著者
佐藤 幸人
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 = Quarterly journal of Institute of Developing Economies Japan External Trade Organization (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.2-29, 2017-12

1990 年代以降,台湾の電子部品部門の成長は著しく,台湾電子産業において4 分の3 を占めるに至っている。このような電子産業の電子部品部門への傾斜という構造変化をもたらした要因には,電子製品部門の中国等へのシフトと,半導体のファウンドリ部門のような一部の電子部品のグローバルな発展という2 つのダイナミズムがあることが,先行研究によって明らかになっている。本稿ではレンズ・メーカーの大立光電と,液晶パネル駆動IC を開発する半導体ファブレスの聯詠科技のケーススタディをおこない,後者のダイナミズム,すなわち電子部品のグローバルな発展がどのような企業活動から生み出されたのかについて,より深く検討を加えた。その結果として,両社はともに内外の市場に早い段階からアプローチしていること,台湾企業とのリンケージへの依存からグローバルな発展への移行がみられること,移行は自主的な技術の形成に支えられていたことを示した。
著者
松森 昭 佐藤 幸人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

サイトカインは、ウイルス性心筋炎における病因において重要であり、その抑制性サイトカインを発現させる事で有用な治療効果が得られるのではないかと考え、In vivo電気穿孔法により、IL-1ra、vIL-10、可溶性c-kitの遺伝子をマウス心筋炎モデルに導入した。IL-1ra、v IL-10導入の結果については、HUMAN GENE THERAPY 12:1289-1297に報告しているが、生存率、組織、サイトカイン等すべてにおいて、治療効果を認める結果を得た。さらに、サイトカイン遺伝子導入による血中レベルを長期に持続するため、サイトカインと免疫グロブリンのFc部分を隔合した蛋白を発現するプラスミドの作製を試みた。vIL-10+免疫グロブリンにFc隔合遺伝子導入により、血中vIL-10濃度は隔合しない場合に比べ100倍上昇し、ウイルス性心筋炎の治療効果がみられた。また、同じくマウス心筋炎モデルにおいて、可溶性c-kitプラスミドを導入することにより治療効果を見た。可溶性c-kitを発現させる事により、幹細胞因子(肥満細胞増殖因子)の活性を阻害し、肥満細胞の増殖、活性化を抑制することが狙いである。まず4週齢のDBA/2雄マウスで心筋炎モデルを作製し、ウイルス投与と同時に、マウス両前頚骨筋に、可溶性c-kitプラスミド100μg、対照群としてベクタープラスミド100μgを筋肉内に注射し、In vivo電気穿孔法にて遺伝子発現を増幅させた。その結果、7日目までの生存率は、可溶性c-kitプラスミド注射群で明らかに良好であった(可溶性c-kitプラスミドVSベクタープラスミド:100%VS50% P<0.05)。また、7日目の心臓組織の評価では、心筋炎の病勢を反映する炎症細胞浸潤、心筋壊死領域は、明らかに可溶性c-kitプラスミド投与群で軽度であった(炎症細胞浸スコア0.90±0.46VS1.37±0.65 p<0.05、心筋壊死スコア0.85±0.22VS1.61±0.23 p<0.05)。以上の結果より、マウスウイルス性心筋炎モデルにおいて、In vivo電気穿孔法による可溶性c-kitプラスミドの導入は有効な治療法であり、新しい遺伝子治療として非常に有用であると考えられた。