著者
加藤 剛平 倉地 洋輔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11734, (Released:2020-08-04)
参考文献数
45

【目的】本邦における健常な地域在住前期高齢者に対する運動プログラムによる転倒予防の費用対効果を明らかにした。【方法】公的医療・介護の立場から分析した。質調整生存年数(Quality Adjusted Life Years:以下,QALY)を効果,医療費と介護費を費用に設定した。マルコフモデルを構築して,65 歳の女性と男性の各1,000 名を対象に当該プログラムを実施した条件における10 年後の増分費用対効果比(Incremental Cost-Eff ective Ratio:以下,ICER)を シミュレーション分析した。費用対効果が良好とするICER の閾値は5,000,000 円/QALY 未満とした。【結果】女性,男性集団のICER は順に1,550,900 円/QALY,2,277,086 円/QALY であった。【結論】本邦において,当該プログラムの費用対効果は良好である可能性が高いことが示唆された。
著者
倉地 洋輔 枡本 愛 井出 善広 本宮 幸治 政信 博之 大下 ゆり 猪本 祐里 岡本 健 川口 浩太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C1034, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】変形性膝関節症(以下,膝OA)において肥満は症状を進行させる重要な因子である。しかし,減量による膝関節への機械的圧迫の軽減が,疼痛の軽減に効果があるか探った研究は少ない。そこで今回,減量の程度と痛みの改善度が相関するという仮説のもと,一般的治療に平行して減量を目的とした運動療法(以下,Ex.)を行ない,減量と痛みとの関連について検討した。【対象と方法】対象は,2003年1月初めから9月末までの間に膝OAの診断で治療を受け,従来の治療に加え減量を目的としたEx.が2ヶ月間継続できたもの20名(女性17名・男性3名、年齢58.3±10.4歳,身長155.8±6.8cm,体重67.8±8.1kg,OAG-I:15人,OAG-II:3人,OAG-III:2人,BMI肥満度標準:4人,肥満1度:10人,肥満2度:6人)とした。初診時に身長・体重・体脂肪測定およびCOMBI社製エアロバイク75XLを用いた運動負荷試験を行ない,運動処方を作成した。運動負荷強度は40~60%最大酸素摂取量および自覚的運動強度の「ややきつい」レベルの有酸素運動(自転車駆動)とし,運動頻度は週3回,1回につき15~40分間行った。Ex.と平行して物理療法およびROM ex.は全例に行い,ヒアルロン酸ナトリウム関節内注射も1回/週で平均5回施行した。また,消炎鎮痛薬(内服薬)も処方され,栄養士による栄養相談も行なった。痛みの評価として,初診時の主観的な痛みを「10」,全くなしを「0」とし,Ex.開始後2カ月の時点で痛みがどの程度になったか確認した。統計学的検定にはスピアマンの順位相関係数を用い,有意水準は5%とした。【結果】全症例において痛みが軽減し,半減したものは20名のうち17名であった。体重変化率でみると,体重が減少した18名の減少率は-0.1%~-13.5%であり,体重が増加した1名の増加率は2.7%であった。体脂肪率変化率では,体脂肪率が減少した15名の減少率は-1.4%~-22.3%であった。増加した5名では1.2%~12%であった。体重変化率と痛みの改善度の間に相関関係は認められず(ρ=0.33),体脂肪率変化率と痛みの改善度との間にも相関関係は認められなかった(ρ=0.18)。【考察】膝OAによる痛みの原因は種々のものが考えられ。今回,膝関節にかかる機械的な刺激としての重量を減らすことが痛みの軽減につながるという仮説を立てたが,体重減少の割合と痛みの変化とは一致しなかった。今回の調査では,それぞれの介入による疼痛軽減効果を検討することはできないが,SLRなどによる筋運動が膝の痛みを軽減するとの報告もあり,今回,自転車をこぐという膝関節の屈曲・伸展交互運動が膝OAによる痛みの軽減に関与した可能性もある。今後は,各介入方法間の痛みの改善度についても検討を加えていきたい。