著者
前田 守 長谷川 佳孝 月岡 良太 森澤 あずさ 大石 美也
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.74-83, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
15

国際的な課題の一つである薬剤耐性菌感染症への対策として,抗菌薬の適正使用に向けた薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが厚生労働省により 2016 年 4 月に策定された.本研究では,当社グループが 2013 年 4 月~2019 年 3 月に運営していた 248 薬局の処方箋データを用い,抗菌薬の処方回数と処方日数を調査し,有意水準 0.05 とした分割回帰分析で解析した.アクションプラン策定前後で,処方回数推移は−202.3 回 / 月(95%信頼区間(CI):−325.7,−79.0),処方日数推移は −1905.9(95% CI:−2969.0,−842.9)となった.また,2015 年 4 月~2019 年 3 月の第三世代セフェム系,14 員環マクロライド系,ニューキノロン系の月平均処方回数も有意な減少傾向であり,AMR 対策アクションプラン策定が保険薬局の抗菌薬の処方回数と処方日数の減少の一因となった可能性が示唆された.
著者
速水 悠 前田 守弘
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.25-32, 2020-02-05 (Released:2020-02-18)
参考文献数
19

1日の灌水をタイマーで4回に分割した少量多頻度灌水(多頻度区)で促成ナスを栽培し,細根および土壌養分分布,ナスの生育,収量を,1回で全量灌水する1回灌水(1回区)と比較した.10月調査時(定植後55日)や3月調査時(定植後257, 258日)の多頻度区では,灌水後に水が横に拡散することで蒸発が進み,水を求めて細根が畝全体に広がったため,1回区より細根が広範囲で多かったと思われる.終了調査時(定植後257, 258日)では,1日当たりの灌水量が増えたため,多頻度区では灌水位置付近の重量含水率が増え,その位置で細根数が多くなった.また,同区のNO3−-Nの分布は1回区と同様であったものの,交換性塩基は1回区より高かった.これは,NO3−-Nはナスによって吸収されたが,吸収量以上の塩基類は溶脱せずに畝内に残存したためと考えられる.ナスの生育や収量には,灌水方法による違いが認められなかった.これは,いずれの灌水方法でも,ナスの生育や収量に必要な養水分は吸収されたためと思われる.以上のことから,低コストで導入できるタイマー制御の少量多頻度灌水であっても,栽培後期の畝内土壌の重量含水率が保持でき,養分の下方浸透を軽減しつつ,ナスの生育や収量を維持できる可能性が示された.