著者
宮城 敦子 川合 真紀 内宮 博文
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第52回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0657, 2011 (Released:2011-12-02)

タデ科植物であるエゾノギシギシは葉にシュウ酸を高蓄積する多年生草本である。その一方で、そのシュウ酸蓄積機構に関する知見は少ない。当研究室におけるメタボローム解析の結果から、葉のシュウ酸の蓄積量とシュウ酸前駆物質(クエン酸、アスコルビン酸)との間に高い正の相関があること、茎の炭素化合物が葉のシュウ酸合成に影響を及ぼすことが示された(Miyagi et al, Metabolomics, 2010a, b)。そこで、本研究では茎の炭素源が葉のシュウ酸蓄積に及ぼす影響を調べるために13CO2を用いたトレーサー実験を行った。すなわち、13CO2処理した植物における13C-シュウ酸とその周辺代謝物の濃度をCE-MSで測定した。その結果13C-シュウ酸が葉に高蓄積すること、茎では13C-クエン酸等の濃度が減少する一方で新生葉のシュウ酸合成に茎の炭素化合物が使用されることが示された。さらに、高CO2がシュウ酸等の代謝物に及ぼす影響を調べるため、1000 ppm CO2および栄養塩処理個体の代謝物解析を行った。その結果、葉では栄養塩処理によって主にアミノ酸の濃度が増加するのに対し、CO2処理により有機酸が増加した。一方、CO2と栄養塩を同時に処理した個体にシュウ酸濃度の増加が見られ、バイオマス量が著しく増加した。
著者
長田 敏行 渡辺 昭 岡田 吉美 中村 研三 三上 哲夫 内宮 博文 岩淵 雅樹
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

体勢上レンガ積み構造に例えられる植物体に発達された内・外的刺激に独特の応答反応を示す現象の分子機構の解明を目的として立案された本研究組織において、研究期間終了にあたって次のような成果が得られた。まず、植物ホルモンのうち作用が最も広範かつ劇的ゆえ重要とされるオーキシンについて発現制御をする遺伝子を探索して得られた遺伝子は、グルタチオンS-トランスフェラーゼをその翻訳産物と同定したが、これはオーキシン制御の遺伝子で機能の同定された最初であった。また、やはりオーキシン制御の遺伝子で細胞増殖に関っていると推定されるGタンパク質のβ-サブユニット様の遺伝子も同定したが、これは植物で初めてのGタンパク質関連遺伝子であり、タンパク質Cキナーゼを介する新しい信号伝達経路の展開を予測させたが、同様な展開は蔗糖により誘導されるβ-アミラーゼでも、Ca依存タンパク質キナーゼの介在を予測させ、斯界に本邦発の情報として貢献できたといえる。また、植物ホルモンが形態形成に果たす役割についても遺伝子の同定がなされた。一方、植物への病原菌の感染に伴う応答機構については、エリシターに対応する受容体の同定、中間で作用するホスホイノチド代謝経路の推定もなされ、病原菌抵抗性植物の再生も試みられた。さらに、植物ウイルスであるタバコモザイクウイルスの感染に関しては、ウイルスの複製酵素領域が抵抗性を支配していること、またウイルスの細胞間移行に関する30kDaタンパク質のリン酸化が抵抗性に関与していることも示された。なお、本研究グループで広く用いられたタバコ培養細胞株BY-2は、高度な同調化が可能ということで世界18ヶ国で使われるにようなったが、その流布にあたっていは本研究グループが大いに貢献してた。