著者
谷津 實 佐藤 光寛 小林 仁 大澤 健司 居在家 義昭
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第105回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.226, 2012 (Released:2012-09-04)

【目的】蔵王キツネ村で飼育しているキツネには個体管理をするために、2011年から約200頭の全頭にマイクロチップを装着している。このキツネ群を安定的に維持するには、個体情報や血縁情報に基づく計画的な交配が必要である。我々は、これまでに電気伝導度の変化を指標とした雌キツネの交配適期の判定法(第104回日本繁殖生物学会)や電気刺激射精器を用いた雄キツネからの採精条件(第18回日本野生動物医学会大会)について明らかにしてきた。今回は、この方法を用いて採精した後の精液性状と凍結保存法、凍結精液を用いた人工受精後の分娩率について検討した。【方法】2012年1月~3月にかけて電気刺激射精器を用いて、延べ18頭から採精した。この内、生存精子が得られた延べ13頭について、EDTAをベースとした凍結保存試作液(EDTA-S)とウシ用凍結保存液(Cow-S)を用いて、精子数5×107/0.5mlストローに調整し、凍結保存した。Cow-Sで凍結融解した精液を10頭に人工授精、その後の分娩率について調べた。【結果及び考察】延べ13頭の精液量は100μl~500μlで、その平均は280.0±117.9μlであった。平均精子数7.8±1.8×108/ml, 総精子数は平均2.1±0.7×108であった。精子生存指数は43.8~95.8、平均83.6±16.6であった。凍結融解後の精子生存指数はEDTA-Sで2.1±2.5、Cow-Sで41.9±9.3であり、Cow-Sで有意(P
著者
谷津 實 佐藤 光寛 一條 俊浩 佐藤 洋 佐藤 繁
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.581-585, 2018-10-20 (Released:2018-11-20)
参考文献数
21

展示飼育されている臨床的に健康な雌雄成熟アカキツネの非発情期におけるバイタルサインと,臨床検査値の基準範囲を調べた.採血は,無麻酔下で外側伏在静脈より行った.すべての項目で,雌雄差は認められなかった.犬の基準範囲に比べ,体温は高値,赤血球数と好酸球数,血清グルコース(Glu),アルブミン(Alb)及び尿素窒素濃度(UN)は高値,逆に血清ブチリルコリンエステラーゼ活性は低値を示した.これら所見は夏毛から冬毛への換毛期の影響(体温上昇),小球性赤血球(赤血球恒数MCVとMCHの低値を伴う赤血球数の高値),肉食中心の食餌(Glu,Alb及びUN濃度の高値)によると推測された.以上のアカキツネの基準範囲は,獣医療や研究現場において健康状態の把握,疾患の類症鑑別や治療あるいは予防に利用できると考えられた.