著者
大橋 兼子 敬子 小川 瑛利子 大野 英一 渡邊 博之
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.132-141, 2013-09-01
参考文献数
16
被引用文献数
4

LEDによる赤色光,青色光および赤青混合光あるいは蛍光灯による白色光(コントロール)を利用して,シソ,ルッコラおよびコリアンダーを栽培した.成育調査と精油成分含有量の測定結果から,光質のコントロールによって,生食用ハーブの機能性あるいは品質を向上させることが可能なのか検討を行った.<br>本論文で設定された環境条件下においては,シソの栽培において,早く大きく成長させるのは白色光であった.青色光には赤色光に比べてperillaldehyde含有量を向上させる作用があることが分かった.ルッコラの栽培において,早く大きく成長させるのは白色光であった.青色光には赤色光に比べて甘味成分であるanethole含有量を向上させる作用があった.このことから,青色光強度を増すと甘味が増し,青色光強度が低減すると甘味が低減する分,アーモンド風味が増す作用をもつ可能性が考えられた.コリアンダーの栽培においては,赤色光が最も大きく成長させた.さらにコリアンダーの青臭い特有の風味をあたえる (E)-2-decenalおよび(E) -2-dodecenal含有量が赤色光下で最も向上した.赤色光はコリアンダーの成育も風味も向上させる効率的な光であることが分かった.<br>以上のように,植物種ごとに生産に効果的な光条件は異なるが,光質制御によってハーブの品質を向上させることは可能と判断した.
著者
佐瀬 勘紀 石井 雅久 池口 厚男 蔵田 憲次 兼子 敬子
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

半乾燥地域に位置するアリゾナ大学環境調節農業センター(CEAC)のポリエチレン二重被覆温室を用いて環境測定を行った結果、自然換気と組み合わせた細霧冷房において、一定の設定気温の下で、換気量を減少させると湿度が増加し、細霧冷房のための水消費量が減少することを明らかにした。これは熱収支に基づく予測と一致した。また、気温と湿度を同時に制御する簡易な制御アルゴリズムを考案し、トマト栽培下で動作させた結果、目標の気温24〜25℃、相対湿度65〜75%にほぼ制御できることを明らかにした。水消費量の抑制は、湿度が高まることによる蒸散量の減少が大きく寄与した。一方、細霧冷房時の環境の分布特性も明らかとなり、特に、気流について、温室中央では上方に、周囲では内側あるいは下方に向かう気流が発生していることが明らかとなった。光質については、赤色/遠赤色比が、畝間では下方にいくに従って徐々に減少し、群落内では中央高さで最小となった。対象温室は天窓の開口部が屋根自体が開閉するという特徴があり、自然換気の基本的特性を解明するため、縮尺1/15の模型を用いて風洞実験を行った。その結果、天窓の開口部が風下に面し、両側窓が開放されている場合、温室内平均気流速やその分布が優れることを明らかにした。天窓の開口部が風上に面している場合は、外気が天窓上端から巻き込むように流入し、温室内に逆流を伴う循環流が形成された。天窓開口部の向きは平均気温には影響しなかったが、開口部が風下に面している場合、温室の中央から風下にかけて高温域が発生した。換気窓開口部への防虫スクリーンの設置の影響は大きく、温室内気流速は設置しない場合の40〜68%まで減少した。これらの結果は、半乾燥地において水使用量を抑制しつつ効率的な生物生産が可能であることを示している。