- 著者
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八田 一郎
高橋 浩
加藤 知
大木 和夫
松岡 審爾
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 一般研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1990
この研究は、リン脂質膜を中心として形成される分子集合体に対する詳細な構造解析を行うことによって、生体膜がとる基本構造を明らかにすることを目標に進められた。その1つとして、リン脂質で現われるリップル構造についての研究が進められた。これはリン脂質が自発的にとるメゾスコピックな構造で、リン脂質の形態形成機構を考察する上で重要な構造であると位置付けられる。ジパルミトイルホスファチジルコリン膜において、正常周期のリップル構造に対して2倍周期のリップル構造が出現することがあるが、それが準安定相の構造であることを示し、また、それが出現する条件を明らかにした。リン脂質・コレステロール系においては、変調されたリップル構造をとるが、その温度依存性をリン脂質膜の正常周期のリップル構造の温度変化と関連において理解できることを示した。不飽和炭化水素鎖をもつリン脂質とコレステロールの系において、その相図に着目して実験を行った結果、飽和炭化水素鎖の場合とよく似ており、この相図はリン脂質とコレステロールの間で普遍的に現われるものであることが判った。リン脂質・アルコール系で現われるインターディジテイテッド構造について、各種のリン脂質とアルコールの組合せに対して系統的にX線回折実験を行うことによって、膜中のアルコール分子の存在様式を明らかにした。ジラウロイルホスファチジルコリンにおいて、2つの液晶相があることを発見し、新しい相は従来報告されている液晶相の低温側にあり、より炭化水素鎖の乱れの少ない液晶相であることが判った。リン脂質とタンパク質の相互作用のモデルとして、酸性リン脂質とポリリジン重合体より成る系の構造解析を行い、それが静電相互作用によって理解できることを示した。ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンの主転移での2相共存状態の振舞から、これは単純な1次相転移における共存としては理解できなく、この系独持の逐次構造遷移機構によっていることを指摘した。その他、脂質系の表面X線回折実験、X線回折・熱量同時測定などを行った。