著者
倉田 のり 野々村 賢一
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究ではまず、穀類共通のセントロメア配列として知られていたシークエンスをもとに、イネセントロメア局在復配列RCE1516をクローニングした。イネゲノムのファージライブラリーを作り、この配列を複数コピー持つゲノムクローンを選抜し、14kbにわたってその構造解析を行い、1.9kbを単位とする反復配列が存在することを見出した。これらの反復配列がすべての染色体のセントロメア部に存在することをin situ hybridizationで確かめた。さらに、もう一つのセントロメア反復配列RCS2を用いて第5染色体セントロメア領域に位置するYACクローンを選抜した。第5染色体のセントロメア領域に、14のYACクローンを整列化した4つのYACコンティグを形成し、この領域の構造解析を行った。この結果、この領域は1)それぞれがおよそ1Mbの長さを持つ3つのコンティグ(Contig I,II,III)と、1つのYACより成ること。2)セントロメア特異的高頻度反復配列RCS2はBamH1切断した13Kbと15Kbのフラグメントのみにあり、相互にかなり近い距離に存在していること。3)ほとんどのYACがRCE1のコピーを複数個保持しており、RCS2を2ブロックとも持つYACクローンを中心に、左右ほぼ均等にRCE1が分布している可能性が示唆されること。4)この領域には9個以上の遺伝子が存在すると考えられること。が明らかになった。次に、これらの中からセントロメアクローン候補を選び、イネ人工染色体の構築に取りかかった。まずイネ用染色体アームを構築するため、GFP遺伝子、イネテロメア等を挿入し、左右のアームベクターを作成した。これらのアームを用いてイネ人工染色体を構築するため、酵母細胞内での相同組換えを用いたセントロメアYACクローンへのアームの導入を、引き続き進行中である。
著者
常松 浩史 吉村 淳 春島 嘉章 長村 吉晃 倉田 のり 矢野 昌裕 佐々木 卓治 岩田 伸夫
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.279-284, 1996-09-01
被引用文献数
15

RI系統群は遺伝的に固定しているので分離することなくその増殖と配布が可能である.さらに,そのRI系統群を用いて連鎖解析を行えば,現在それぞれ独立している地図情報を統合することや新しく単離された分子マー力-の連鎖地図上での位置を容易に推定することができる.そこで,本研究ではイネにおけるRI系統群の作出とそれを用いたRFLP骨格地図の作成を行った. 日本型品種「あそみのり」とインド型品種「IR24」のF_2個体から単粒系統法を用いて自殖を重ね,F_6世代で165系統からなるRI系統群を作出した.この中の71系統をF_6とF_7でRFLPマッピングに供試した.マッピングにはSaito et al(1991)およびKurata et al(1994)によるRFLPクローンを用いた.連鎖分析の結果,構築されたRFLP連鎖地図は375個のマーカーからなり,その全地図距離は1275cMであった(Fig.1).また,染色体ユ,3,6,11,12においてはマーカーの分離のひずみが観察され(Fig.1),そのすべてにおいて日本型親の「あそみのり」の遺伝子頻度が減少していた.F_6におけるヘテロ接合体領域の割合はO%から19.3%で,その平均は3.6%であった.また,F_7におけるヘテロ接合体領域の割合はO%から5.5%で,その平均は1.9%であった(Fig2).