著者
内藤 美加
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.288-298, 2016 (Released:2018-12-20)
参考文献数
90

本稿では,対人理解の能力とその発達について,これまで心の理論と呼ばれてきた従来の理論を批判的に検討し,その代替となるような理論枠組みを提案する。この枠組みは従来の認知主義に対して,第1に近年活発になっている現象学的視点に基づく相互作用説に依拠しつつ対人理解を説明する。第2にこの理論枠組みでは,現象学的な相互作用説でも十分説明できない社会文化的構成としての発達の過程とその(構成物としての)結果とが区別される。そのために,まず従来の心の理論研究の認知主義的背景と理論的立場を概観する。次いで現象学的視点から見た心の理論説への批判と身体化された相互作用の中での対人認知の発達をたどり,誤信念課題の達成に関する最近の知見と議論も併せて検討する。最後に,相互作用説に基づく社会的認知の多重あるいは二重過程モデルが,現象学だけでなく心理学的な説明としても最も有力で現実的であるものの,このモデルでも対人認知の社会文化的な構成過程には十分言及されていないことを指摘する。さらに,心の理論研究が陥っていた誤謬を明らかにする。
著者
内藤 美加
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.249-263, 2011 (Released:2018-08-18)
被引用文献数
1
著者
宮島 裕嗣 内藤 美加
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.364-374, 2008-12-20

課題重要性と社会的影響が中学生の同調にどのような効果を及ぼし,かつ偏向した意見が持続するか否かを検討した。同調の喚起を意図した課題を用い,218人の中学生に回答を選択してもらう質問紙上の思考実験を行った。実験1では意見課題を作成し,規範的影響下の同調を検討した。実験2では,正確な判断が求められる課題を用いて情報的影響下での変化を調べた。両実験とも第1セッションでは課題重要性を操作し,実験群には各課題の回答肢に仮想集団の選択傾向を呈示する集団状況で回答を求め,集団圧力による偏向のない統制群の回答と比較した。1週間後の第2セッションでは仮想集団の圧力を取り除いた個人状況で実験群に再回答を求め,偏向を受けた意見が持続するか否かを検討した。その結果,中学生では特に集団から受容されたいという動機に基づく規範的影響下で,重要性の低い課題だけでなく個人的関与の高い重要な課題でも同調を示し,それが長期間持続する私的な受容であること,また女子の方が男子に比べそうした同調を示しやすいことが明らかになった。これらの結果は,自己カテゴリー化の枠組みから論じられた。