著者
吉田 圭佑 小川 剛史
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.189-196, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
36

In this paper, we propose a novel method to virtually simulate the sensation of spiciness by applying thermal grill illusion to the human tongue. We describe our tongue stimulator equipped with interlaced warm and cool bars. To evaluate the effectiveness of this method, the system was experimentally tested in two studies. The first experimental results show that spicy taste was perceived by causing thermal grill illusion on the tongue. The second experimental results show that the strength of spicy perception is affected by both of average temperature and difference in temperature between warm and cool stimuli.
著者
池田 里奈 吉田 圭佑 髙橋 諒 松澤 暢 長谷川 昭
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地震の応力降下量は,地球内部の応力サイクルの理解の上で重要なパラメータである.小中地震の応力降下量は,従来,Brune (1970), Sato & Hirasawa (1973), Madariaga (1976)などの震源過程モデルの当てはめにより推定されてきたが,近年では,観測ネットワークの発達により小中地震の破壊伝播過程そのものについての推定もある程度可能になってきている.本研究では,2011年3月11日から2018年10月31日までに福島-茨城県境周辺で発生した小中地震 (Mw 3.3-5.2)の破壊伝播指向性を調べ,さらにそれを考慮して応力降下量の推定を行った. 初めに,経験的グリーン関数法を用いて,対象地震 (348個)の観測波形を近傍で発生したひとまわり小さな地震の波形でdeconvolutionすることにより,各観測点での見かけの震源時間関数を求めた.その結果,本研究で解析対象にした小中地震の多くに,見かけの震源時間関数の継続時間や振幅に明瞭な方向依存性が確認できることがわかった. 次に,楕円形断層の非対称破壊を含む一般化した震源過程モデル (Dong & Papageorgiou, 2003)を用いて,見かけの震源時間関数のコーナー周波数とその方向依存性から断層サイズと応力降下量,破壊の進展方向を推定した.楕円形断層の非対称破壊を導入することにより,従来の円形断層の対称破壊モデルよりも理論コーナー周波数の残差を大幅に減少させることができた.解析を行った348個の地震のうち,306個の地震が有意な破壊伝播指向性を持つことが分かった.破壊の進展方向には偏りがあり,本研究で解析した地震には,破壊が南東方向へ進展したものが多いことが分かった. 推定した断層サイズから求めた応力降下量は,対称破壊モデルを仮定して求めたものより系統的に大きな値を示した.このことは,円形断層の対称破壊伝播を仮定した場合には,同じ継続時間でも破壊域が大きくなり,断層サイズが過大評価されると考えられることから理解できる.推定した応力降下量の平均値は20.2 MPaであり,先行研究によりこの地域で推定されている最大剪断応力の大きさと同程度であった.このことは,個々の小地震が,断層面上の剪断応力の殆どを解消していることを意味するのかもしれない.
著者
岩田 貴樹 吉田 圭佑 深畑 幸俊
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.5, pp.797-811, 2019-10-25 (Released:2019-11-15)
参考文献数
49
被引用文献数
10

In order to understand crustal dynamics, including the occurrence of earthquakes and the development of mountain ranges, it is important to estimate the stress state in the Earth's crust from observed data. This paper reviews stress tensor inversion techniques using seismological data. The techniques were originally applied to a dataset of slip orientations taken from focal mechanisms. Subsequently, other techniques, which use P wave first-motion polarities or centroid moment tensor (CMT) solutions, were developed. This paper clarifies the principles and basic hypotheses, on which each technique is built. In the techniques using focal mechanisms and P wave first-motion data, the Wallace–Bott hypothesis that a fault slips in the direction of maximum resolved shear stress plays the principal role; basically, we search for a stress state that satisfies observed data on the basis of the Wallace–Bott hypothesis. On the other hand, the stress inversion technique using CMT data is not based on the Wallace–Bott hypothesis; instead, it is assumed that stress released by earthquakes is proportional to the stress tensor in the region surrounding the hypocenter. The characteristics and advantages of these techniques are also compared from physical and pragmatic viewpoints. It would be valuable to further improve these techniques, as well as to compare their performance using synthetic and actual data to clarify the differences and advantages of their characteristics in more detail.
著者
内田 直希 東 龍介 石上 朗 岡田 知己 高木 涼太 豊国 源知 海野 徳仁 太田 雄策 佐藤 真樹子 鈴木 秀市 高橋 秀暢 立岩 和也 趙 大鵬 中山 貴史 長谷川 昭 日野 亮太 平原 聡 松澤 暢 吉田 圭佑
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込み帯研究のフロンティアである前弧の海域下において,防災科学技術研究所は新たに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築した.S-netは東北日本の太平洋側の海岸から約200kmの範囲を海溝直交方向に約30km,海溝平行方向に50-60km間隔でカバーする150点の海底観測点からなり,その速度と加速度の連続データが,2018年10月より2016年8月に遡って公開された.観測空白域に設置されたこの観測網は,沈み込み帯の構造およびダイナミクスの解明に風穴をあける可能性がある.本発表ではこの新しいデータを用いた最初の研究を紹介する.まず,海底の速度計・加速度計の3軸の方向を,加速度計による重力加速度および遠地地震波形の振動軌跡を用いて推定した.その結果,2つの地震に伴って1°以上のケーブル軸周りの回転が推定されたが,それ以外には大きな時間変化は見られないことがわかった.また,センサーの方位は,5-10°の精度で推定できた.さらに得られた軸方向を用い,東西・南北・上下方向の波形を作成した(高木・他,本大会).海底観測に基づく震源決定で重要となる浅部の堆積層についての研究では,PS変換波を用いた推定により,ほとんどの観測点で,350-400mの厚さに相当する1.3 – 1.4 秒のPS-P 時間が観測された.ただし,千島-日本海溝の会合部海側と根室沖の海溝陸側では,さらに堆積層が厚い可能性がある(東・他,本大会).また,雑微動を用いた相関解析でも10秒以下の周期で1.5 km/s と0.3 km/sの2つの群速度で伝播するレイリー波が見られ,それぞれ堆積層と海水層にエネルギーを持つモードと推定された(高木・他,本大会).さらに,近地地震波形の読み取りによっても,堆積層およびプレート構造の影響を明らかにすることができた.1次元および3次元速度構造から期待される走時との比較により,それぞれ陸域の地震の海溝海側での観測で3秒程度(岡田・他,本大会),海域の地震で場所により2秒程度(豊国・他,本大会)の走時残差が見られた.これらは,震源決定や地震波トモグラフィーの際の観測点補正などとして用いることができる(岡田・他,本大会; 豊国・他,本大会).もう少し深い上盤の速度構造もS-netのデータにより明らかとなった.遠地地震の表面波の到達時間の差を用いた位相速度推定では,20-50sの周期について3.6-3.9km/sの位相速度を得ることができた.これはRayleigh波の位相速度として妥当な値である.また,得られた位相速度の空間分布は,宮城県・福島県沖の領域で周りに比べて高速度を示した(石上・高木,本大会).この高速度は,S-netを用いた近地地震の地震波トモグラフィーからも推定されている.また,このトモグラフィーでは,S-netの利用により海溝に近い場所までの速度構造がよく求まることが示された(豊国・他,本大会).雑微動解析によっても,周期30秒程度の長周期まで観測点間を伝播するレイリー波およびラブ波を抽出することができた.これらも地殻構造の推定に用いることができる(高木・他,本大会).また,海域の前弧上盤の構造についてはS-net 観測点を用いたS波スプリッティング解析によって速度異方性の特徴が明らかになった.プレート境界地震を用いた解析から,速いS波の振動方向は,海溝と平行な方向を向く傾向があり,マントルウエッジの鉱物の選択配向や上盤地殻のクラックの向きを表している可能性がある(内田・他,本大会).プレート境界においては,繰り返し地震がS-net速度波形によっても抽出できることが示された.プレート境界でのスロースリップの検出やプレート境界の位置推定に役立つ可能性がある(内田・他,本大会).さらに,S-net加速度計のデータの中には,潮汐と思われる変動が観測されるものもあり,プレート境界におけるスロースリップによる傾斜変動を捉えられる可能性があるかもしれない(高木・他,本大会).以上のように,東北日本の前弧海洋底における連続観測について,そのデータの特性が明らかになるとともに,浅部から深部にわたる沈み込み帯の構造や変動についての新たな知見が得られつつある.これらの研究は技術的にも内容的にもお互いに密接に関わっており,総合的な解析の推進がさらなるデータ活用につながると考えられる. 謝辞:S-netの構築・データ蓄積および公開に携わられた皆様に感謝いたします.
著者
伊藤 綾香 五十嵐 大貴 吉田 圭佑
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0908, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】Schinzel-Giedion症候群(以下,SGS)は,1978年にShinzelとGiedionが報告した先天性疾患で,顔面中央部低形成,重度精神遅滞,痙攣,心・腎奇形,内反足等の骨格異常を特徴とし,国内外で数十例の報告しかない予後不良な稀少疾患である。2歳前後の死亡例や呼吸不全が死因となるという報告がある。責任遺伝子としてSETBP1の同定等,近年報告は増えているが,リハビリテーションに関する報告はない。今回,SGSに対し,1歳11ヶ月から3歳にかけて訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)介入を行ったため経過を考察し報告する。【方法】対象は,SGSの女児。在胎37週,帝王切開で出生。出生時体重3106g。APS3-7。両側腎盂拡張,脳室拡大,特異顔貌,第5指・第4・5趾重複趾や内反足を認め,遺伝学的検査でSETBP1が同定されSGSと診断。2ヶ月時,全身性強直発作が群発,6ヶ月時にWest症候群と診断,ACTH-Z療法で発作は軽減。副作用として低カリウム血症,高血圧,脳萎縮を認め,低カリウム血症,高血圧は投薬で対応,脳萎縮は改善しなかった。ADLは全介助レベルで表情は乏しい。経鼻栄養だったが,2歳5ヶ月時に胃瘻造設。サービス利用はなく,週1回の訪問リハのみ利用。介入時,心拍数70-160bpm,SpO280-99%と変動あり,夜間酸素投与していた。呼吸数15~16回/分,時折咳嗽,舌根沈下があり,シーソー呼吸様で痰貯留による喘鳴あり。肺炎での入院が1回/1~2ヶ月で,母は夜間不眠があった。発作による四肢のぴくつきや,非対称な反り返りが多い。体幹低緊張で未定頸なため座位保持困難。左背面皮膚短縮,胸郭の非対称性,可動域低下著明で下肢は蛙状肢位。日常姿勢は背臥位又は側臥位のみ。口腔内唾液貯留が多い。易感染性のため外出は病院受診のみであった。医療的ケアは母のみ実施で,外出も制限されていた。【結果】易感染性により呼吸器感染リスクが高く訪問リハ適応となった。肺炎再発防止,母の負担軽減を目標に,上気道通過障害の改善,胸郭呼吸運動の発達促進を目的とした運動療法と腹臥位ポジショニング指導を行い,排痰を促した。呼吸状態が不安定な時は主治医へ報告した。介助座位で喘鳴軽減したため座位保持装置を作製,抗重力姿勢増加により体力向上を図った。日中覚醒時間,夜間睡眠量が増え,2歳5ヶ月頃より入院頻度が1回/3~4ヶ月に軽減した。2歳9ヶ月時に夜間CO2平均50.8mmHgのため,夜間時のみ非侵襲的換気療法を開始した。夜間時SpO2値の変動や痰量は減少し,換気量は0.08L→0.13Lに上昇。移動用バギー貸出で外出頻度が増加した。また,入浴時負担軽減のため,入浴用椅子を作製。しかし,痙攣発作や痰貯留は継続しており,母の不安は残存し夜間不眠が継続している。【結論】呼吸障害に対し呼吸理学療法,ポジショニング指導を実施し,生活の質向上のため補装具作製を行い,生活リズムや外出頻度が変化した。SGSに対し呼吸理学療法は必要であり,補装具利用による日常生活管理の重要性が示唆された。さらにDrへの適宜報告と連携が必要であると考える。