著者
保木邦仁
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2012-AL-139, no.5, pp.1, 2012-03-07

将棋は西洋のチェスと同じルーツを持つゲームと考えられている。そのため、将棋とチェスのルールには類似点が多い。その一方で、持ち駒ルールのように異なった性質もある。このようなルール上の違いは、人工知能及びアルゴリズム設計の難易度に大きな影響を与えた。実際、IBM ディープ・ブルーが 1997 年にチェスの世界チャンピオンを破った時でも、当時のコンピュータ将棋の棋力は通常のアマチュアプレイヤー以下であった。コンピュータ将棋が人間トップに迫るほどの棋力を獲得したのはごく最近である。2010 年はあから 2010 が清水市代女流王将に勝利し、2011 年には Ponanza が著名なインターネット対局場 (将棋倶楽部 24) の短時間対局で最高レーティングを獲得、また 2012 年にはボンクラーズが米長邦雄永世棋聖に勝利した。本公演では、最近のコンピュータ将棋の動向に加えて、強いプログラムの一つである Bonanza の思考の仕組みを紹介する。高精度評価関数の最適化や、力ずく探索の枝刈り手法について、将棋とチェスの違いを示す。
著者
小幡 拓弥 杉山 卓弥 保木 邦仁 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2009論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, no.12, pp.51-58, 2009-11-06

本稿では、将棋プログラムの新たな並列処理手法である”合議アルゴリズム”を提案し、その効果について検証した様々な実験を報告する。合議アルゴリズムは複数の思考プログラムの意見を集めて指し手を決定する手法で、疎結合マルチプロセッサにおける動作によく向いている。筆者らは合議アルゴリズムを用いて強豪プログラム同士を連結し、より強いプログラムを作ることに成功した。また、単一の思考プログラムから簡易な方法で複数のプレイヤを作り合議させる手法を提案し、その有効性を示した。
著者
杉山 卓弥 小幡 拓弥 斎藤 博昭 保木 邦仁 伊藤 毅志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.2048-2054, 2010-11-15
被引用文献数
1

コンピュータ将棋において,複数のプレイヤの意見から1つの指し手を選択する合議アルゴリズムが注目されている.多数決による合議では,単純な手法であるにもかかわらず,単体のプレイヤに比べてパフォーマンスが向上することが報告されている.本研究では,各プレイヤの指し手に加えて,局面の優劣評価の値も利用する新しい合議法について報告する.正規乱数を用いて局面評価値を修正し生成された複数プレイヤから,最大の評価値を付けたプレイヤを選択する楽観的合議法を提案し,その有効性と仕組みについて議論する.The consultation algorithm, which selects a move based on decisions made by multiple players, recently attracted considerable attention in the computer Shogi community. It was reported that the consultation algorithm based on majority voting improved the strength of a computer Shogi program despite the simplicity of the algorithm. In this paper, we present a new consultation approach which utilizes not only the actual moves provided by the players but also the evaluation values of the moves. The proposed approach, optimistic consultation, selects a player that scores the highest evaluation value among the multiple players. Here, the multiple players are prepared by adding normal random noise to the original evaluation function. The performance and the mechanism of the algorithm are analyzed.
著者
保木 邦仁
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

研究代表者がこれまでに研究してきた分子ダイナミクス制御・レーザー制御理論に基づいた, ナノマシンの理論設計・実験結果の解析・機能分子の運動の観測手段の提案を目指して研究を進めた. 特に, 分子モーターの人工合成に必要と思われる基礎理論の構築を目指した研究を行った. また, 第一原理分子動力学法によりモーター分子の運動を評価して回転運動の伝達や散逸の機構を明らかにした.