著者
佐藤 真樹 小山 一直 鈴木 康吏
出版者
一般社団法人 火力原子力発電技術協会
雑誌
火力原子力発電大会論文集 (ISSN:2187929X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-5, 2017 (Released:2017-06-12)
参考文献数
4

東北電力(株)新仙台火力発電所は,経年化が進んだ既設1・2号機を廃止し,新たに3号系列として高効率コンバインドサイクル発電設備へリプレースを行った。本工事では,当社がこれまで培ってきた技術を活かした更なる高効率化を図り,熱効率60.9%(LHV基準)を達成した。また,東日本大震災における被災経験を踏まえて自然災害に強い発電所づくりを進めた。
著者
内田 直希 東 龍介 石上 朗 岡田 知己 高木 涼太 豊国 源知 海野 徳仁 太田 雄策 佐藤 真樹子 鈴木 秀市 高橋 秀暢 立岩 和也 趙 大鵬 中山 貴史 長谷川 昭 日野 亮太 平原 聡 松澤 暢 吉田 圭佑
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込み帯研究のフロンティアである前弧の海域下において,防災科学技術研究所は新たに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築した.S-netは東北日本の太平洋側の海岸から約200kmの範囲を海溝直交方向に約30km,海溝平行方向に50-60km間隔でカバーする150点の海底観測点からなり,その速度と加速度の連続データが,2018年10月より2016年8月に遡って公開された.観測空白域に設置されたこの観測網は,沈み込み帯の構造およびダイナミクスの解明に風穴をあける可能性がある.本発表ではこの新しいデータを用いた最初の研究を紹介する.まず,海底の速度計・加速度計の3軸の方向を,加速度計による重力加速度および遠地地震波形の振動軌跡を用いて推定した.その結果,2つの地震に伴って1°以上のケーブル軸周りの回転が推定されたが,それ以外には大きな時間変化は見られないことがわかった.また,センサーの方位は,5-10°の精度で推定できた.さらに得られた軸方向を用い,東西・南北・上下方向の波形を作成した(高木・他,本大会).海底観測に基づく震源決定で重要となる浅部の堆積層についての研究では,PS変換波を用いた推定により,ほとんどの観測点で,350-400mの厚さに相当する1.3 – 1.4 秒のPS-P 時間が観測された.ただし,千島-日本海溝の会合部海側と根室沖の海溝陸側では,さらに堆積層が厚い可能性がある(東・他,本大会).また,雑微動を用いた相関解析でも10秒以下の周期で1.5 km/s と0.3 km/sの2つの群速度で伝播するレイリー波が見られ,それぞれ堆積層と海水層にエネルギーを持つモードと推定された(高木・他,本大会).さらに,近地地震波形の読み取りによっても,堆積層およびプレート構造の影響を明らかにすることができた.1次元および3次元速度構造から期待される走時との比較により,それぞれ陸域の地震の海溝海側での観測で3秒程度(岡田・他,本大会),海域の地震で場所により2秒程度(豊国・他,本大会)の走時残差が見られた.これらは,震源決定や地震波トモグラフィーの際の観測点補正などとして用いることができる(岡田・他,本大会; 豊国・他,本大会).もう少し深い上盤の速度構造もS-netのデータにより明らかとなった.遠地地震の表面波の到達時間の差を用いた位相速度推定では,20-50sの周期について3.6-3.9km/sの位相速度を得ることができた.これはRayleigh波の位相速度として妥当な値である.また,得られた位相速度の空間分布は,宮城県・福島県沖の領域で周りに比べて高速度を示した(石上・高木,本大会).この高速度は,S-netを用いた近地地震の地震波トモグラフィーからも推定されている.また,このトモグラフィーでは,S-netの利用により海溝に近い場所までの速度構造がよく求まることが示された(豊国・他,本大会).雑微動解析によっても,周期30秒程度の長周期まで観測点間を伝播するレイリー波およびラブ波を抽出することができた.これらも地殻構造の推定に用いることができる(高木・他,本大会).また,海域の前弧上盤の構造についてはS-net 観測点を用いたS波スプリッティング解析によって速度異方性の特徴が明らかになった.プレート境界地震を用いた解析から,速いS波の振動方向は,海溝と平行な方向を向く傾向があり,マントルウエッジの鉱物の選択配向や上盤地殻のクラックの向きを表している可能性がある(内田・他,本大会).プレート境界においては,繰り返し地震がS-net速度波形によっても抽出できることが示された.プレート境界でのスロースリップの検出やプレート境界の位置推定に役立つ可能性がある(内田・他,本大会).さらに,S-net加速度計のデータの中には,潮汐と思われる変動が観測されるものもあり,プレート境界におけるスロースリップによる傾斜変動を捉えられる可能性があるかもしれない(高木・他,本大会).以上のように,東北日本の前弧海洋底における連続観測について,そのデータの特性が明らかになるとともに,浅部から深部にわたる沈み込み帯の構造や変動についての新たな知見が得られつつある.これらの研究は技術的にも内容的にもお互いに密接に関わっており,総合的な解析の推進がさらなるデータ活用につながると考えられる. 謝辞:S-netの構築・データ蓄積および公開に携わられた皆様に感謝いたします.
著者
佐藤 真樹 小林 寛和 金村 朋直 岡戸 敦男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1001, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】肩・肘関節などの投球障害に対する理学療法においては,投球動作の特徴と関係する機能的要因を確認し,対応することが重要となる。投球障害発生に関係する投球動作の問題として,早期コッキング期から加速期における肘下がりや肩関節水平外転位でのボールリリースが代表的である。しかし,投球動作は前の位相における動的アライメントの特徴が後の位相に影響を与えるため,問題が生じる位相のみでなく,原因となる位相への対応が求められる。後の位相につながる動作の問題として,ワインドアップ期における骨盤後傾の増大が挙げられる。理学療法を行う上では後の位相への影響を予測し,必要に応じて改善を図る。本研究では,ワインドアップ期の動的アライメントの問題とされる骨盤後傾に着目し,機能的要因との関係について確認を試みた。【方法】対象は,高校在学中に野球部に在籍した健常男子大学生20名とした。対象に約3 mの距離に設置したネットへ5球の全力投球を行わせた。その際の投球動作を三次元動作解析機器VICON Nexus-1.3.106(VICON社製)を用いて撮影・解析し,ワインドアップ期の骨盤傾斜角度を算出した。あわせて,歩行解析用フォースプレートZebris FMDsystem(Zebris Medical GmbH社製)を用いて足圧中心軌跡面積を測定した。5球の試技のうち,非投球側下肢の離地から最大挙上までの足圧中心軌跡面積が最小の試技を代表値として採用した。機能的要因として次の項目を測定した。1,股関節可動域:屈曲,伸展,内転,外転,内旋,外旋の各関節可動域を測定した。測定は,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会の関節可動域測定法に準じた方法で実施した。2,下肢筋力:股関節屈曲・伸展・外転・内転,膝関節屈曲・伸展の各筋力を測定した。股関節筋力は,徒手筋力検査法に準じた肢位での等尺性筋力をアイソフォースGT-300(オージー技研社製)を用いて測定した。膝関節筋力は,Bte(Primus RS社製)を用いて60deg/secでの等速性筋力を測定した。3,体幹抗軸圧筋力:両足部接地・右足部接地の2条件で,片側の肩甲帯に軸圧負荷を加えた際に体幹正中位を保持しうる左右それぞれの等尺性筋力を測定した。測定には,アイソフォースGT-300を使用した。4,体幹筋筋厚:超音波診断装置Xario SSA-660A(東芝メディカルシステムズ社製)を用いて,安静時・収縮時における左右の腹横筋・多裂筋の筋厚を測定した。また,変化率:(収縮時-安静時)/安静時の筋厚×100も算出した。統計学的解析は,Pearsonの相関係数またはSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は日本福祉大学倫理審査委員会の規定に基づき,対象に本研究の主旨を説明し,内容を十分に理解したうえで書面にて同意を得て実施した。【結果】骨盤後傾角度は10.9±8.6°(平均±標準偏差)であった。骨盤後傾角度と機能的要因との関係については,体幹抗軸圧筋力においては,両条件で左右ともに有意な負の相関がみられた(両足部接地左軸圧負荷:r=-0.58,両足部接地右軸圧負荷:r=-0.57,右足部接地左軸圧負荷:r=-0.68,右足部接地右軸圧負荷:r=-0.58)。深部筋筋厚においては,非投球側腹横筋変化率で有意な負の相関がみられた(r=-0.53)。その他の要因に関して相関はみられなかった。【考察】体幹抗軸圧筋力と骨盤後傾角度との間に,有意な負の相関がみられた。Hodges(2008),金岡ら(2009)は脊柱運動時のトルクを発生させる表在筋と,腰椎・骨盤の制御を担う深部筋は,いずれも腰椎骨盤安定性に関与するとしている。体幹抗軸圧筋力は,片側肩への長軸方向の負荷に抗して体幹正中位を保持しうる筋力として,体幹の表在筋と深部筋の機能を示す指標と考える。したがって,骨盤固定筋としての体幹表在筋・深部筋の機能低下は,ワインドアップ期の骨盤後傾増大につながると考えられる。さらに,非投球側腹横筋の変化率と骨盤後傾角度との間に負の相関がみられたことから,骨盤後傾の代償を伴わずに股関節屈曲を行うには非投球側腹横筋の収縮が重要である可能性が確認された。ワインドアップ期における骨盤後傾について,股関節可動域や下肢筋力との関係も指摘されているが,今回の結果では相関がみられなかった。今後,ワインドアップ期の骨盤後傾が他の位相における動的アライメントに与える影響について検討を加えていきたい。【理学療法学研究としての意義】投球動作のワインドアップ期の骨盤後傾に関係する機能的要因のひとつとして,体幹筋機能の関係が確認できた。投球障害の理学療法を行う上で,ワインドアップ期に骨盤後傾を呈する対象には,体幹筋機能の改善も重要であるといえる。