- 著者
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八鍬 恒芳
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
- 雑誌
- 医学検査 (ISSN:09158669)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.J-STAGE-2, pp.74-83, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
- 参考文献数
- 9
認知症に対する超音波検査の中で,病態に直接的な関わり合いを持つ脳内の血流動態を観察する検査として,経頭蓋超音波検査がある。経頭蓋超音波検査には,パルスドプラ信号のみで頭蓋内の血流シグナルを捉える経頭蓋超音波ドプラ法(transcranial Doppler; TCD)と,一般的な通常の超音波断層像およびドプラ法により検査を行う経頭蓋カラードプラ法(transcranial color-flow imaging; TC-CFI)がある。TCDはくも膜下出血後の脳血管攣縮(vasospasm)のスクリーニングや脳塞栓症微小栓子シグナル(high intensity signals; HITS)の検出などに用いられている。TCD検査には,TCD専用の特殊な超音波機器が必要である。一方で,TC-CFI(TCCFIやTCCSともいう)は周波数の低いセクタプローブがあれば,通常の超音波診断装置にて検査が可能である。TC-CFIにより,中大脳動脈などの血流シグナルを捉え,波形解析を行うことで,認知症の進行度合いをみたり経過観察に用いたりすることができる。また,脳血管障害の有無を調べることで,認知症との鑑別や重複する疾患を認識できる。本章では,主にTC-CFIを用いた検査法と認知症病態への応用について述べる。