- 著者
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中川 晋一
八尾 武憲
- 雑誌
- 情報処理
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.7, pp.633-640, 2009-07-15
私(中川)が2008年の10月13日に心筋梗塞を発症して4月で6カ月が経過した.幸運にも心臓カテーテルで処置のできる医療機関がいくつもある東京都の市部で,休日の午後8時前後という最も人的リソースのある時間帯で発症したため,難を逃れることができた.錆びついてはいるが10年ほど前まで,医師として救命救急の最前線での業務をこなしていたこともあり,知識のまったくない一般人ではなかったこともリテラシーとして役立った.しかし,意識下で情報通信の研究者として経験したことは,インターネットを用いた遠隔医療に関する技術開発1),2)を行ってきた者として,最近若干感じていたネットワーク技術や今回のライフログなどの関連技術が,いかに「研究者寄り」のものであり,急激に発症した一患者の生命を救うためには無力なものであるかを実感させた.今回のライフログ特集に寄せて,患者経験のある医師免許を持つ情報処理研究者として感じた経験を述べ,ライフログの実用化について検討したい.