著者
丸山 来輝 山﨑 宏継 佐藤 之俊 井上 準人
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.650-654, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
9

自動縫合器は組織の安全な切離,閉鎖のために多用されている.今回,肺切除断端のステープルが大動脈外膜を損傷し術後出血をきたした症例を報告する.症例は63歳,女性.転移性肺腫瘍に対して胸腔鏡下左下葉部分切除術を施行した.術後1日目にドレーンを抜去,術後2日目に退院となった.術後4日目に呼吸苦を自覚し救急搬送となり,左胸腔内出血を認め緊急手術を施行した.左胸腔内には血腫が充満し下行大動脈の外膜が頭尾側方向に欠損し血餅が付着していた.同部位からの出血と判断し修復を行った.欠損部位に接する肺にステープルの突出を認め,大動脈の拍動と呼吸性変動による摩擦で大動脈外膜損傷に至ったと考えられた.自動縫合器のステープルによる大動脈外膜損傷の術後出血報告例はなく,肺部分切除後のステープルが大血管に接する症例では,ステープルを人工被覆材や脂肪組織等でカバーリングする必要性が考えられた.
著者
近藤 泰人 玉川 達 園田 大 松井 啓夫 塩見 和 佐藤 之俊
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.12-20, 2019-01-15 (Released:2019-01-15)
参考文献数
26

抗リン脂質抗体症候群(APS)は,動静脈血栓症を伴う自己免疫疾患である.APS合併肺癌は稀で,その意義は明らかでない.【症例1】75歳女性.検診で血小板低値を認め,精査でAPSと診断された.胸部CTで右下葉に103 mm大の腫瘤影と#7リンパ節腫大を認めた.精査で扁平上皮癌(SCC)と診断され,右下葉切除術を行った.入院時に血小板低値を認めた.術前,術中に血小板輸血を行い,合併症なく退院した.【症例2】66歳男性.副甲状腺腺腫精査のMIBGシンチグラフィーで左S6に31 mm大の腫瘤影を認めた.精査でSCCと診断され,左下葉切除術を行った.入院時に血小板低値と凝固時間延長を認めた.既往歴にAPSと心房細動があり,バイアスピリンとワルファリンを内服していた.術前に同薬剤を休薬し,未分画ヘパリンを投与し,合併症なく退院した.APS合併肺癌の外科的治療には慎重な周術期管理を要すると考える.