- 著者
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倉本 義夫
- 出版者
- 物性研究刊行会
- 雑誌
- 物性研究 (ISSN:05252997)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, no.5, pp.727-755, 2007-02-20
単独の電子は,質量・電荷・スピンで特徴付けられ,その性質は定量的によくわかっている。しかし,このような電子が多数集まると,非常に豊かで思いがけない性質を示す。固体中に凝縮した電子が示す超伝導,強磁性,分数量子ホール効果などはその例である。単独の電子の固有状態は,自由空間では平面波であるが,多数の電子の固有状態は必ずしも平面波ではない。すなわち斥力相互作用が強いと,平面波状態は不安定になり,多数の電子は自発的に局在する。この状態は,電子の結晶とみなせる。それでは逆に,平面波状態(フェルミ液体状態)は電子間の相互作用があっても生き残れるか,と問うこともできる。実はこの答えは単純ではない。その際,系の次元性が本質的に重要になる。この講義では,量子多体系としての電子系が示す興味ある性質を理解するために,単純な例から出発して重要な基本概念を説明する。特に,近藤効果,朝永・ラッティンジャー流体,モット絶縁体,動的有効場などを直感的に理解できるようにしたい。また,できるだけ最近の実験結果を含む新しい例題を選んで,量子多体系に関する最先端研究の現状がわかるようにしたい。