著者
鈴木 孝 中島 明彦 上杉 利明 浅見 令美 佐藤 正則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.応用, pp.2268-2269, 1989-10-16

平成4年1~2月期にH-Iロケットで打ち上げ予定の地球資源衛星1号(ERS-1:Earth Resources Satellite-1)はディジタル型の高精度三軸姿勢軌道制御方式を適用した地球観測衛星である。図-1にその外観を示す。本衛星のサブシステムの一つである姿勢軌道制御系(AOCS:Attitude and Orbit Control Subsystem2)は、ディジタル計算機を内臓した姿勢軌道制御電子回路を中心に構成されている。ディジタル計算機はビットスライス型LSI(AMD2901)を用いたマイクロプログラム方式16ビット計算機であり、ハードウェアとファームウェア共に宇宙環境下での放射線による障害の対策を施したカスタムメイドの衛星搭載計算機である。図-2にその外観を示す。諸元は、0.1MIPS、固定小数点演算、命令数74、ROM16KW、RAM2KWである。搭載計算機に格納されるソフトウェアは、計算機インタフェースを介して、センサデータを入力し、AOCSの制御アルゴリズムの計算、フェールセーフアルゴリズムの計算等を行い、再び計算機インタフェースを介して、アクチエータデータ及びコンポーネントオンオフデータを出力する。図-3にその機能ブロック図を示す。軌道上での搭載ソフトウェアのバグが衛星の運用に非常に大きな影響を与えることは明らかであり、このためにもいかに搭載ソフトウェアを設計製造段階で検証し、その品質を保証するかが大きな課題となっている。
著者
三代 純平 佐藤 正則
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.169-189, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)

本稿は,日本語教育振興協会が1997年に開催した第1回日本語教育セミナー,通称「箱根会議」に関するインタビュー調査である。当時箱根会議に参加した11名の調査協力者の語りから,日本語学校にとって「箱根会議」がいかなる意味をもっていたのかを論じる。調査協力者に対するライフストーリー・インタビューから明らかになった箱根会議の意義は「日本語学校の連携」が生まれ,日本語学校の「社会的アイデンティティの確立」を共に目指すことが確認されたことである。そして,そのために手を取り合い「日本語教育の質の向上」に努めていく素地が整ったことである。箱根会議は,日振協と日本語学校の「管理する側・管理される側」という関係を乗り越え,管理される側であった日本語学校が主体的に自分たちを定位し,社会に働きかけるための象徴的な出来事であった。箱根会議の経験を一つの契機に,日本語学校は,国際交流の最前線を担う教育機関としての社会的アイデンティティを構築すべく歩みを進めるようになったのである。
著者
佐藤 正則 三代 純平
出版者
日本言語政策学会
雑誌
言語政策 (ISSN:18800866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19_1-19_16, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
22

本研究は、日本に永住帰国したサハリン残留日本人2世Sさんのライフストーリーを複言語・複文化における仲介(mediation)という観点から考察することによって、Sさんの言語経験の意味を明らかにし、複言語・複文化における仲介の意義を論じる。A市に永住帰国した第2世代の一人であるSさんにライフストーリー・インタビューを行い、いかに言葉を学び使用しているかという観点で分析した。その結果、Sさんの仲介活動は「サハリンの人々と日本社会をつなげる役割」「日本語話者とロシア語話者をつなげる役割」「日本社会にサハリン残留日本人の経験と記憶を伝える役割」という役割を担っていることが分かった。また仲介はSさんのアイデンティティの更新につながったこと、それは言語や文化の境界にいるからこそ可能になることも明らかになった。以上の結果から、多文化共生社会における複言語・複文化話者の仲介活動の場作りの必要性を論じた。
著者
寅丸 真澄 江森 悦子 佐藤 正則 重信 三和子 松本 明香 家根橋 伸子
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.240-248, 2018-12-31 (Released:2019-05-12)

本稿では,言語文化教育研究学会第 4回年次大会(2018年 3月)において筆者らが企画したパネル「留学生のキャリア意識とキャリア支援の『ずれ』を考える ―日本語学校・短大・大学(首都圏・地方)の留学生の語りから」における発表とディスカッションの内容を踏まえ,言語教育者の視点から,日本語学校,短期大学,四年制大学(首都圏・地方)における留学生のキャリア意識と現行のキャリア支援の「ずれ」のありようを報告し,その問題点を指摘する。まず,留学生の語りの事例から,各機関の留学生がどのようにキャリアを捉え行動しているのかを紹介し,言語教育の観点から留学生に必要とされるキャリア支援と実際に提供されているものとの「ずれ」を報告する。次に,「ずれ」の改善のため,言語教育者は留学生と教育機関の双方にどのように関わり,働きかけていけばよいのか,パネルで議論した内容を共有する。最後に,これらを踏まえ,「ずれ」を改善するための今後の課題を指摘する。