著者
内藤 久士 小林 裕幸 内田 桂吉 大森 大二郎 千葉 百子 山倉 文幸 米田 継武
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.203-210, 2000-10-25 (Released:2014-11-12)
参考文献数
28
被引用文献数
2

目的: 老化および持久的トレーニングがラット骨格筋の熱ショックタンパク質 (HSP72) の発現に及ぼす影響を遅筋および速筋に分けて検討することであった. 対象および方法: 若齢 (12週齢) および老齢 (100週齢) のF344雌ラットが年齢群ごとに, コントロール群および運動群の2群に分けられた (各群n=6). 両年齢群のトレーニング群は, トレッドミル上での持久的ランニングを75-80%Vo2maxの強度で1日60分, 週5日の頻度で10週間にわたって行われた. トレーニング期間終了72時間後, ヒラメ筋 (遅筋) および長指伸筋 (速筋) が摘出され, ウェスタンブロット法により, HSP72が定量された. 結果: コントロール群のHSP72の発現量は, ヒラメ筋の若齢群95±5ng・老齢群100±6ngおよび長指伸筋の若齢群22±2ng・老齢群20±5ngであり, 各筋とも年齢による差が見られなかった (P>0.05). 一方, トレーニング群のHSP72の発現量は, ヒラメ筋の若齢群116±3ng・老齢群116±4ngおよび長指伸筋の若齢群66±2ng・老齢群43±6ngで, 各筋ともに同年齢のコントロール群よりも有意に (P<0.05) 高い値を示した. しかしながら, その増加率は, ヒラメ筋 (若齢群+22%・老齢群+15%) と長指伸筋 (若齢群+200%: 老齢群+115%) では異なるものであった. 結論: 持久的トレーニングは, 骨格筋のHSP72の発現を増加させるが, 老化は速筋 (長指伸筋) において, その応答性を低下させる.
著者
内田 桂吉
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第61回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2009 (Released:2009-06-19)

多くの蚊の雌は吸血によって卵を発育させる。卵巣発育に関わるホルモンについては非常に多くの研究がなされているが、栄養素と卵巣発育の関連についての報告は多くない。そこで血液中の栄養成分、特に消化産物であるアミノ酸に注目し、アミノ酸と卵巣発育の関連、また発育開始後の成熟にいたる卵胞数とアミノ酸の関連について、おもにアカイエカを用い研究を行い、以下のような内容を明らかにした。 卵巣発育開始を促すアミノ酸の作用 吸血後、中腸内での血液の消化吸収にともない体液中のアミノ酸濃度が上昇する。そこで、アミノ酸の混合液を毎時0.083マイクロリッターというごく微量ずつ24時間~48時間にわたって非常にゆっくりと雌蚊の体腔に注入し、吸血によるアミノ酸濃度の上昇と同じ条件を人工的に生じさせたところ、多くの雌で卵巣の発育が引き起こされた。このことから、雌蚊体液中のアミノ酸濃度の上昇が卵巣発育の引き金になると考えられる。蚊の種類を変えて同じアミノ酸微量注入を行ったが、ハマダラカの一部を除き、多くの種で卵巣発育が誘発されたことから、このアミノ酸の効果は蚊に共通したものであると考えられる。 成熟卵数調節機構におけるアミノ酸の役割 上記の微量注入の方法を用い、アミノ酸の濃度、また注入時間を変えて卵巣の発育を調べたところ、成熟に至る卵胞の数は、アミノ酸の濃度の増加、また注入時間の延長にしたがって増加した。このことから、単純ではあるが、成熟卵の数は、卵黄タンパクに利用できる栄養素、主にアミノ酸の供給量によって決まると考えられる。蚊の場合、吸血後、多くの卵胞が一旦発育を開始するが、吸血量、すなわちアミノ酸量によって一部の卵胞が発育途中で退化して「間引き」される。細胞組織学的、また生化学的にこれらの退化する卵胞を調べたところ、卵胞上皮細胞がアポトーシスを起こすこと、また本来胚発生のために卵細胞内に蓄積されたカテプシンなどの細胞内プロテアーゼが、卵細胞自身の退化・消失にはたらいていることも明らかになった。