著者
佐藤 武志 眞河 一裕 小田 知矢
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.27, pp.184, 2011

【はじめに】<BR>岡崎市民病院では2004年より理学療法士が糖尿病の運動療法に関わっている。2011年6月現在、2名の理学療法士が糖尿病療養指導士の資格を取得し、1名の受験希望者がいる。糖尿病の治療に運動療法は重要であるが、理学療法士が糖尿病の運動療法に積極的にかかわっている施設は少ない。そこで今回、これまでの運動療法への取り組みの内容を振り返り、糖尿病療養指導士養成に向けての取り組みについて報告する。<BR>【背景】<BR>理学療法士は糖尿病の運動療法に関して、多彩な症例に即応できる専門性を発揮することができる職種である。しかし、理学療法士が積極的に糖尿病の運動療法に関わるためには1)業務量のバランス、保険点数、糖尿病治療の利益の確保などの病院の経営面に対する課題、2)同僚や上司に対する職場での理解、病院内の他職種に対するアピールなど、理解者を得るための課題、3)糖尿病患者への効果的な指導や知識の向上などの個々のスキルアップに対する課題、4)モチベーションに対する問題など乗り越えなければならない様々な課題がある。<BR>【経過】<BR>当院では2004年に内分泌・糖尿病内科から糖尿病教育入院参加の依頼があり、8職種(医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、社会福祉士、歯科衛生士)による糖尿病療養支援組織が設立された。糖尿病療養支援委員会の組織の一員として職場内での理解、院内での理解を深めながら運動指導業務に関わっていった。1)2004年には教育入院患者に対する糖尿病教室への参画と個別運動療法が開始された。2)2005年からは外来患者向けの勉強会である「糖尿病を学ぶつどい」へ参画した。3)2007年には生活習慣記録機(ライフコーダ)を使用しての運動指導を開始した。4)2008年には2名の理学療法士が糖尿病療養指導士の資格を取得した。また外来糖尿病指導室の開設に伴い、外来患者に対する運動指導を開始した。5)2009年には世界糖尿病デーの企画として自転車エルゴメーターの体験やベンチプレスの体験を行った。6)2010年には個別運動療法患者に対して高負荷なレジスタンストレーニングであるベンチプレスを用いた運動療法、屋外歩行を開始した。<BR>【現状】<BR>現在当院リハビリテーション室では糖尿病療養指導士の資格を取得した理学療法士2名と、受験希望者1名で糖尿病運動指導を行っている。数多くの糖尿病運動療法に対する取り組みが行えたのは、自職のみではなく、糖尿病療養支援委員会という院内の組織の一員として活動したことで、職場内の理解を深めるとともに、病院内における活動を通じてさらに認知されたことがあるのではないかと考える。2011年内分泌・糖尿病内科により「糖尿病療養指導士資格取得への手引き」と「糖尿病療養指導士養成プログラム」が作成され、配布された。これには糖尿病療養指導士資格取得希望者が経験を積みやすいような具体的な到達目標が掲げられ、他部局での療養指導も十分に経験できるような内容が盛り込まれている。「糖尿病療養指導士養成プログラム」が構築されたことでより実践に近い糖尿病療養指導の方法を希望者は学ぶことができる。<BR>【今後に向けて】<BR>糖尿病患者はますます増加し、糖尿病運動療法の重要性は高まると考えられる。その一方で業務量の増大も見込まれる。理学療法の業務は多岐にわたり各分野を経験することは重要で、他の疾患とのバランスも考慮する必要がある。多忙な環境の中で業務を行うには情熱も必要であるが、そのモチベーションを維持していくにはやはりマンパワーも必要である。その為にも運動指導の達成感や充実感を後進に伝え、糖尿病の運動指導が行える理学療法士を養成していきたいと考えている。