著者
小野 幸絵 田中 彰 末高 武彦 澤 秀一郎
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.208-213, 2007-07-30
被引用文献数
6

2004年10月23日夕方に新潟県中越地方で最大震度7の地震が発生した.著者は,地震直後に村ぐるみで避難しその後も仮設住宅で生活しているY村住民を対象として,地震前,地震直後,仮設住宅入居以降(地震から約50日)における歯磨きの状況などについて,2005年4月にY村診療所患者のうち協力が得られた388名に調査を行った.その結果は以下のようである.1歯磨き回数は,地震前に比べて直後では減少したが,仮設住宅入居後では地震前よりわずかに増加した.また,歯磨きの仕方について地震前と入居後で比較すると,地震前と同じ者が半数以上で,雑になった者は10%あまりであった.2地震直後は,うがい液でうがいをした者あるいは口をすすいだ者が多かった.歯ブラシは80%以上が3日以内に入手した.3地震直後に必要としたものは,歯ブラシ,うがい用のコップ,うがい液の順で多かった.今回の調査参加者は一地域のみで年齢的にも偏りがあるが,被災時そして被災前後の歯磨き状況についての実態と需要を把握することができた.
著者
可児徳子 末高武彦編
出版者
医歯薬出版
巻号頁・発行日
2005

2 0 0 0 健康と社会

著者
金澤紀子 末高武彦編著
出版者
医歯薬出版
巻号頁・発行日
2004
著者
小松崎 明 末高 武彦
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.834-841, 2001
参考文献数
19
被引用文献数
6

健常歯列者およびブリッジ装着前後の第一大臼歯1歯喪失患者を対象として,複数の咬合平衡に関する評価法について比較検討し,次の結果を得た。1.健常歯列者を対象とする評価から,透過レーザー法による歯冠相当部体積の重心偏値率の平均値が8.1%だったのに対し,感圧紙法のWタイプの咬合力重心価値率では20%を超えて有意(p<0.01)に大きく,咬合力の重心の価値量は大きく表示される。また,前・後基準点との距離関係から重心位置の比較を実施したところ,透過レーザー法は感圧紙法Wタイプに比較して重心-後基準点間距離が有意(p<0.01)に長く,重心がより前方に位置していることがわかった。2.ブリッジ装着患者を対象とする評価から,透過レーザー法によるブリッジ装着前の価値率の平均値は44.3%だったが,装着後には同8.1%と有意(p<0.01)に減少し,ブリッジ装着による咬合平衡状況の回復が観察できた。ブリッジ装着後の摂取障害食品の有無と,装着後の価値率の大小とを比較した結果,摂取障害食品の有無と,健常歯列群の偏値率を超える者,以下の者の割合について関連が認められた(p<0.05)。以上のようなことから,口腔の恒常性維持の観点から,透過レーザー法による歯冠相当部体積の重心を用いた咬合平衡状況から,咀嚼機能の適正な評価がなされる可能性が示唆された。
著者
小島 登喜子 末高 武彦
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.663-674, 1997-10-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

歯科衛生士の職業寿命や需要供給量について明らかにするため,17都府県に在住する歯科衛生士1,712人を対象として「歯科衛生士の業務従事状況調査」を実施した。回答者は749人であり,歯科衛生士免許取得後の既婚率は6〜10年目で57%, 16〜20年目で88%である。歯科衛生士業務への従事率は,未婚者では1〜5年目で94%, 6〜10年目で88%,11〜15年目で82%, 16〜20年目で77%であり,既婚者ではそれぞれ61, 50, 48, 55%である。このうち,フルタイム従事者は,未婚者では1〜5年目で98%で,その後徐々に低下し16〜20年目で87%となり,既婚者では1〜5年目で92%で,その後次第に低下し16〜20年目で68%となる。日本人女性の将来生命表に基づく死亡率と上記の既婚率,業務従事率,フルタイム従事率をもとに,歯科衛生士免許取得者1万人の免許取得後40年目までの業務従事率を推計すると,フルタイム従事率は10年目で58〜66%,20年目で37〜44%, 40年目で35〜42%となる。また,パートタイム従事者も加えた総従事率は10年目で64〜71%,20年目で54〜60%,40年目で52〜58%となる。歯科衛生士養成数が現在の入学定員で今後も推移すると仮定したとき, 2020年における業務従事歯科衛生士推計数は,フルタイム従事者が約126,000〜145,000人となり,パートタイム従事者も加えると約160,000〜177,000人となる。
著者
八重垣 健 末高 武彦
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.377-386, 1989-07-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
23
被引用文献数
4 27

口臭予防を目的として, 洗口剤が広く用いられているが, その効果には疑しいものが多い。そこで本論文では, 塩化亜鉛の口臭抑制効果およびその作用機序を検討した。口臭は, 口腔内空気中の揮発性硫黄化合物 (VSC) の測定により行い, VSC定量は, 炎光光度検出器付きのガスクロマトグラフ, 記録計および自動試料注入装置から成る分析システムを用いて行った。洗口剤による口臭抑制効果の判定は, 洗口前のそれぞれのVSC濃度を100%として, 洗口直後, 2時間後, 3時間30分後に行った。その効果, 0.5%塩化亜鉛洗口では, 3時間30分後でH2Sが17.7%, CH3SHが12.2%, (CH3) 2Sが68.7%および硫黄当量の総計で12.5%とVSCの減少を認めた。これに対し, 市販洗口剤および水による洗口では, それぞれ洗口3時間30分後, 2時間後に抑制効果がほぽ消失し, 塩化亜鉛の強い口臭抑制効果が確認された。次にパーコール密度勾配遠心法にて, 唾液中の遊離細胞の分解におよぼす塩化亜鉛の効果を検討し, VSC産生抑制の機序をしらべた。その結果, 0.01%塩化亜鉛にて, 24時間インキュベーション唾液中での細胞分解が抑制されることが明らかとなった。また, 唾液細胞成分中のタンパク分解酵素活性も, 0.05%以上の塩化亜鉛にて完全に阻害されることが明らかとなった。そこで, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて, 24時間インキュベーション唾液におけるタンパク分解に及ぼす塩化亜鉛の影響を検討した。その結果, 唾液上清では, 分子量66.2Kおよび20.7K~14.4Kのタンパク分解が0.01%塩化亜鉛にて阻害され, 唾液沈渣においても, 66.2K, 84.4K, 27.2K, 24.6Kおよび15.3Kのタンパク分解が阻害されることが明らかとなった。以上の結果は, 洗口剤として使用される塩化亜鉛の濃度により, VSC産生の基質となるタンパク質の分解が抑制され, 口臭抑制効果が発揮されることを示唆した。