- 著者
-
冨山 道夫
- 出版者
- 日本小児耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-06-17)
- 参考文献数
- 24
伝染性単核球症に対するぺニシリン系抗菌薬(PCs)投与は高率に皮疹を生じるため禁忌である。一方細菌性急性咽頭・扁桃炎の主な起炎菌は A 群 β 溶血性連鎖球菌(A 群溶連菌)で,PCs が第一選択薬とされている。今回 A 群溶連菌感染症を合併した伝染性単核球症の 1 例を経験した。症例は 7 歳女児で咽頭痛,発熱を主訴に受診した。上咽頭,口蓋扁桃に白苔,発赤を認め A 群溶連菌迅速診断陽性であった。自動血球測定装置でリンパ球優位の白血球上昇がみられたため,肝機能検査,Epstein-Barr (EB)ウイルス抗体検査を行うとともに cefditoren pivoxil を投与した。細菌検査では上咽頭,口蓋扁桃より A 群溶連菌が 3+ 検出された。血液検査では肝機能低下,異型リンパ球,EB ウイルス感染を認め伝染性単核球症と診断された。治療後 3 日目に解熱した。A 群溶連菌迅速診断陽性の急性咽頭・扁桃炎に対する抗菌薬選択にあたり,白血球分画を測定する必要があると思われた。