著者
内村 和至
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-26, 2001-03

私はここしばらく秋成にかかずらわっているが、秋成の紀貫之批判を理解するうえで、秋成が編纂に深く関わった荷田春満の遺稿集『春葉集』(寛政十年刊)付録の春満版仮名序に注目すべきではないかと考えるようになった。それで、春満の仮名序研究の大体をまとめてみようと思ったのだが、この問題設定からは参考とすべき資料がなきに等しい。実のところ、仮名序研究にかぎらず、門人の聞書や筆記を中心とする春満の資料はほとんど整備されていないのである。確かに、春満の著作について三宅清の浩瀚かつ細密な研究、『荷田春満』(以下①)・『荷田春満の古典学』第2巻(以下②)が備わってはいる。しかし、三宅の所説は春満の著作と合わせ読まないかぎり十分に理解できない部分が多く、端的に言えば、それは『春満全集』の解説にこそふさわしいものである。
著者
内村 和至
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
no.43, pp.181-197, 1997-12

松亭金水(中村経年・積翠道人、寛政七~文久二・一七九五~一八六二)は、人情本以外にあまり問題にされることのない作者と言ってよいだろうが、私はたまたま、その随筆『太平楽皇国気質』を手にすることがあって以来、いささか金水に興味を抱いている。といっても、それが優れているからというのではない。むしろ、その安易な文章に呆れるのだが、と同時に、こうした作者がかなり広範囲に仕事をしていたことを不思議にも思うからである。そして、ここには無思慮と無邪気が同居しており、それを「思考」と名付けることはためらわれるが、しかし、やはりそれを「日本的思考」とでも名付けるよりほかないような、そんなものが感じられるのである。
著者
内村 和至
出版者
明治大学文学部文芸研究会
雑誌
文芸研究 : 明治大学文学部紀要 (ISSN:03895882)
巻号頁・発行日
no.123, pp.17-28, 2014

ロードスのアポロニオスによれば、英雄イアソンはアルゴー船を仕立て、金羊の毛皮を求めて旅をし、艱難の末、目的の地コルキスに辿り着いた。コルキス王アイエテスは面従腹背、難題を持ちかけてイアソンを殺そうとしたが、イアソンに恋をした王女メディアの手助けによって、イアソンは金羊の毛皮を手にし、メディアを伴って、コルキスを逃れ去ったのである(『アルゴナウティカ』)。というだけでは、何のことはないような神話だが、私がこの話に心引かれるのは、実はメディアは恋する乙女というだけではなく、魔女でもあるということだ。メディアは地母神ヘカテを呼び出して魔術を行う。ヘカテが魔術を施すのは夜道の十字路や三叉路で、そのため、ヘカテは月の女神に因んで「三叉路のアルテミス」とも呼ばれる(大修館『ギリシア・ローマ神話辞典』)。