著者
何 燕生
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.81-108, 2020 (Released:2020-12-30)

「人間仏教」は太虚によって提唱された中国仏教復興のための指導理念であり、二〇世紀以来、中国本土はもちろん、海外の中国人社会における仏教の共通の思想である。本稿は、太虚およびその弟子の印順の主張を通して、「人間仏教」の思想とは何かについて、具体的に確認するとともに、「人間仏教」という理念の下に行われている台湾の仏光山や慈済会および東南アジアの中国人社会における実践活動を取り上げて考察することを目的とする。「人間仏教」の主張は仏教思想の近代的再解釈であり、その理念のもとに行われている活動は、いわゆる「社会参加仏教」に近い要素をもっている。しかし、「近代仏教」およびEngaged Buddhismなどの分析枠で捉えるには限界がある。本稿はそれらについて問題を提起し、中国語圏における歴史的社会的政治的文脈を重視する視点が必要であることを指摘した。
著者
何 燕生 末木 文美士 佐藤 弘夫 池上 良正
出版者
郡山女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

栄西や道元、円爾などの入宋僧の精神世界について、実地調査に基づきながら、文献学および宗教学の視点から再検討し、中世宗教研究の新たな展開を図かろうとした。具体的には、まず入宋僧たちが当時訪れたとされている現在中国の杭州や寧波、天台山、普陀山などの地域の寺院におけるそれぞれの足跡を実際に調査し、経済成長と宗教復興が進む近年において、それらの遺跡が一体どのような現状におかれているかを確認した。次はそれらに対する分析を踏まえつつ、歴史的、宗教的コンテキストに即して総合的な理解を試みようとした。さらには、仏教学や日本思想史などの諸分野による関連研究とも連携し、可能な限り学際的に検討することを目指した。
著者
何 燕生
出版者
郡山女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

京都学派を中心とするこれまでの哲学的研究の成果に注意を払いながら、『正法眼蔵』思想の宗教学的研究の可能性とその意義を明らかにしようとした。具体的には、応募者のこれまでの研究成果、特に中国語の翻訳を通じて得た成果を踏まえつつ、『正法眼蔵』の成立と中国語(漢文)との関係について再検討すると共に、難解な書物とされてきた『正法眼蔵』の言葉の性格を考察した。また、『正法眼蔵』諸巻の相互間における思想的連関やテキスト全体の思想的整合性の解明を試みた。これらの作業を通じて、宗教学的な観点に基づく『正法眼蔵』思想の体系的な理解を図ると共に、仏教思想史、日本宗教史上における位置づけの解明を目標としている。