著者
八木 隆徳 坂上 清一 渡辺 也恭 高橋 俊 小路 敦
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究報告 = Research bulletin of the National Agricultural Research Center for Hokkaido Region (ISSN:13478117)
巻号頁・発行日
no.199, pp.13-23, 2013-03

ススキの分布北限域に近い北海道札幌市において,夏期の刈取りがススキ型草地の種組成と地上部重の推移に及ぼす影響を10年間調査した。隔年もしくは毎年の夏期の刈取りによりクマイザサが抑圧され,ススキの優占が維持できた。出現種数(26種/30m2,5.1‐7.7種/m2)は国内他地域のススキ草地に比べ低いこと,刈取りにより光環境が改善されても種数および種多様度指数の増加はみられないことが示された。ススキのみの現存量は処理間差が小さく,120-300gDM/m2程度であった。隔年の刈取りにおいても現存量が減少する傾向にあるため,長期的に利用するためには利用強度を隔年の刈り取りよりもやや軽くする必要があるものと推察された。
著者
渡辺 也恭 西脇 亜也 菅原 和夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.135-139, 1999-07-31
被引用文献数
8

永年人工放牧草地に侵入・優占するミノボロスゲの種子発芽戦略の解明を目的として,その休眠解除条件の検討および草地に生育する他草種との休眠の深さの違いを比較した。ミノボロスゲ種子は,休眠を示し,6カ月間の長期冷湿保存以外の処理では休眠が解除されなかった。長期冷湿処理により後熟したミノボロスゲ種子の休眠解除には,光,変温およびその交互作用が影響し,特に光効果の影響が強かった。光,変温およびその交互作用の3つの影響は,ミヤマカンスゲ,ハルガヤおよびエゾノギシギシの3種でも見られた。しかし,これらの草種は,後熟のために冷湿処理を必要としないこと,変温効果の影響が強いこと,およびミヤマカンスゲを除いて,変温または光単独条件下で休眠解除される種子の多いことがミノボロスゲ種子と異なっていた。ミノポロスゲ種子の休眠解除機構は,他草種の種子と比較して厳しく,それは,草地で裸地検出機構として働き,家畜や作業機械により頻繁に裸地が出現する人工放牧草地での,ミノボロスゲの侵入・優占化の要因の1つになると推測される。
著者
渡辺 也恭 八谷 絢 西脇 亜也
出版者
日本草地学会
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.611-615, 2004 (Released:2011-12-19)

放牧利用人工草地に侵入するハルガヤおよびミノボロスゲの出現と、腐植土層の厚さ、土壌硬度、傾斜角度、土壌水分含量および土壌pHとの関係を判別分析により解析した。また、その被度と土壌pH、土壌全窒素濃度(土壌N)および土壌可給態リン酸濃度(土壌P)との相関分析を行った。ハルガヤの出現は土壌水分含量および傾斜角度と正の、土壌硬度と負の関係にあった。また、その被度が高い地点ほど土壌Nと土壌Pが小さかった。一方、ミノボロスゲの出現は腐植土層の厚さと正の、土壌pHと負の関係にあった。その被度が高い地点ほど土壌pHが低かった。ハルガヤは乾燥ストレスに弱いものの急傾斜地などの低養分条件下で優占が起こりやすいと推察され、その防除には施肥により牧草の競争力を高めることが重要と考えられた。また、ミノボロスゲは富栄養条件下を好み酸性ストレス耐性を持つといえ、その防除のためには土壌酸性の矯正が有効と判断された。