著者
大谷 忠 八谷 絢 Luvsansharav B.
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.90-97, 2004 (Released:2011-03-05)

本調査は、1998年から2000年にわたる3年間において、ウランバートル郊外とこれより約400km先の北部、東部などの地域における草地の生育状態と家畜の飼育状況について調査し、近年のモンゴル遊牧民の放牧方法と家畜生産を探った。その結果、社会主義体制時代までの遊牧民は放牧家畜の扱い方において、経験的調節と優れた視力などによる伝統的放牧方法で継承し、安定した家畜生産を行っていたと思われるが、市場経済体制の転換により、自由な放牧利用の過放牧が草原の牧養力を低下させ、冬季6-7ヵ月間で飼育家畜の体重が激減し、さらに旱魃、雪害が加わるとこれまでにない多くの家畜を斃死させていることが判明した。したがって今後は小麦の麦稈サイレージの調製、備蓄草地の適正利用方法とこれらの運搬に伴う道路整備、通信方法などのインフラの開発を行い、モンゴル全地域における冬季の飼料確保を検討する必要があると思われた。
著者
渡辺 也恭 八谷 絢 西脇 亜也
出版者
日本草地学会
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.611-615, 2004 (Released:2011-12-19)

放牧利用人工草地に侵入するハルガヤおよびミノボロスゲの出現と、腐植土層の厚さ、土壌硬度、傾斜角度、土壌水分含量および土壌pHとの関係を判別分析により解析した。また、その被度と土壌pH、土壌全窒素濃度(土壌N)および土壌可給態リン酸濃度(土壌P)との相関分析を行った。ハルガヤの出現は土壌水分含量および傾斜角度と正の、土壌硬度と負の関係にあった。また、その被度が高い地点ほど土壌Nと土壌Pが小さかった。一方、ミノボロスゲの出現は腐植土層の厚さと正の、土壌pHと負の関係にあった。その被度が高い地点ほど土壌pHが低かった。ハルガヤは乾燥ストレスに弱いものの急傾斜地などの低養分条件下で優占が起こりやすいと推察され、その防除には施肥により牧草の競争力を高めることが重要と考えられた。また、ミノボロスゲは富栄養条件下を好み酸性ストレス耐性を持つといえ、その防除のためには土壌酸性の矯正が有効と判断された。