著者
大原 達美 名和 肇 益子 研士 村越 昭男 宮本 潤一 北村 昌之 沼部 博直
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-107, 2000-06-01
参考文献数
6
被引用文献数
3

<p> 郵政省・マルチメディア・パイロットタウン構想のマルチメディア・モデル医療展開事業システムとして高精細画像の転送を中心とした実験・研究システムを平成10年より開発している.このシステムでは,遠隔医療を主たるフィールドとしていることから,本学4キャンパスに既設された学内LANを利用する共に,インターネットを通じての教育を行うWEBシステムも合わせて開発されている.</p><p> この学内LANにおけるセキュリティは,ファイアーウォールにて行っていたものの,遠隔医療実験・研究システムの導入に際して画像データはもとより,診断レポートや患者情報などの医療情報を扱うことから,セキュリティの大幅な強化に取り組んだ.</p><p> 当初本システムのセキュリティ対策としては,指紋認証システム,暗号化装置を実装していたが今回,サーバー・クライアント間で交わされるデータそのものに暗号化通信を構築してセキュリティを強化した.</p>
著者
花田 英輔 工藤 孝人 高杉 紳一郎 加納 隆
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.239-247, 2006-03-03
参考文献数
21
被引用文献数
1

携帯電話は高い普及率を示しているが,一方で一律に電源断を求めている医療機関もまだ多い.患者や訪問者は医用電子機器,特に人工心臓ペースメーカに対する影響に関する情報が広く知られていることからそれに従っているが,中長期にわたって入院する患者にとっては通信手段の途絶を意味することから患者の心理面での負担になっている場合も見受けられる.<br/> 本稿では,患者サービスの面から要望が強いが,これまでその安全性に関する情報不足から医療機関における使用の是非の判断が行われてこなかった携帯電話について,具体的な解禁例およびこれまでに得られた知見から,安全な導入に向けた注意点と手法を示す.
著者
飯嶋 久志 宇野 弘展 大石 憲司 木村 浩二 西橋 由紀子 寺内 信夫 西岡 直人 田畑 義弘 吉川 清史 黒川 慎吾 石野 良和
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.31-37, 2008-08-17
参考文献数
8

医薬分業とITの進展に伴い,薬局で扱う情報は年々大きくなっており,その効率化にはITの活用が有用な手段といえる.また,国民のIT推進状況も考慮すると,患者への医薬品情報提供にはITの活用が望まれる.そこで,携帯電話のWeb機能を利用した医薬品情報提供と収集を試みた.<br/> システムはクライアントアプリケーションとWebアプリケーションで構成し,サーバとの通信にはSSLを用いた暗号化通信とした.情報提供はE-mailによる能動的情報提供,サーバへアクセスする受動的情報提供とし,さらに患者から服薬状況をサーバへ報告するシステムを構築した.また,本システムをモニター調査等で評価した.<br/> 本システムへのアクセス数は「服用履歴」,「次回服用内容」,「登録情報」などが多かったが,患者からの報告は調査が進むにつれ減少した.また,薬剤師は調剤完了メール,服用履歴などに対する利便性を高く評価した.一方,本システムはレセプトコンピュータよりデータ抽出することから,データ入力の負荷なくデータ収集が可能であった.<br/> 本システムは服用履歴によるコンプライアンスの確認が期待されるが,継続した服用状況の確認には困難が生じた.今後はこれら問題点を改善し,患者利便性と薬物療法の質向上に寄与する必要があろう.
著者
堤 幹宏 黒田 尚宏 山下 和夫 大家 英治 中新 茂 堀 有行
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.11-14, 2004-04-01
参考文献数
3
被引用文献数
2

<p> 金沢医科大学病院では,2000年から電子カルテシステムを用いて診療を行ってきており,この3年間で15万人のすべての医療情報がデジタル化され,蓄積された.そこで,これらの患者の医療情報を地域の各医療機関に還元するためのネットワークシステム(KORMIN: Kanazawa Medical University Oriented Regional Medical Information Network System)を独自に開発した.KORMINの構築に際しては,セキュリティとプライバシーに重点をおいたが,その特徴は,患者の基本情報を置換したことと医療情報の公開期限を制限したことにある.基幹病院で得られた豊富な医療情報を地域医療機関に積極的に提供することが地域医療の質の向上に繋がると考えられるが,そのためにもKORMINはきわめて有用であると考えられた.</p>
著者
川上 洋一 松村 泰志 笹井 浩介 安永 晋 稲田 紘 木内 貴弘 黒田 知宏 坂本 憲広 竹村 匡正 田中 博 玉川 裕夫 仲野 俊成 朴 勤植 平松 治彦 宮本 正喜
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.421-429, 2006-06-20
参考文献数
8
被引用文献数
3

近年,セマンティックウェブ技術を医療支援に応用するための技術が注目されている.本研究では,過去の画像診断レポートから抽出された症例データをエレメント化し,RDF(Resource Description Framework)で関連づけた症例データベースから支援情報を提供することができるシステムの実現可能性を見極めることを目的とした.<br/> 兵庫医科大学病院のMRIにおける脳血管障害のレポートを利用し,部位や基本所見,診断といったデータエレメントを抽出し,それぞれのデータエレメントを関連付けて症例データベースを構築した.その症例データベースから読影するレポートに応じた支援情報を適切に提供できるかについて過去のレポートから推定した結果,作成できるレポートの範囲およびレスポンスについて概ね満足できる見込みを得た.また構造化したデータモデルが胸部CRにも応用できることを大阪大学医学部附属病院のレポートから推定した.
著者
安田 晃 柳樂 真佐実 孫 暁光 津本 周作 山本 和子
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.287-294, 2000-10-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

<p> 近年,医学教育の中でテュートリアルの重要性が認識され,医療情報学実習の中でも小グループによる自己開発,問題解決型の教育が行われている.しかし,その教育の効果や学生の学習態度などの評価は定量的に取り扱うことが難しく,担当者の主観が伴う傾向がある.この論文では,学生の学習態度に関する数量化を行い,知見を得た.</p><p> 島根医科大学医療情報学講座では1998年度,2年生を対象とした1グループ6~7人の小グループ学習を医療情報学実習で行い,19項目の質問からなるテュートリアル評価シートを実習終了後自記させた.数量化にはパス解析と潜在構造分析を行った.パス解析では,内生変数として大分類の「想起抽出」と外生変数として「重要なテーマ」,「知識の整理」に,また内生変数の「取捨選択」と外生変数の「共通な学習項目」などに比較的高いパス係数が見られた.潜在構造分析では,実習期間の初日,中間,最終日を対象に解析した結果,最終日の潜在構造は,初日,中間と異なり,学生の実習に対する興味や習熟度が向上している様子が定量的にわかった.</p>
著者
中沢 一雄 原口 亮 八尾 武憲 永田 啓 杉本 喜久 芦原 貴司 高田 雅弘 並川 寛和 岡田 靖士 吉本 幸平 古屋 直美 仙田 修司 植松 義之 五十嵐 健夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.81-86, 2005-11-10
参考文献数
16
被引用文献数
3

カルテの電子化を目的に,我々は紙カルテの柔軟性を自然な形で実現するペン入力インタフェースを開発した.このペン入力インタフェースには,入力支援だけでなく,入力したデータをレヴューするための効果的機能が備わっている.しかしながら,ペン入力による手書き文字のままでは2次利用が困難という問題がある.この論文においては,手書き文字に対する高度な枠なし認識機能および検索機能を備えることで,ペン入力インタフェースにおける入力データの2次利用の可能性を示す.枠なし手書き文字に対する認識機能によって,入力の都度,必要に応じて手書き文字からテキストデータに容易に変換することができる.さらに,一連の入力の後,2次利用可能なテキストデータに一括変換することも可能である.加えて,手書き文字の検索機能を使えば,特別なデータベース構造を作らなくても,手書き文字全体の中から目当ての文字列を検索することが可能である.
著者
西堀 眞弘 渡邊 憲 宮崎 安洋 田中 直文 荒川 真一 千葉 由美 二宮 彩子 大橋 久美子 田中 博 上村 健二 宮田 公佳 中口 俊哉 津村 徳道 三宅 洋一 滝脇 弘嗣 鬼頭 伸一郎 洪 博哲 橋本 憲幸
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.161-166, 2005-12-20
参考文献数
5
被引用文献数
2

マルチスペクトルイメージングは医用画像の色再現の問題を解決できるだけでなく,さまざまな方面への応用により医療に飛躍的な進歩をもたらす画期的な技術である.しかし,あまりに多様な可能性が存在するため,個々の応用形態の実現に至る道筋にはいくつもの分かれ道があり,少しでもアプローチを間違えると行き止まりになってしまう.著者らはマーケティング的な視点からこの迷路のような医療市場に一定の法則を見い出し,それを基に成功の可能性が高い2つのアプローチ法を明らかにした.すなわち各ピクセルに分光反射率を記録できる分光画像技術と,見え方が実物にきわめて近い実物色画像である.前者は人間の視覚能力を超えた形態学的診断につながる技術であり,後者はデジタル画像に基づく形態学的診断の精度向上につながる技術である.なお,前者は多くの開発資源を必要とし,ごく限られた症例において,きわめて画期的な医学的効果を発揮する一方,後者の医学的効果は一定の範囲に留まるものの,必要となる開発資源が比較的少なく,かつ広範な臨床現場において膨大な利用機会が見込まれる.
著者
田中 直哉 田中 秀和 佐藤 均
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.107-116, 2005-11-10
参考文献数
9

医薬分業の流れに伴って院外処方せん発行率は年々増加し,調剤薬局数も増加傾向を示している.備蓄医薬品数は後発品の処方増加などに伴い上昇の一途をたどっており,調剤薬局における医薬品数の減少,デッドストックの削減が重大な課題となっている.現時点では調剤薬局の増加にもかかわらず,店舗間の受け渡しを支援するためのシステムは普及していない.調剤薬局がすべての医薬品を備蓄することは不可能であり,既存の在庫システムに比べ,コストパフォーマンス・共有性に優れ,多店舗展開する調剤薬局における必要最低限の機能を有した実用的なシステムが望まれている.そこで我々は今回,レセコンから出力できる情報をもとに,調剤薬局として望まれる全店舗の医薬品リストの参照,デッドストックを検索し店舗間の医薬品移動を最適化することのできる実用的なシステム(店舗間在庫管理支援システム)の構築を試みた.本システムを活用することによって,迅速かつ効率的な医薬品の供給が可能となり,薬剤師がより患者に貢献することが期待できる.
著者
堅田 千種 今井 みはる 野崎 一徳 川本 昌幸 前田 芳信 島 優子 大星 直樹 玉川 裕夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.231-238, 2006-03-03

管楽器奏者に口唇外傷予防を目的としたミュージックスプリントを装着すると,音色も変化することが知られており,我々の臨床でもしばしば経験しているが,音色変化を定量的に解析,評価した研究は少ない.そこで,プロのトランペット奏者の協力を得て,スプリント装着時と非装着時の音色を,音響解析による物理的比較,自然音の一対比較法による聴覚比較,そしてデジタルフィルタリング法を用いた合成音比較の3方法で比較した.<br/> 物理的比較では,long-tone録音後に高速フーリエ変換を行い,スプリント装着時に高周波倍音成分の音圧が高くなっていることが示せた.聴覚比較では,音楽経験にかかわらずスプリント装着時の音をより好む被検者が多いことを明らかにできた.そして,低周波数部分を共通にし倍音成分のみを入れ替えた合成波形比較では,基音に対して13次から20次の倍音が,音色の好みに影響を与えていることを示せた.
著者
高橋 由光 宮木 幸一 新保 卓郎 中山 健夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.83-89, 2007-05-30
被引用文献数
2

[背景]アスベスト問題に関する新聞報道を定量的に分析するため,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行い有用性を検討した.<br/> [方法]アスベストまたは石綿を含む 1945 ~ 2005 年朝日新聞見出しを対象とし,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行った.<br/> [結果]1987 年頃と 2005 年に多かった.1987 年は 36 記事あり,汚染(40%)が高く出現し,除去と運動(26%)や除去と学校(11%)は同時に出現する単語であった.2005 年は 293 記事あり,人と死亡(9%),危険と人(8%)が多く同時に出現した.1987 年は厚生省や環境庁が関わる環境汚染に関する部分と,文部省が関わる学校からのアスベスト除去運動に関する部分があるのに対し,2005 年は人々の死亡が中心となり厚労省が関わり補償など対応策がとられた.<br/> [結論]ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングは情報を定量的に把握し,視覚化することを可能とした.