- 著者
-
小林 裕幸
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
私たちは種々のメディアのもつ画質と接するとき、その画質情報からいろいろなことを感ずる。本研究は、メディア画質を定量的に解析し、それらが私たちに与える感性効果を明らかにし、画像を、目的の感性効果をもたらす画質に自動的に変換できるフィルタを作成し、いろいろな映像を作り出そうとするものである。次のような実験を行い成果を得た。1.いくつかの視覚メディアが特徴的にもつ画質特性に注目し,それらが画像の印象にたいして与える影響について調べた.SD法による評価実験の結果,画像の印象評価に影響を与える三つの因子が抽出された,また,画質に対して抱く印象が世代によって異なることが分かった.2.写真の過去的な印象に対して,どの画質要因が優位性をもっているのかを調べ,セピアや白黒のような単色の画像を見たときに,過去的な印象を強く喚起する効果が見られた.また,低色温度と高色温度の写真の時間印象に有意な差が見られたことから,色温度が時間印象に影響を及ぼす因子であることが示唆された.3.写真に撮影された人物のパーソナリティの推測に対して画質が与える影響について調べた.同一人物の写真の画質を変化させ,その人物のパーソナリティをSD法により評定させた.実験の結果から,パーソナリティの認知に働く3つの因子が抽出された.また,画質が人物の印象形成に影響を与えていることが確認された.さらに,複数の画質要因の相互関係について検討するため,明るさ(3水準)×コントラスト(3水準)に変化させた画像刺激を用いた印象評価実験も行い,印象形成における明るさとコントラストの交互作用が有意であることが確認された。