著者
内田 宏美
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.89-94, 1997
参考文献数
7
被引用文献数
1

1994〜1996年度の国立K医療短大看護学科2回生延べ233名の、「あなたの声が聞きたいpartll」と「尊厳死を求めた家族の記録」のVTR鑑賞後のレポートから、対象の人間観・生命観と生命倫理上の問題を分析した。遷延性意識障害者へのケア選択の姿勢から、対象群には命のかけがえのなさや生存の権利を主張する生命尊重派に対して、自己決定の優先性を主張する意志尊重派がやや優勢な傾向がみられた。さらに、自分と家族の場合でのケア選択を比較すると、両派とも同レベルで自分には尊厳死を求める傾向を示し、意志尊重派では家族にも尊厳死を求める傾向がみられた。このことから、生命観の如何に関わらず、意志の捉え方に多様性がなく、無意識に、人間性をもつ人格だけを尊重するパーソン論の立場をとっている可能性が示唆された。以上より、医療者として自己の生命観・人間観を意識化することが重要だと考える。
著者
内田 宏美 桑原 安江
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.27-35, 2003 (Released:2018-12-28)
参考文献数
4
被引用文献数
2

本研究の目的は,現場のリスクマネジメント担当者の満足感と役割獲得構造の分析を手がかりの一端として,権威勾配が最少になるように意図した,組織横断的なリスクマネジメント・システムの意義と課題を検討することにある.このシステムの下で,既存の部門内に閉じられた官僚制的な組織管理下では対応できなかった病院全体に及ぶ業務改善に,比較的容易に取り組めたことから,われわれは,このシステムが有機的に機能する手応えをもった.そこで,体制がスタートして1年半が経過した2002年3月,副看護師長の現場担当リスクマネジャー31名に,自由記載のアンケート調査を実施し,その内容をK-J法により構造化した.その結果,病院組織の中では決して高くはない地位にある副看護師長の現場RMが,整備されたリスクマネジメント・システムと上司である看護師長や総括リスクマネジャーの適切なサポートにより,実践を通してRM役割を獲得していくことが確認された.以上より,部門の壁と縦の権威を乗り越えて,組織横断的に機能するリスクマネジメント・システムは,従来の官僚制的組織運営の弱点を補完する機能の一端を担う可能性が示唆された.このような機能の出現は,本来あるべきチーム医療を促進し,病院組織のあり方を刷新する原動力として期待される.
著者
内田 宏 山岸 敏宏
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.819-825, 1993
被引用文献数
1

黒毛和種の子牛市場成績,繁殖雌牛の体型,肥育成績などの経済形質に対して近親交配がどのような影響をもたらすかを調べた.材料牛は宮城県内の市場に上場された15,142頭の子牛,県内の11の改良組合の改良基礎雌牛(3歳以上)1,042頭および986頭の去勢肥育牛である.子牛では叔姪交配(近交係数6.25%以上)による近親交配が全子牛の16.4%を占めている.また,繁殖雌牛および肥育牛では,近交係数が6.5%以上のものが,それぞれ13.3%と13.4%を占めている.子牛の日齢体重は,近交度が上昇するにつれて小さくなっており,子牛市場上場時の発育形質に,近交退化が認められた.繁殖雌牛における近交係数に対する体測定値の一次回帰係数は,体高を除いた部位がすべて負となり,近交係数の高いものほど体測定値は小さくなる傾向にあったが,かん幅の体高比を除いて有意性は認められなかった.肥育牛の近交係数に対する発育形質の一次回帰係数はすべて負で有意となり,近交度の上昇にともない発育が低下しており,肥育牛の発育形質においても近交退化が認められた.一方,脂肪交雑の近交係数に対する一次回帰係数は正で有意であったが,種雄牛と一次回帰との間に交互作用が見られ,脂肪交雑に及ぼす近交の影響が種雄牛によって異なることが分った.