著者
Donald M. BRUNETTE 八重垣 健
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.536-543, 2011-10-30 (Released:2018-04-06)
参考文献数
3

論文を読むあるいは作成するための,論文の価値判断の指針を解説した.論文の構成要素には,まず「読者(あなた)」が最上位にあり,そしてタイトル・著者・掲載雑誌の位置づけ,要旨(抄録),はじめに,研究方法と材料,結果,考察,結論などの因子がある.そのうえで,読者側からは「読者の印象に残る重要な情報」,そして「読者が個人的に学んだ明確で重要な情報」などの因子がある.読者は,その論文に,どの程度興味を持つことができるか,そして読む価値があるかを,判断しなければならない.そこで,要旨を注意深く読み,「読者が,論文を読む目的」を見つけることが必要となる.「タイトル・著者・掲載雑誌の位置づけ」では,論文に重要な新情報が記載されている可能性や,掲載雑誌のランクなどがわかる.要旨にはいくつかの構成要素があり,要旨を読み,「問題点や新知見」を見つけて論文を続けて読む理由とする.「はじめに」では,探求的で仮説に基づいた研究か否か判定し,研究方法と材料では,読者が実験結果の有効性を確かめ,実験を再現するのに十分な情報を得ることができる.結果では結論の基礎となるデータを十分に知り,考察では「論理のある確固とした結論」にしようとの著者の意図を知ることもできる.一方,「はじめに」で記載された仮説の答えを「結論」で明確に知ることができる.
著者
八重垣 健 末高 武彦
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.377-386, 1989-07-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
23
被引用文献数
4 27

口臭予防を目的として, 洗口剤が広く用いられているが, その効果には疑しいものが多い。そこで本論文では, 塩化亜鉛の口臭抑制効果およびその作用機序を検討した。口臭は, 口腔内空気中の揮発性硫黄化合物 (VSC) の測定により行い, VSC定量は, 炎光光度検出器付きのガスクロマトグラフ, 記録計および自動試料注入装置から成る分析システムを用いて行った。洗口剤による口臭抑制効果の判定は, 洗口前のそれぞれのVSC濃度を100%として, 洗口直後, 2時間後, 3時間30分後に行った。その効果, 0.5%塩化亜鉛洗口では, 3時間30分後でH2Sが17.7%, CH3SHが12.2%, (CH3) 2Sが68.7%および硫黄当量の総計で12.5%とVSCの減少を認めた。これに対し, 市販洗口剤および水による洗口では, それぞれ洗口3時間30分後, 2時間後に抑制効果がほぽ消失し, 塩化亜鉛の強い口臭抑制効果が確認された。次にパーコール密度勾配遠心法にて, 唾液中の遊離細胞の分解におよぼす塩化亜鉛の効果を検討し, VSC産生抑制の機序をしらべた。その結果, 0.01%塩化亜鉛にて, 24時間インキュベーション唾液中での細胞分解が抑制されることが明らかとなった。また, 唾液細胞成分中のタンパク分解酵素活性も, 0.05%以上の塩化亜鉛にて完全に阻害されることが明らかとなった。そこで, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて, 24時間インキュベーション唾液におけるタンパク分解に及ぼす塩化亜鉛の影響を検討した。その結果, 唾液上清では, 分子量66.2Kおよび20.7K~14.4Kのタンパク分解が0.01%塩化亜鉛にて阻害され, 唾液沈渣においても, 66.2K, 84.4K, 27.2K, 24.6Kおよび15.3Kのタンパク分解が阻害されることが明らかとなった。以上の結果は, 洗口剤として使用される塩化亜鉛の濃度により, VSC産生の基質となるタンパク質の分解が抑制され, 口臭抑制効果が発揮されることを示唆した。
著者
田村 文誉 八重垣 健 西脇 恵子 菊谷 武
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

東京都、千葉県、山梨県、沖縄県の保護者576名を対象としたアンケートの結果、食事に関する悩みは多くの母親に共通し、悩みの傾向はこどもの成長と共に変化していき、こどもの成長に伴い母親の育児負担度は減少することが示唆された。一方、摂食指導を受けている摂食嚥下障害児の母親の場合、子供が年長になるに従い育児負担は増加した。平成24年度に行った摂食相談を希望した8名において、東京都と千葉県の計7名は摂食機能に関すること、沖縄県の1名は歯に関する相談であった。東京都の3名中1名はその後、専門医療機関へ繋がった。千葉県の3名は既に専門医療機関に受診中であった。沖縄県の1名は相談のみで問題が解決した。