著者
山口 史朗 橋本 治 須賀 昭信 矢野 誠司 内藤 克輔 高橋 睦夫
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.347-350, 2002-06
被引用文献数
3

63歳女.B型肝炎の加療中に超音波断層検査で副腎腫瘍が疑われたが,無症状であった.Gd-DTPA MRIにて内部が造影されず嚢胞状の腫瘤が認められ,その他画像所見,血液内分泌検査より副腎血腫,内分泌非機能性腫瘍が疑われた.CTでの経過観察を考慮したが,患者の希望で腹腔鏡下右副腎摘除術を施行した.病理組織学的所見から,腫瘤はコレステリン結晶を伴った陳旧性の出血巣で,硝子様の結合織からなる被膜が認められ,明らかな腫瘍性病変は認められず,副腎血腫と診断された.副腎皮質細胞の集塊が残存していることから副腎髄質からの出血が考えられた.術後経過良好である.突発性副腎血腫の報告は日本で13例あったWe report a rare case of idiopathic adrenal hematoma. Including our case, 13 such cases have been described in Japan. A 63-year-old [correction of 65] woman was admitted to our hospital for further examination of a right adrenal mass on ultrasonography. Laboratory tests including hormonal assay were within the normal ranges. Computed tomography showed a tumor with calcification measuring 3.0 x 2.0 cm in the right adrenal gland. Magnetic resonance imaging (MRI) revealed a mass with heterogeneous low to iso signal intensity on T1-weighted images and high signal intensity on T2-weighted images. A peripheral rim of the mass was slightly enhanced on dynamic MRI. The patient underwent laparoscopic adrenalectomy. Histopathological examination revealed an old hematoma without neoplastic cells or vascular lesions and these findings were evidence of idiopathic adrenal hematoma.
著者
内藤 克輔 久住 治男 鹿子木 基二 加藤 正博 中嶋 和喜 塚原 健治 小林 徹治 黒田 恭一 松原 藤継
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.1019-1031, 1982-08-20

ヒト泌尿器悪性腫瘍の単層培養の研究を行い,3つの腫瘍より上皮性細胞の活発な増殖が認められた。いずれも140継代培養を重ね,細胞株として樹立された。70歳男子および30歳女子のclear cellを主体とした腎細胞癌由来の細胞株はそれぞれKH-39,KN-41,また44歳男子の膀胱移行上皮癌由来の細胞株はKW-103と命名された。これら3株をヌードマウスに異種移植し,移植28日後に100%に腫瘍形成を認めた。KH-39およびKN-41は単層培養細胞と異種移植腫瘍の光顕的,電顕的所見より腎細胞癌由来と考えられた。KW-103もまた光顕的,電顕的所見より膀胱移行上皮癌由来と考えられた。染色体分布は44〜47継代時に行つた。3株共に2個のmaker chromosomesを持ち,hyperdiploidyの核型を示した。種族細胞の染色体数モードはKH-39で58ないし59,KN-41では58ないし59,KW-103では57であつた。marker chromosomeのcentromere indexはKH-39では15.1と22.4,KN-41では15.2と22.7,さらにKW-103では16.2と24.1であつた。重複培養法による増殖曲線より得られたdoubling timeは,KH-39,KN-41およびKW-103ではそれぞれ16.0,20.9,16.0時間であつた。