著者
六嶋 俊太
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.58-66, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

本論文は,秘密消費に関する既存研究を整理し,それらの貢献と限界を提示した上で,今後の研究の方向性を検討する。秘密消費とは「他者に対して情報を隠そうとする意図を持っている状態での消費」のことを指し,本論文では特に,そこで意図的に隠される情報を指す「秘密内容」概念について議論する。具体的には,まず,既存研究を「秘密消費の動機」「秘密消費が消費者に与える影響」「秘密消費の実践的側面」の3つに分け,それらの貢献と限界を整理する。次に,これらの限界を克服することを妨げる可能性のある,「秘密内容」概念の概念的混同という課題について説明する。そして本論文では,その解決のために2つの下位概念「個人的秘密内容」と「集団的秘密内容」を区別した上で研究を進める必要があることを述べる。最後に,上述した2つの下位概念を峻別することによって発展が見込まれる,今後の研究の方向性を提示する。
著者
六嶋 俊太
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.46-52, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本論文の目的は,消費を秘密にする動機についての解釈的分析を行うことで,既存研究が注目していない動機に光を当てて,その分類枠組み再構築することにある。既存研究の知見を踏まえて,本論文では,秘密の消費を「何らかの理由により,消費者が,特定の他者に対して,製品・サービスの利用を伏せる消費」と定義する。秘密の消費の動機に関する細かなニュアンスを把握するために,18名の消費者に対して半構造化インタビューを実施した。その逐語録(テキスト・データ)に質的コーディングを施して明らかになったのは,次の2点である。第一に,消費が秘密にされるということは,必ずしも「否定的な結末を避けたい」という動機に起因するわけではないこと,第二に,秘密の消費として扱われる可能性のある製品・サービスは,既存研究で想定されているものよりも広範である可能性があることである。以上の貢献を踏まえて,本論文の最後では今後の研究の展開についての議論を行う。