本障害の特徴,老化や危険要因を理解し,入院中はもとより外来,訪問看護等の継続看護が必要である.
著者
佐藤 まゆみ 佐藤 禮子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.36-48, 1997 (Released:2017-03-28)
参考文献数
20

要 旨癌治療等のために手術により片眼球を喪失した患者10名に対して面接調査を行い,片眼球喪失患者の適応課題と課題克服に影響を及ぼす要因に関して,以下の分析結果を得た.1.片眼球喪失患者が,片眼球喪失に適応するためには,以下の2つの適応課題を克服する必要がある.①顔や視機能の変化により生じる喪失感を克服する.②顔や視機能の変化を補う新しい行動を獲得する.2.視機能の変化により生じる喪失感の克服には,視機能の変化を補う新しい行動を獲得し,身体を再統合する必要がある.3.顔の変化により生じる喪失感の克服には,変化した顔をありのままに受け入れ,義眼装用の顔についての他者の反応を肯定的に感じとることが必須である.4.視機能の変化を補う行動や義眼のケア行動といった新しい行動の獲得には,練習を繰り返すことが重要である.5.適応課題の克服には,以下の6つの要因が影響を及ぼす.即ち,①片眼球との決別のしかた,②障害者に対する考え,③顔の変形の程度,④職業,⑤ソーシャルサポート,⑥問題解決に利用できる知識である.
著者
濱田 由香 佐藤 禮子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.15-25, 2002 (Released:2017-02-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2

要 旨本研究の目的は,終末期がん患者が抱く希望,および希望が変化する状況を明らかにし,終末期がん患者が生きる力となるような希望を抱くための看護介入のあり方を検討することである.7名の終末期がん患者を対象に,希望に関する内容について,参加観察法,面接法によって調査し,質的分析を行い,以下を明らかにした.終末期がん患者は,ほぼ全経過において複数の希望を表出しており,表出された希望は時間の推移と共に希望の内容や,成り行きに関わる認知や感情,行動が変化していた.終末期がん患者の抱く希望は最終的に,「思いのままに生きる」「家族とのつながりの中で生きる」「他者とつながっている」などの12の希望にまとめられた.さらに,得られた希望に含まれる意味内容から,1)自由で自立した自己,2)家族愛,3)社会的自己,4)生きざま,5)安寧,6)回復意欲,7)元の自分,8)自己の存在,9)他力志向,10)信仰心,11)生かされる自己,の11の希望の本質が抽出された.希望の本質は,終末期がん患者にとって生きる力となる希望の源であると考える.終末期がん患者が最期まで生きる力となるような希望を抱くための看護目標とは,患者が希望の本質を保持し希望を芽生えさせることができるような環境を整えること,希望のプロセスに関わり患者の希望を支え育むような働きかけをすることである.
著者
片岡 純 カタオカ ジュン Kataoka Jun 佐藤 禮子 サトウ レイコ Sato Reiko
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-8, 2009-12
被引用文献数
1

本研究の目的は,外来治療期から寛解期において,悪性リンパ腫患者が病気を克服するための統御力を獲得するプロセスを明らかにすることである。悪性リンパ腫に対する外来治療を終えた通院患者で研究参加に同意の得られた20名を対象に,面接法と参加観察法により資料を収集し,エスノグラフィーの手法を用い分析を行った。悪性リンパ腫患者の統御力獲得は,【[血液のがんではもう駄目だ]の思いが《治せるがんなら治すしかない》思いへ転換する】,【悪性リンパ腫を治すための予定治療を何が何でも完遂させる】,【がん治療を受けながら地域での生活の正常な営みを目指す】,【つきまとう不安を押しのける】,【《人に頼ったって駄目,自分で頑張るしかない》の思いと《支えてくれる人のためにも頑張ろう》の思いが共在する】【命・健康の大切さを肝に銘じて希求する有り様で生きる】,【治療後に残るダメージを軽減して通常生活を取り戻す】,【《自分なら乗り越えられる》思いを獲得する】など9つの局面からなるプロセスであることが明らかになった。患者が悪性リンパ腫罹患を契機として統御力獲得に至るには,①病気克服の意志決定,②主体的療養態度の形成,③出来事の影響を軽減できた自己の能力に対する肯定的評価,④コントロール感覚の獲得,の4つの課題を達成する必要がある。患者の統御力獲得を促進するためには,これらの4つの課題の達成を支援する看護援助が必要である。The purpose of this study was to describe the process by which malignant lymphoma patients in an ambulatory setting acquired mastery to overcome their illness. Twenty outpatients, who finished the treatment for malignant lymphoma in an ambulatory setting, participated in this study. Data were collected by a semi-structured interview and the participant observation, and analyzed using ethnography. Mastery was acquired through nine aspects. The nine aspects were: [Deciding to cure the malignant lymphoma by their own power, if it can be cured], [Completing the schedule of treatment for curing a malignant lymphoma by any means], [Aiming at living a normal life in the community, while undergoing cancer treatment], [Pushing aside the anxiety of hanging around me], [Living by how to desire, as remembering the importance of health and life], [Recovering a normal life by reducing damage after the treatment], [Permitting the anxiety of recurrence and ambiguity], [Acquiring the confidence of "I can overcome difficulties with my own power in the future"], e.t.c. In ordered for malignant lymphoma patients to acquire mastery, it is indispensable to satisfy four tasks. Four tasks are, (1) decision making to overcome the illness, (2) making a positive attitude, (3) fostering the self-efficacy as a result of coping with a problem, and (4) gaining a sense of control. Therefore it is important to provide nursing interventions that assist malignant lymphoma patients to satisfy these tasks on their own.
著者
高見沢 恵美子 佐藤 禮子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.41-48, 1995
被引用文献数
1

人工肛門造設患者の主観的評価に基づいたQualityof Life (QOL) を適切に測定するために, 人工肛門造設患者の日常生活行動, 人工肛門造設術の手術観, および積極的生活姿勢の尺度を開発した。<BR>第1次研究として, 人工肛門造設患者の主観を反映した尺度を作成するため, QOLに関する質問紙の内容を把握する質的研究を行い, 第2次研究として, QOLに関する質問紙の信頼性と構成概念妥当性を検討する量的研究を行った。第1次研究の結果から, 米国で開発されたQuality of Life Indexでは測定できないと考えられた2項目を加えて作成した人工肛門造設患者の日常生活行動は, 米国の報告とは因子構造が異なっていた。日本人の生活観を基盤にした研究が必要であることが示唆された。因子分析によって項目を精選した人工肛門造設患者の日常生活行動, 人工肛門造設術の手術観, および積極的生活姿勢は, 日本人患者に適用できる測定用具であると考えられた。
著者
佐藤 真由美 佐藤 禮子
出版者
亀田医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

【目的】婦人科がん患者が,治療後リンパ浮腫予防のためのセルフ・マネジメント(S・M)を促す教育的介入プログラムを開発,評価.【方法】封筒法で無作為比較試験を実施.6ヵ月後1.浮腫状況,2.健康問題対処,3.自己効力感,4.S・M行動を検討.【結果】5施設109名に実施.介入群38名(回収率68%),対症群33名(回収率62%).1.浮腫状況:リンパ浮腫診断者は,対象群が介入群より有意に多かった.2.健康問題対処:対象群が介入群より有意に低かった.3.自己効力感:有意差は無かった.3.S・M行動:対象群が介入群より有意に低かった.【考察】リンパ浮腫予防のS・M効果を顕著に示していた.
著者
秋元 典子 佐藤 禮子 Akimoto Noriko Sato Reiko アキモト ノリコ サトウ レイコ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.26-33, 2003-06-30
被引用文献数
2 1

本研究の目的は,広汎子宮全摘出術を経験する子宮がん患者が,がんと共に安寧に生きるための強靱さを獲得していくことを促進する看護援助を検討することである。研究対象は,癌専門病院で広汎子宮全摘出術を経験する初発の子宮がん患者19名で,対象者の術前から術後6ヶ月間にわたり面接法および参加観察法を用いたデータ収集を行い,質的帰納的分析により,対象者の安寧に生きるための取り組みの様相と,関連する看護援助を明らかにし,以下を得た。1.広汎子宮全摘出術を経験する子宮がん患者は,【元気になりたい】という願いを原動力として,安寧に生きるためには【おしっこのコツをつかむ】【余計な消耗を避ける】【求めた情報を自分流に解釈して自らを救う】【生きるために懸命に食べる】【新しい価値観を獲得する】ことに取り組み,この取り組みの過程で【つまるところは自分次第】という意識を形成し,全ての問題解決に立ち向かう強靱な特性を培う。2.強靱さ獲得の源泉は,己の再生に欠かせない【おしっこのコツをつかむ】という必然的欠乏欲求であると言える。3.広汎子宮全摘出術を経験する子宮がん患者が,がんを抱えながら安寧に生きるための強靱さを獲得していくことを促進する看護援助は,【共有】【共感】【肯定】【支持】【強化】【尊重】を援助の基幹とし,(1)面接する(2)生活環境を快適に整える(3)食事を整える(4)身体の不快感や苦痛を緩和する,である。The purpose of this study was to identify how nursing care facilitated the efforts of cervical cancer patients who wanted to get well and to cultivate hardiness after a radical hysterectomy. Subjects were 19 patients with newly diagnosed cervical cancer who faced radical hysterectomy in a hospital specializing in cancer treatment. Data were collected by interviewing the patients and through a participant observation before and for 6 months after the operation. The following results were obtained by qualitative inductive analysis to reveal how the subjects faced the challenges of getting well and to clarify how nursing care was related to this effort. 1. Cervical cancer patients who experienced radical hysterectomy were motivated by the desire to be well and challenged the tasks of learning the technique of urination, avoiding unnecessary fatigue, acquiring and understanding information and using it to help themselves, eating well to build strength, and acquiring new values. During the process of those challenges to maintain well-being, they realized that "in the end, it is up to myself and cultivated the hardiness to face all problems. 2. The source of cultivating hardiness comes from maintaining ones' natural functions, such as learning the technique of urination. 3. Nursing care for cervical cancer patients with radical hysterectomy involved: a) interviewing patients, b) making their living environment comfortable, c) preparing meals and d) decreasing physical discomfort and pain. Such care was based on "Sharing," "Sympathy," "Affirmation," "Support," "Enhancement" and "Respect."
著者
黒田 寿美恵 佐藤 禮子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.89-100, 2008-03

本研究の目的は,終末期がん患者が選択する生き方とその本質を明らかにし,生き方を選択する終末期がん患者に対する看護のあり方を検討することである。病名・病状を知っており症状コントロールの良好な終末期がん患者6名を対象に,参加観察法と面接法によりデータ収集を行い,質的帰納的に分析を行った。分析の結果,得られた終末期がん患者の選択する生き方の本質は,1)生命の維持と病状の安定を求める,2)迫りくる死に身を委ねる,3)自己を重視する,4)自らの力を信じる,5)他者を気遣う,6)心理的安寧を求める,の6つに集約された。生き方を選択する終末期がん患者への看護のあり方として,1)病状を正しく認識できるように助ける,2)死と向き合い人生を回顧する患者に寄り添う,3)生きる希望を支える,4)患者の自分らしさを尊重する,5)患者が必要とする医療を提供することが重要である。症例報告国立情報学研究所で電子化
著者
小西 美ゆき 佐藤 禮子
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

原発がん手術体験を反映させた転移性肝がん患者の周手術期看護援助を検討するために、文献調査、患者を対象とした面接調査、看護師を対象とした面接調査、米国の私立病院の肝がん患者をケアする部門の視察を行った。原発がん手術による心身の影響を考慮すること、転移がんに直面する患者の心理に配慮すること、今後も続くがん治療・療養に対する視点をもつこと、患者のもつがんとともに生きる姿勢や力を尊重することが看護援助を考えるうえで重要であることが示唆された。