- 著者
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内村 和至
- 出版者
- 明治大学人文科学研究所
- 雑誌
- 明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, pp.1-26, 2001-03
私はここしばらく秋成にかかずらわっているが、秋成の紀貫之批判を理解するうえで、秋成が編纂に深く関わった荷田春満の遺稿集『春葉集』(寛政十年刊)付録の春満版仮名序に注目すべきではないかと考えるようになった。それで、春満の仮名序研究の大体をまとめてみようと思ったのだが、この問題設定からは参考とすべき資料がなきに等しい。実のところ、仮名序研究にかぎらず、門人の聞書や筆記を中心とする春満の資料はほとんど整備されていないのである。確かに、春満の著作について三宅清の浩瀚かつ細密な研究、『荷田春満』(以下①)・『荷田春満の古典学』第2巻(以下②)が備わってはいる。しかし、三宅の所説は春満の著作と合わせ読まないかぎり十分に理解できない部分が多く、端的に言えば、それは『春満全集』の解説にこそふさわしいものである。