著者
冨山 道夫
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.358-363, 2018 (Released:2019-04-05)
参考文献数
24

これまでに報告の少ない急性上咽頭炎を合併したマイコプラズマ肺炎の1症例を経験した。症例は11歳女児。発熱,咽頭痛,頭痛を主訴に受診。内視鏡検査で咽頭扁桃に膿を認めた。白血球数5300/μL,CRP 2.34 mg/dL,A群溶連菌迅速診断陰性で,ウイルス感染として経過をみた。2日後乾性咳嗽が増悪し再診。胸部X線で雲状陰影を認め,咽頭よりマイコプラズマ迅速診断を施行したところ陽性。マイコプラズマ肺炎を疑い,clarithromycinを投与し治癒した。咽頭扁桃より肺炎マイコプラズマが分離され,ペア血清で抗体価の有意の上昇がみられマイコプラズマ感染症と診断した。マイコプラズマ肺炎の初期症状として急性上咽頭炎による頭痛を主訴とする場合があり注意を要する。
著者
冨山 道夫
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-06-17)
参考文献数
24

伝染性単核球症に対するぺニシリン系抗菌薬(PCs)投与は高率に皮疹を生じるため禁忌である。一方細菌性急性咽頭・扁桃炎の主な起炎菌は A 群 β 溶血性連鎖球菌(A 群溶連菌)で,PCs が第一選択薬とされている。今回 A 群溶連菌感染症を合併した伝染性単核球症の 1 例を経験した。症例は 7 歳女児で咽頭痛,発熱を主訴に受診した。上咽頭,口蓋扁桃に白苔,発赤を認め A 群溶連菌迅速診断陽性であった。自動血球測定装置でリンパ球優位の白血球上昇がみられたため,肝機能検査,Epstein-Barr (EB)ウイルス抗体検査を行うとともに cefditoren pivoxil を投与した。細菌検査では上咽頭,口蓋扁桃より A 群溶連菌が 3+ 検出された。血液検査では肝機能低下,異型リンパ球,EB ウイルス感染を認め伝染性単核球症と診断された。治療後 3 日目に解熱した。A 群溶連菌迅速診断陽性の急性咽頭・扁桃炎に対する抗菌薬選択にあたり,白血球分画を測定する必要があると思われた。
著者
冨山 道夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.73-80, 2017-05-20 (Released:2018-05-21)
参考文献数
18

2011 年に提唱した急性上咽頭炎のスコアリングと、細菌感染症の重症度を示す指標である白血球数、c-reactive protein(CRP)との相関について後方視的に検討した。対象は 2015 − 2016 年に当院を受診した急性上咽頭炎症例 265 名である。上咽頭炎スコアと白血球数、CRP は正の相関を示した。上咽頭炎スコアが 0−3 点を軽症、4−8 点を中等症、 9−10 点を重症と判定し、重症度別に白血球数、CRP を算出した。軽症群、中等症群、重症群の 3 群間で白血球数、CRP は有意差を認めた。上咽頭炎スコアによる重症度分類は、急性上咽頭炎の重症度を適確に表していることが判明した。急性上咽頭炎の治療選択にあたり、上咽頭炎スコアは有用な指標となると考えられた。
著者
冨山 道夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.96, no.7, pp.1133-1140,1225, 1993-07-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
24

鼓膜切開を要した小児急性中耳炎症例81名にcefaclor (CCL) とfosfomycin (FOM) 点耳液を併用し有用性を検討した. その後1年間の経過観察を行い, 検査所見と治療経過, 予後との関連を調査し以下に示す結果を得た. 1) CCLとFOM点耳液の有効率は99%であった. 2) レントゲン検査で乳突蜂巣陰影 (蜂巣陰影), 副鼻腔陰影のある群は有意に経過が遷延した. 3) 蜂巣陰影のある群は難治な滲出性中耳炎に移行しやすく, 蜂巣陰影のある群と急性中耳炎の既往がある群では有意に急性中耳炎の再発を認めた. 4) 両側蜂巣に陰影がある群と陰影が片側例のうち対側耳に比べ患側耳の蜂巣発育が抑制されている群は, 再発や難治な滲出性中耳炎への移行を示しやすい傾向がみられた.
著者
冨山 道夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.196-213, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
20

急性上咽頭炎と診断された症例のうち、中咽頭に感染の所見を認めない急性上咽頭炎単独例 1 例、中咽頭に感染の所見を認める中咽頭感染症合併例 4 例、計 5 例について報告した。中咽頭感染症合併例 4 例は、いずれの症例も突然のどの上方から下方にかけて全体に摂食が困難な咽頭痛を発症しており、細菌検査では上咽頭と中咽頭より有意差がない薬剤感受性を示す同一の細菌が検出された。急性上咽頭炎と中咽頭感染症合併例は、同一の細菌により同時に上咽頭と中咽頭に細菌感染症を発症する可能性が示唆された。