著者
佐々木 理恵 川崎 純子 古川 勤 重藤 紀和 切替 照雄
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.363-370, 2002-06-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)を中心とする院内感染防止対策として当院では1999年12月より強酸性水を用いた院内環境整備に取り組んでいる. 当院の2000年4月の平均入院患者数(75名)に占めるMRSA保有率が約30%にも及んでしまったことを契機に院内で統一された環境整備マニュアルを作成し, 細菌学的環境調査を行ってその成果を確認した. 気道内吸引後のカテーテルの処理など看護手順についても実際に培養検査を行って検討し, 改善している. 院内で分離されたMRSA株の分子疫学的検討では, 2000年度はまさしく院内感染が示唆されたが, 引き続き院内感染対策に取り組んだ結果, 院内環境からMRSA菌は消失した. 2001年9月のMRSA株の検討ではアウトブレイク型のMRSAは9株のうち2株にまで減少し, MRSA院内感染がようやく終息に向かっていると考えられる結果が得られた. MRSA院内感染対策としては, ウエルパスによる手指消毒を含めた衛生学的手洗いの励行が最も重要と考える.
著者
四宮 博人 切替 照雄 浅野 喜博
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

申請者が同定したp65/L-plastin は, 白血球に特異的に発現され,アクチン細胞骨格の再構築(p65-actin-scaffold) に関与している。p65-actin-scaffold は菌体刺激によって随時形成され, これを中心に形成される高次タンパク質集合体が, 感染防御的細胞応答の基盤として機能すると想定している。p65/L-plastin とともに細胞骨格のダイナミクスに関与するタンパク質,およびp65-actin-scaffold と高次タンパク質集合するタンパク質としてNADPH オキシダーゼ p47^<phox> などについて, 特異抗体を用いてp65-actin-scaffold との共存関係を調べた。また, マクロファージ内でのそれらの局在変化と貪食・細胞接着や殺菌活性の増強との関連を評価した。ルミノール結合ビーズを用いて, 貪食依存性の活性酸素酸性定量法を確立し, 細胞骨格の再構成が活性酸素産生において重要であることを明らかにした。p65/L-plastin, WASP, VAV に関して, それぞれの欠損は貪食・細胞接着依存性の活性酸素産生の障害をきたすことを考え合わせ, p65-actin-scaffold を中心とする細胞骨格系のダイナミクスが, 白血球の感染防御活性の発現において重要な役割を担うと考えられた。