著者
児玉 竜一
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

映画領域の研究者を主とする国際研究集会において、歌舞伎大道具と映画美術の関わりを発表した。また、映画研究の叢書から、歌舞伎を中心とする古典芸能に特化した書籍を刊行するなど、映画研究において歌舞伎を視野におさめることの重要性を訴えるという点で、一定の成果を収めた。蓄積した基礎的なデータは、劇場から映画館への変遷研究や、歌舞伎由来の映画作品研究に関して、こののち論文化に活用してゆく予定である。
著者
児玉 竜一
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、現存する近世期の歌舞伎台帳の性格を大きく二分する、貸本屋系統の台帳と、劇壇内部の上演の台帳との比較をおこなうための基礎的な研究をめざした。前者の代表としては、名古屋の大手貸本屋・大野屋惣八(大惣)に代表される貸本屋の歌舞伎台帳が挙げられ、従来の歌舞伎台帳研究を代表する『歌舞伎台帳集成』にも多く翻刻の底本として取り上げられてきた。しかし、そこでは台帳の性格については、おおむねが「貸本用の筆写」とされることが多く、詳細に言及されることはなかった。本研究では、台帳の筆跡を通して旧蔵者に注目することで、劇壇内部に所蔵された上演用の歌舞伎台帳が、貸本屋へと流れていった可能性を、複数の事例から示すことを得た。さらに歌舞伎台帳の性格を論じる基礎データとして、従来の歌舞伎台帳翻刻叢書の総覧を作成した。なかでも「七五三」と署名のある台帳群については、京都大学所蔵本の詳細な書誌事項と筆跡の追求から、旧蔵者の特定への可能性を示唆しうるが、完全に特定するためには基礎データの収集に留まった。さらに「七五三」署名台帳の旧蔵者を特定する資料をも見いだしており、これらを総合することにより、現存する歌舞伎台帳の性格について、大きな認識の変化をもたらすことができる見通しである。本研究の成果としては、上記の過程で、上演年代に関する記載のない台帳について、同系統と思われる台帳群との比較を通して、その成立年代をおおまかながら類推することができたことを副次的成果と考える。この過程で、歌舞伎・人形浄瑠璃の代表的作品である「仮名手本忠臣蔵」の現存最古と目される台帳を発掘することを得た。