著者
大村 智 供田 洋 乙黒 一彦 山田 陽城 宇井 英明 清原 寛章 塩見 和朗 林 正彦
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

我々は天然物由来の新規な構造の抗マラリア剤を発見するために探索研究を行った。4年間の研究期間で、天然物素材等12,832検体を北里研究所のスクリーニングセンターに提供し、in vitroでの抗マラリア活性の評価を行った。その結果、選択毒性の高い抗マラリア活性を有する天然物素材として18種を活性物質取得候補とした。微生物素材からの探索の過程で、放線菌K99-0413株、KP-4050株、K99-5147株、KP-4093株(後に、高生産株OM-0060株を選択)及び糸状菌FKI-0266株の生産する抗マラリア活性物質は各々既知抗生物質のX-206、K-41、polyketomycin、borrelidin及びleucinostatin Aであると同定された。また、抗生物質ライブラリーからは、既に当研究所で発見されたtakaokamycin (hormaomycinと同定)及びoctacyclomycinに抗マラリア活性があることが分かった。さらに、X-206、K-41及びborrelidinはin vivoで既存の抗マラリア剤(artemether, artesunate及びchloroquine)よりも優れた効果を示した。特に、K-41及びborrelidinは新規な骨格の抗マラリア剤としてのリード化合物の可能性があり、今後開発に向けて詳細を検討する必要がある。植物素材からの探索の過程では、ジンチョウゲ科植物根部に含まれる抗マラリア活性物質2種を精製し、既知のbiflavonoid誘導体のsikokianin B及びCあることを同定した。上記の化合物類の抗マラリア活性は新知見である。また、新たにな素材としての海洋生物素材、天然物由来の活性物質誘導体については、現在抗マラリア活性の評価中である。他の選択菌株及び和漢生薬からの抗マラリア活性物質についても現在検討中である。
著者
近藤 泰人 玉川 達 園田 大 松井 啓夫 塩見 和 佐藤 之俊
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.12-20, 2019-01-15 (Released:2019-01-15)
参考文献数
26

抗リン脂質抗体症候群(APS)は,動静脈血栓症を伴う自己免疫疾患である.APS合併肺癌は稀で,その意義は明らかでない.【症例1】75歳女性.検診で血小板低値を認め,精査でAPSと診断された.胸部CTで右下葉に103 mm大の腫瘤影と#7リンパ節腫大を認めた.精査で扁平上皮癌(SCC)と診断され,右下葉切除術を行った.入院時に血小板低値を認めた.術前,術中に血小板輸血を行い,合併症なく退院した.【症例2】66歳男性.副甲状腺腺腫精査のMIBGシンチグラフィーで左S6に31 mm大の腫瘤影を認めた.精査でSCCと診断され,左下葉切除術を行った.入院時に血小板低値と凝固時間延長を認めた.既往歴にAPSと心房細動があり,バイアスピリンとワルファリンを内服していた.術前に同薬剤を休薬し,未分画ヘパリンを投与し,合併症なく退院した.APS合併肺癌の外科的治療には慎重な周術期管理を要すると考える.
著者
塩見 和朗 高橋 洋子 増間 碌郎 花木 秀明 岩月 正人
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

アルベカシンは代表的な薬剤耐性菌であるMRSAの治療薬の1つである。そのアルベカシンに耐性なMRSAの出現は大きな問題である。この耐性菌はアルベカシンをリン酸化やアセチル化する二機能酵素という修飾酵素を持つため、耐性になっている。本研究ではMRSAのアルベカシン耐性を克服するアラノロシンや新規物質ビバーラクトンを見いだし、それらが二機能酵素を阻害することを明らかにした。これらの物質をアルベカシンと併用することで耐性MRSAの生育を阻止できる。